「1歳の誕生日が来たのに、まだ夜におっぱいを欲しがります」「保育園の同じクラスの子は、もう卒乳したと聞きました」。保護者面談でよく出るのが、こうした卒乳の相談です。

認可保育園で15年、0歳児クラスから5歳児クラスまで担当してきました。この記事では、園で見ている限りの様子と、公的なガイドで確認できる範囲の情報をもとに、卒乳をどう考えればよいかをお伝えします。医療的な判断が必要な場面は、かかりつけ医や保健師さんへの相談をおすすめします。

結論:卒乳に「何歳まで」という期限はありません

先に結論です。卒乳の時期に決まった正解はなく、親子のペースで決めてよいと考えています。理由は次の3つです。

  • 厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定)が示す離乳の完了時期の目安は、生後12〜18か月頃です。これは「食事から栄養をとれる状態」の目安で、母乳をやめる期限ではありません。
  • 離乳食が完了しても、赤ちゃんが求めれば授乳が続くことがあります。離乳の完了と卒乳は別のものとして考えられています。
  • 卒乳は赤ちゃんが自然に飲まなくなること、断乳は母親の判断でやめることを指す言葉として使われます。どちらを選ぶかは、家庭の事情と親子の様子で決まります。

つまり「1歳=やめどき」ではありません。この点を知っているだけで、気持ちはかなり楽になります。

保育園で見ている「卒乳前後の子どもたち」

保育園では、日中に母乳を飲むことはありません。1歳児クラスには、家では夜も朝も授乳している子もいれば、すでに飲んでいない子もいます。園で見ている限り、日中の様子と授乳の有無に、はっきりした関係は見えません。

他の子と比べると見落としますが、同じクラスでも、家庭での授乳の状況はそれぞれ違います。それでも給食をもりもり食べ、午睡で眠り、友達の遊びに興味を向ける姿は共通しています。

以前、入園して間もない1歳の子が、お迎えの時に毎日大泣きしていました。当時の私は「まだ慣れていない」と受け取っていました。後で日中の様子を見直すと、実は楽しく遊んでいて、お迎えで安心して気持ちを出していただけでした。授乳も同じで、家での姿だけ、あるいは一場面だけで「できていない」と決めつけないことが大切です。

進めどきを考える3つのサイン

「やめなきゃ」という義務感ではなく、親子の様子から進めどきを探す目安を3つ挙げます。これは園での観察と面談での声をまとめた私の見立てで、医学的な基準ではありません。

サイン1:食事から食べる量が安定してきた

給食や家庭の食事で、決まった時間にある程度しっかり食べる日が増えてきたら、授乳に頼る割合が下がっていきます。食べムラがある時期は、無理に進めずにそのままで大丈夫です。

サイン2:授乳が「栄養」より「安心のため」に変わってきた

眠いとき、不安なとき、甘えたいときに求める場面が中心になってきたら、授乳以外の安心の方法を足していける時期です。抱っこ、背中のトントン、お気に入りのぬいぐるみなどが代わりになります。

サイン3:お母さん自身に「そろそろ」という気持ちが出てきた

見落とされがちですが、これも大切なサインです。睡眠不足、体の疲れ、職場復帰など、お母さんの状況は進めどきの判断材料になります。子どもの気持ちだけでなく、お母さんの余裕も一緒に見てください。

進め方の基本:段階的に、一つずつ

やめると決めた場合は、一度にすべてをやめるより、段階的に進めるほうが親子とも負担が少ないと、面談でも伺います。順番の例です。

  1. 日中の授乳を、遊びや食事に置き換える。外遊びやおやつ、絵本の時間で、求める前に気持ちを満たします。
  2. 「おっぱいは○○のあとね」と見通しを伝える。言葉が出始める1歳後半以降は、簡単な声かけが通じやすくなります。
  3. 最後に残りやすい寝る前と夜間を、別の方法に置き換える。

うまくいかない日があっても、後戻りしたからといって失敗ではありません。子どもの様子を見て、少し前の段階に戻って構いません。

夜の授乳をどうするか

卒乳の相談で一番多いのが、夜の寝かしつけと夜間の授乳です。園での昼寝の様子を見ていると、眠るための手段は子どもによってさまざまです。

  • 寝る前の流れを固定する。お風呂、歯みがき、絵本、消灯という順番を毎日同じにすると、「おっぱいで寝る」から「流れで寝る」への切り替えがしやすくなります。
  • 授乳の位置と場所を変える。寝室ではなくリビングで済ませるなど、環境を少し変えるだけで、求め方が変わることがあります。
  • パートナーに協力してもらう。数日だけ寝かしつけを交代してもらう家庭では、お母さんの顔が見えない分、子どもが切り替えやすい様子がみられます。

夜間の授乳をやめる時期は、体調や季節も影響します。発熱や感染症が流行する時期、環境の変わる時期は、無理に進めないほうが安心です。

こんなときは、早めに相談してください

次のような場合は、保護者だけで抱え込まず、かかりつけの小児科、地域の保健センター、助産師さんに相談することをおすすめします。

  • 体重の増え方や食事量が心配なとき
  • 授乳をやめた後、お母さんの胸が強く張って痛むとき
  • 食事をほとんど受けつけず、飲み物もあまりとれないとき
  • やめたいのに親子とも苦しく、気持ちが追い詰められているとき

園でも、日中の給食量や午睡の様子を担任がお伝えできます。「家ではこうなのですが、園ではどうですか」と聞いていただくと、判断の助けになります。

周りの声に疲れたときに

「まだあげてるの?」「早くやめないと甘えん坊になるよ」。周囲のこうした言葉が、いちばん保護者の心を削ります。園で見ている限り、授乳を続けているから甘えが強い、という関係は見当たりません。甘え方は気質によるところが大きく、卒乳が早い子にも遅い子にも、甘えん坊の子もしっかり者の子もいます。

大切なのは、お母さんが「この子とこの時期を過ごしている」と納得して選ぶことです。続けるのも、やめるのも、どちらも立派な選択です。

よくある質問

Q1. 保育園に入るまでに卒乳しておく必要はありますか。

必須ではありません。園では日中は授乳をしないため、子どもは園で別の方法で気持ちを落ち着かせていきます。朝夕の授乳を続けながら通っている子もいます。気になる場合は、入園前の面談で担任に家での状況を伝えてください。

Q2. 離乳食が完了したら、母乳はやめるべきですか。

やめなければならないわけではありません。厚生労働省のガイドが示す離乳の完了は、食事から栄養をとれる状態の目安で、卒乳とは別の考え方です。母乳を続けるかどうかは、親子の状況で決めて大丈夫です。

Q3. 卒乳を始めたら子どもが泣いて、かわいそうで続けられません。

泣くのは、気持ちを一生懸命伝えているからです。ただ、親子とも苦しいときは、いったん中断して構いません。時間を置いて、別の時期に試す方法もあります。一人で悩まず、保健センターや助産師さんに相談してみてください。

Q4. 卒乳後に甘えが強くなった気がします。

授乳で満たしていた安心を、別の形で求めている可能性があります。抱っこの時間を増やす、スキンシップを意識的に取るなどで、少しずつ落ち着くことが多いです。長く続いて心配なときは、園や保健師さんにご相談ください。

まとめ

  • 卒乳に期限はなく、離乳の完了(生後12〜18か月頃が目安)とも別のものです。
  • 進めどきは、食事の安定・授乳の意味の変化・お母さんの気持ちの3つを見て考えます。
  • やめるなら段階的に。夜は流れを固定し、後戻りしても失敗ではありません。
  • 不安なときは、小児科・保健センター・園に相談してください。

「うちの子のペースでいい」と思えるだけで、毎日の授乳の時間は少し穏やかになります。焦らず、一緒に歩いていきましょう。

参考文献