FP相談でよく聞かれるのが、「出産手当金と育児休業給付金って、何が違うんですか?」という質問です。

SNSでも先日、社労士の方が「出産手当金・育児休業給付金・出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金、この5つをスラスラ答えられる社労士を尊敬する」と書いていて、思わず深くうなずいてしまいました。専門家でも混乱するほど、子育て関連の給付金は複雑になっています。

しかも2025年4月に2つの給付金が新設され、全部で5種類に。結論から言うと家計の見直しが先──と言いたいところですが、今回ばかりは「まず制度を知ること」が先です。申請しなければ1円ももらえない制度ばかりですから。

子育て給付金5つの全体像──管轄・対象・金額の一覧表

まず全体を俯瞰しましょう。最大のポイントは「管轄が違う」ことです。出産手当金だけが健康保険(協会けんぽ・健保組合)、残り4つは雇用保険(ハローワーク)の管轄です。

給付金名管轄対象者支給額の目安期間
①出産手当金健康保険被保険者本人(産休取得者)標準報酬日額の2/3産前42日+産後56日
②育児休業給付金雇用保険育休取得者(男女とも)賃金日額の67%(180日超は50%)原則 子が1歳まで
③出生時育児休業給付金雇用保険産後パパ育休取得者賃金日額の67%出生後8週間以内・最大28日
④出生後休業支援給付金(2025年4月〜)雇用保険②③の受給者で夫婦とも14日以上育休取得賃金日額の13%(上乗せ)最大28日
⑤育児時短就業給付金(2025年4月〜)雇用保険2歳未満の子の時短勤務者時短中賃金の10%子が2歳になるまで

①出産手当金──唯一の「健康保険」給付

出産手当金は、健康保険の被保険者が出産のために仕事を休み、給与が出ない期間に支給されます。申請先はお勤め先の健康保険組合または協会けんぽです。ハローワークではありません。

計算式:支給開始日以前12カ月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3

たとえば標準報酬月額の平均が30万円なら、1日あたり約6,667円。産前42日+産後56日=98日分で約65万円です。うちの長女のとき実際に計算してみて、「意外ともらえるな」と思った記憶があります。

②育児休業給付金──子育て給付の「本体」

育児休業中に雇用保険から支給される給付金で、男女ともに対象です。最初の180日間は休業開始時賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。

社会保険料も免除されるため、手取りベースでは休業前の約8割をカバーできるケースが多く、これが「育休中の生活を支える柱」です。

申請は原則として事業主経由でハローワークに行います。自分で直接申請するものではないので、会社の人事・総務との連携が重要です。

③出生時育児休業給付金──「産後パパ育休」の給付

2022年10月に創設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」に対応する給付金です。子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得でき、2回に分割することも可能です。

給付率は②と同じ67%。②の育児休業給付金とは別枠なので、産後パパ育休→育児休業と連続取得すれば、それぞれの給付金を受け取れます。

④出生後休業支援給付金──「手取り10割」の鍵(2025年4月新設)

2025年4月に新設された制度で、「育休中の手取り10割」を実現するための上乗せ給付です。

支給条件:

  • 夫婦ともに14日以上の育児休業を取得すること
  • ②または③の給付金を受給していること
  • 配偶者が雇用保険に未加入(自営・専業主婦等)でも、本人が条件を満たせば受給可能

支給額:賃金日額の13%を最大28日間、②③に上乗せ

つまり、67%+13%=80%。ここに社会保険料免除(約15%相当)が加わるため、実質的に手取りの約100%になります。これが「手取り10割」の仕組みです。

ただし注意点があります。上乗せの対象は最大28日間のみ。育休全期間が80%になるわけではありません。FP相談で「育休中ずっと手取り10割なんですよね?」と聞かれることが増えていますが、正確には最初の28日間だけです。

⑤育児時短就業給付金──復職後の味方(2025年4月新設)

育休から復職して時短勤務を選んだ方への新しい給付金です。2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている雇用保険被保険者が対象で、時短勤務中の賃金の10%が上乗せ支給されます。

たとえば、フルタイム時の月収が30万円で、時短勤務後の月収が24万円になった場合、24万円×10%=2.4万円が追加で支給されます。

申請のポイント:

  • 事業主がハローワークに届出・申請を行う
  • 育児休業から引き続き時短勤務を開始、または時短開始前2年間に被保険者期間12カ月以上が必要
  • 支給額は時短前の賃金水準を超えないよう調整される

「申請しないともらえない」──チェックリスト

5つの給付金に共通するのは、どれも自動では支給されないということです。長女出産時、私自身が医療費控除の確定申告でふるさと納税のワンストップ特例を失効させかけた経験がありますが、出産・育児まわりの手続きは本当に漏れやすい。以下のタイミングで確認しましょう。

タイミング確認すべき給付金動くべき人
妊娠判明・産休前①出産手当金本人→会社の健保担当
産休〜育休開始②育児休業給付金会社→ハローワーク
出生後8週間以内③出生時育児休業給付金パートナーの会社→ハローワーク
夫婦とも14日以上育休取得時④出生後休業支援給付金会社→ハローワーク(②③と同時申請可)
育休→時短復職時⑤育児時短就業給付金会社→ハローワーク

よくある質問(FAQ)

Q1. 出産手当金と育児休業給付金は同時にもらえますか?

A. 対象期間が異なるため、時期をずらして両方受給できます。出産手当金は産前産後の98日間、育児休業給付金は産後休業が終わった翌日(産後57日目)以降が対象です。重複する期間はありません。

Q2. 夫が自営業でも「手取り10割」の出生後休業支援給付金はもらえますか?

A. はい。配偶者が自営業・フリーランス・専業主婦(夫)で雇用保険に未加入であっても、申請者本人が条件を満たしていれば受給できます。「配偶者が育休を取れない場合」として例外的に認められています。

Q3. 育児時短就業給付金は、パートでも受給できますか?

A. 雇用保険の被保険者であれば雇用形態を問いません。ただし、時短勤務開始前2年間に被保険者期間が12カ月以上あること等の要件を満たす必要があります。週20時間未満になる場合は雇用保険の被保険者資格を喪失する可能性があるため注意してください。

Q4. 5つの給付金の申請を全部自分でやる必要がありますか?

A. ①出産手当金は本人が申請書を記入し、医師と事業主の証明を添えて健保に提出します。②〜⑤はいずれも原則として事業主経由でハローワークに申請するため、本人が直接ハローワークに行く必要は通常ありません。ただし、会社任せにせず「申請されたか」を必ず確認しましょう。

Q5. 第2子以降でも「出生後休業支援給付金」はもらえますか?

A. はい。子ども1人ごとに要件を満たせば受給できます。第1子のときに取得していなくても、第2子で条件を満たせば対象になります。

まとめ──制度を知るだけで家計の景色が変わる

5つの給付金をフル活用すれば、出産前から子が2歳になるまで切れ目のない経済支援を受けられます。特に2025年4月新設の④⑤は、まだ職場でも周知が追いついていない印象です。

「公的データの裏付けはあるか」を最初に問うのが私の癖ですが、今回の制度改正は厚生労働省の公式資料で明確に示されています。まずはこの一覧表をスマホに保存して、産休に入る前に人事担当に「この5つ、全部申請してもらえますか?」と確認してみてください。それだけで数十万円単位の受給漏れを防げます。

参考文献