「3歳児健診で何か言われたんですけど、次に何をすればいいかわからなくて……」。

保護者面談でこの相談を受けるたびに、私は胸がきゅっと締まります。園で15年、発達相談を200件ほど受けてきましたが、健診後に不安を抱えたまま数ヶ月過ごしてしまう保護者は本当に多いのです。

日本臨床心理士会の調査によれば、3歳児健診で何らかの指摘を受ける子どもは全体の約27%。つまり4人に1人以上は何かしらの項目で引っかかっています。決して珍しいことではありません。

この記事では、保護者面談でよく出るのが「様子を見ましょうの"その後"がわからない」という声に応えるため、指摘後の行動フロー4ステップと5つの相談先マップを整理しました。

「様子を見ましょう」には3つの段階がある

まず知っておいてほしいのは、「様子を見ましょう」はひとくくりの言葉ではないということです。健診の現場では、大きく分けて以下の3段階があります。

  1. 経過観察──今の時点では問題なさそうだが、半年〜1年後にもう一度確認したい
  2. 再検査──気になる項目があるので、後日あらためて検査をしたい
  3. 専門機関紹介──より詳しい評価が必要なので、専門の医療機関や相談機関を案内したい

健診の場で「どの段階の"様子を見ましょう"ですか?」と確認するだけで、次の動き方がまったく変わります。もし聞きそびれてしまったら、後日、保健センターに電話して確認することもできます。

指摘後の行動フロー4ステップ

園で見ている限り、健診後に「何をすればいいかわからない」まま時間が過ぎてしまうケースが最も多いパターンです。以下の4ステップを順番に進めてみてください。

ステップ1:健診の記録を整理する

健診当日の結果用紙や母子手帳の記録を見返し、何の項目で何と言われたかをメモに書き出します。「言葉」「行動面」「視力」「聴力」など、指摘された領域を明確にしておくと、後の相談がスムーズです。

ステップ2:ふだんの様子をメモする

1〜2週間、お子さんの日常の様子を簡単にメモします。保護者面談で繰り返しお伝えしているのは、「できること」と「気になること」の両方を書くということ。気になることだけをメモすると、実際以上に心配になってしまいます。

書く内容は、たとえば「朝、自分でくつを履こうとした」「公園でお友達の名前を呼んでいた」「食事中にスプーンを投げた」など、日常のひとコマで十分です。

ステップ3:相談先に連絡する

後述の「5つの相談先マップ」から、お子さんの状況に合った相談先に連絡します。発達外来は多くの地域で予約が3〜6ヶ月待ちになるため、「まだ早いかも」と思っても先に予約を入れておくのがポイントです。予約を入れたからといって、必ず受診しなければならないわけではありません。

ステップ4:園にも共有する

保育園や幼稚園に通っている場合は、担任の先生にも健診の結果を伝えてください。園での様子は家庭とは違う場面が見えるため、双方の情報を合わせることでお子さんの全体像が見えてきます。

私自身、保護者から健診結果を共有してもらうことで、園での配慮や声かけをより丁寧に調整できた経験が何度もあります。

5つの相談先マップ──それぞれの役割と特徴

他の子と比べると見落としますが、相談先にはそれぞれ得意分野があります。お子さんの状況に合った場所を選ぶことが大切です。

相談先役割・特徴こんなときに
保健センター健診を実施した機関。フォロー面談や発達検査を無料で受けられることが多いまず最初の窓口として
児童発達支援センター発達に関する専門的な相談と支援プログラムを提供。療育の入口になることも具体的な支援を受けたいとき
かかりつけ小児科お子さんの成長を継続的に見ている医師。専門機関への紹介状を書いてもらえる発達外来への橋渡しとして
子育て支援センター/こども家庭センター育児全般の相談ができる地域の拠点。心理士が常駐している施設もある気軽に話を聞いてほしいとき
発達外来(小児神経科・児童精神科)発達の専門医による詳細な評価と診断。予約待ちが長い傾向専門的な評価が必要なとき

実践のコツ:保健センターと発達外来は「順番に」ではなく「並行して」動くのがおすすめです。発達外来の予約を入れながら、保健センターのフォロー面談を受ける──この並行利用で、待ち時間を有効に使えます。

「様子を見る」期間にできる3つのこと

「様子を見ましょう」は「何もしないで待ちましょう」という意味ではありません。待っている間にも、家庭でできることがあります。

  1. 日常の関わりを丁寧にする──特別なトレーニングではなく、絵本の読み聞かせや「ちょうだい・どうぞ」のやりとり遊びなど、日常の中での言葉のキャッチボールを意識する
  2. 観察メモを続ける──ステップ2で始めたメモを継続する。1ヶ月後に読み返すと、小さな成長に気づけることが多い
  3. 保護者自身の不安を吐き出す場所を持つ──子育て支援センターの相談、園の担任との面談、同じ経験をした保護者のコミュニティなど、一人で抱え込まない環境を作る

現場で見てきた「指摘後」のリアル

発達相談200件を受けてきた中で繰り返し感じるのは、健診で指摘を受けたこと自体は、お子さんの将来を決めるものではないということです。

以前、2歳児クラスの保護者面談で「みんなは喋ってるのにうちの子だけ」と泣き出したお母さんがいました。同年齢クラスの言葉の発達状況を範囲で説明し、「言葉がゆっくりな子の半数は3歳前後で爆発的に伸びる」という現場データをお伝えしたところ、半年後、そのお子さんは3歳前に2語文を連発するようになり、お母さんから手紙をいただきました。

発達は平均値よりも分散で捉えるもの。一人ひとりのペースがあり、その分散の幅は保護者が想像するよりもずっと広いのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 3歳児健診で指摘されたら発達障害が確定するのですか?

いいえ。健診はスクリーニング(ふるい分け)であり、診断ではありません。指摘は「もう少し詳しく見たほうがよい」というサインであり、その後の経過で問題なしとなるケースも多くあります。

Q2. 発達外来の予約が半年待ちと言われました。その間は何もできませんか?

待っている間にも、保健センターのフォロー面談や子育て支援センターの相談は利用できます。並行して動くことで、お子さんへの関わり方のヒントが得られます。

Q3. 健診で聞きそびれたことがあります。後から問い合わせてもいいですか?

もちろんです。健診を実施した保健センターに電話すれば、当日の記録をもとに説明してもらえます。「何の項目で指摘されたか」「どの段階の様子見か」を確認しましょう。

Q4. 園の先生に健診結果を伝えるのは気が引けます。伝えるべきですか?

ぜひ伝えてください。園と家庭で情報を共有することで、お子さんに合った関わり方を一緒に考えることができます。保育士は健診後の対応にも経験がありますので、安心してご相談ください。

Q5. きょうだいがいて、上の子は何も言われなかったのに下の子だけ指摘されました。育て方の問題ですか?

育て方の問題ではありません。発達のペースは一人ひとり異なり、きょうだいでもまったく違うことは珍しくありません。同じ家庭環境でも、お子さんそれぞれの持って生まれた特性や成熟のスピードが異なります。

参考文献

  • 日本臨床心理士会「乳幼児健診における発達障害に関する市町村調査 報告書」
  • 厚生労働省「乳幼児健康診査事業 実践ガイド」(令和5年改訂版)
  • こども家庭庁「乳幼児健康診査における発達障害の早期発見・早期支援のための取組事例に関する調査研究 報告書」(令和元年3月)
  • LITALICOライフ「3歳児健診の内容とは?発達障害に関わる検査内容や発達に遅れがある場合の対応方法」