5月末から6月にかけて、首都圏の私立中学では学校説明会が本格化します。2026年度も東京都だけで延べ数百回の説明会が予定されており、多くの保護者が足を運ぶ時期です。

しかし18年間、四大進学塾の現場で1500家庭以上を見てきた経験から断言します。説明会に「なんとなく行って帰ってきた」家庭と、5つの質問を持って臨んだ家庭では、秋以降の志望校戦略の精度がまるで違います。

志望校選定の段階で勝負は決まっている──これは私がコンサルで繰り返し伝えていることです。そして学校説明会は、偏差値表の外にある「相性」を確認できる年に数回しかないチャンスなのです。

なぜ偏差値表だけで志望校を決めてはいけないのか

偏差値は「届くかどうか」の目安にすぎません。入学後に6年間通い、伸びるかどうかを決めるのは、学校と子どもの相性です。

私がコンサルで担当した家庭に、こんなケースがありました。6年生の10月、偏差値60まで届いた子が偏差値65の難関校を志望していました。しかし本人の得意は理科の論述で、算数のスピード問題が苦手だった。志望校の算数は処理速度重視の出題形式。私は「論述比重の高い偏差値50の学校」への切り替えを提案しました。結果、第一志望に合格し、中学進学後も成績上位を維持。最終的に現役で東大文一に合格しています。

偏差値表ではなく過去問との相性で見ると、この子にとって偏差値50の学校こそが「最適解」でした。こうした相性の手がかりは、実は学校説明会で得られるのです。

学校説明会で聞くべき5つの質問

質問1:科目別の配点比重と出題形式の特徴を教えてください

入試の合否を分けるのは総合偏差値ではなく、科目別の配点と出題形式です。算数が150点満点の学校と100点満点の学校では、算数が苦手な子にとって意味がまったく違います。

説明会の入試説明パートでこの情報が出ない場合は、個別相談で必ず確認してください。具体的には以下の3点です。

  • 科目別の配点(傾斜配点の有無)
  • 算数・国語の出題形式(スピード型か論述型か)
  • 理科・社会の記述問題の比率

この情報があれば、帰宅後に過去問を入手して「出題マップ」を作成する準備が整います。過去問は解くものではなく、まず分析するもの。5〜6月の説明会はその分析材料を集める絶好の機会です。

質問2:家庭学習の前提時間はどの程度を想定していますか

入学後の宿題量や家庭学習の前提時間は、学校によって大きく異なります。親が動く範囲を最初に決めるためにも、この質問は欠かせません。

たとえば、面倒見の良い学校では補習や再テスト制度が充実している代わりに、宿題量が多い傾向があります。一方、自主性を重視する学校では家庭での管理能力が求められます。

確認すべきポイント:

  • 1日あたりの宿題の目安時間
  • 提出物の頻度と未提出時の対応
  • 定期テスト以外の小テスト・確認テストの有無

共働き家庭で平日の学習サポートが難しい場合、面倒見重視の学校を選ぶか、自走力のある子なら自主性重視の学校が合うか。家庭の可処分時間と学校の前提が合わなければ、入学後に親子ともに苦しくなります。

質問3:学習の遅れが出た生徒へのフォロー体制を教えてください

中学受験を突破した子どもたちは、入学後に「全員が上位層」という環境に置かれます。必然的に成績の序列が生まれ、下位に沈む生徒も出てきます。

その際のフォロー体制は学校選びの重要な判断材料です。

  • 補習授業の有無と頻度(放課後・長期休暇中)
  • 再テスト制度の仕組み
  • 個別面談やチューター制度の有無
  • 外部塾に通う生徒の割合(学校側の把握度)

「入学後に塾が必要かどうか」は保護者の本音の関心事です。個別相談では遠慮せずに聞いて構いません。学校側も正直に答えてくれるケースがほとんどです。

質問4:入学者の学力層と6年後の進路分岐はどうなっていますか

偏差値50の学校でも、入学後の学力分布は均一ではありません。上位層がどの大学に進んでいるか、中間層のボリュームゾーンはどこか。この情報は学校のホームページだけでは読み取れません。

説明会では「進学実績」として合格者数が紹介されますが、重要なのは現役合格率進学先の分布です。「東大○名合格」の数字だけでなく、卒業生全体のうち何割がどのレベルの大学に進んでいるかを確認しましょう。

個別相談で「中間層の生徒はどのような進路に進むことが多いですか」と聞くと、学校の教育力の実態が見えてきます。

質問5:部活動の活動頻度と、学業との両立についての方針を教えてください

中高6年間は学業だけの時間ではありません。部活動や学校行事への取り組み方は、子どもの学校生活の満足度を大きく左右します。

確認すべきは以下の点です。

  • 部活動の週あたりの活動日数と時間
  • 定期テスト前の活動制限の有無
  • 高2以降の部活と受験勉強の両立に関する学校の方針

朝5時に起きて過去問を分析する生活を続けている私ですが、受験だけが子どもの人生ではないことは十分に理解しています。むしろ、入学後に「この学校を選んでよかった」と子ども自身が思えるかどうかが、6年間の学力の伸びに直結するのです。

個別相談でさらに踏み込む3つの追加質問

学校説明会の後に設けられる個別相談は、パンフレットに載らない情報を得る最大の機会です。以下の3つは、多くの保護者が聞きそびれる質問です。

追加1:繰り上げ合格は例年何名程度出ていますか

併願戦略を組む上で、繰り上げ合格の実態は重要な情報です。学校によっては正式に回答しないケースもありますが、聞いて損はありません。

追加2:入学者の通塾率はどの程度ですか

入学後に塾が必要かどうかの判断材料です。通塾率が高い学校は、学校の授業だけでは大学受験に対応しきれない可能性を示唆しています。

追加3:アレルギーや健康面での個別対応はどこまで可能ですか

お子さんに食物アレルギーや持病がある場合、入学前に確認しておくべき事項です。給食の対応、保健室の体制、緊急時の連絡フローなどを具体的に聞いておきましょう。

説明会の「前」と「後」にやるべきこと

説明会前:質問リストと比較シートを準備する

上記5つの質問を印刷して持参し、学校ごとに回答を記録する比較シートを作成しておくと、複数校を回った後の検討が格段に楽になります。

説明会後:出題マップの作成に着手する

質問1で得た科目別配点・出題形式の情報をもとに、過去問5年分の出題マップを作成します。これは親の役割です。6月に着手すれば、夏期講習前に志望校の出題傾向を把握でき、夏の学習計画の精度が上がります。

まとめ

学校説明会は、偏差値表の外にある「相性」を確認するための貴重な機会です。5つの質問を携えて臨めば、秋以降の志望校戦略に明確な根拠が加わります。志望校選定の段階で勝負の大半は決まっています。6月の説明会シーズンを、ただの情報収集で終わらせないでください。

よくある質問(FAQ)

Q. 学校説明会には何年生から参加すべきですか?

A. 理想は小4の秋〜小5の春です。小6になってから初めて行くと、比較検討の時間が足りなくなります。ただし、低学年のうちから無理に連れ回す必要はありません。親だけで下見に行き、小5以降に子どもを連れて「この学校に通いたいか」を本人に感じさせるのが効果的です。

Q. 説明会で子どもの偏差値を伝えて合格可能性を聞いてもいいですか?

A. 個別相談では聞いて構いません。ただし、学校側は「偏差値○○なら大丈夫」とは言いません。それよりも「過去問との相性を見てください」と言われることが多いでしょう。偏差値はあくまで目安であり、入試本番の得点力とは別物です。

Q. 共働きで平日の説明会に参加できない場合はどうすればいいですか?

A. 多くの学校が土曜日や日曜日にも説明会を開催しています。また、2026年現在はオンライン説明会を併用する学校も増えています。ただし、校内の雰囲気や生徒の様子は現地でしか感じ取れません。最低1回は現地参加することをお勧めします。

Q. 何校くらいの説明会に参加すればいいですか?

A. 志望校候補として検討している学校に加え、比較対象として偏差値帯の異なる学校を含めて5〜8校が目安です。同じ偏差値帯の学校を3校以上回ると、校風の違いが明確に見えてきます。

参考文献