「年少扶養控除が復活するかも」——2026年の参院選を前に、この話題がSNSで盛り上がっています。FP相談でよく聞かれるのが「児童手当をもらってるのに、なんで手取りが減った気がするの?」という質問。実はこれ、2011年に年少扶養控除が廃止されたことと深く関係しています。

結論から言うと家計の見直しが先ですが、「控除」と「手当」の違いを正しく理解しておくことで、制度変更に振り回されない家計設計ができます。今回は年収別のシミュレーションで、あなたの家庭への影響を具体的に見ていきましょう。

そもそも「年少扶養控除」って何だったの?

年少扶養控除とは、16歳未満の子どもを扶養している親の所得から一定額を差し引く制度でした。所得税で38万円、住民税で33万円が課税所得から控除され、その分だけ税負担が軽くなる仕組みです。

ところが2010年、民主党政権が「子ども手当(現・児童手当)」を創設した際、「手当を出すから控除は廃止」という交換条件で年少扶養控除は廃止されました。つまり0〜15歳の子どもだけが、扶養控除の恩恵を受けられないという状態が15年以上続いているのです。

うちの長女のとき実際に計算してみたんですが、高齢の親を扶養している方には38万円の控除があるのに、育ち盛りの子どもにはゼロ。「子育て世帯だけ増税されている」と言われても仕方ない構造です。

児童手当の拡充で「取り戻せた」のか?──年収別シミュレーション

2024年10月から児童手当が大幅に拡充されました。主な変更点は以下の3つです。

  • 所得制限の撤廃:年収に関係なく全世帯が受給可能に
  • 高校生まで延長:支給対象が中学生→18歳年度末まで
  • 第3子以降は月3万円:カウント方法も22歳年度末まで拡大

では、この拡充によって「年少扶養控除廃止の穴」は埋まったのでしょうか。子ども1人(小学生)の共働き世帯を想定して、年収別に試算してみます。

年少扶養控除が「あった場合」の減税効果(子ども1人あたり)

年収(片働き)所得税率所得税の減税額住民税の減税額合計減税額(年)
400万円10%38,000円33,000円71,000円
600万円20%76,000円33,000円109,000円
800万円23%87,400円33,000円120,400円
1,000万円33%125,400円33,000円158,400円

※住民税の税率は一律10%、所得税率は課税所得に応じた概算値です。

児童手当(0〜15歳)の年間支給額との比較

年収控除があった場合の減税額児童手当(年間)差額
400万円71,000円120,000円+49,000円(手当が有利)
600万円109,000円120,000円+11,000円(手当が有利)
800万円120,400円120,000円−400円(ほぼトントン)
1,000万円158,400円120,000円−38,400円(控除が有利)

ポイントは年収800万円を境に、控除の方が有利になるということ。年収600万円以下の世帯では児童手当の方が恩恵が大きいですが、年収が上がるほど「控除廃止=実質増税」の影響が効いてきます。

「控除も手当も両方ほしい」は現実的か?

国民民主党が2026年の参院選で掲げているのが「年少扶養控除の復活」です。法案では、16歳未満の子ども1人につき所得税38万円・住民税33万円の控除を復活させる内容になっています。

もしこれが実現すれば、児童手当と年少扶養控除の「二重取り」が可能になります。ただし、財源の問題は避けられません。

実は2026年4月からは新たに「子ども・子育て支援金」が健康保険料に上乗せされます。年収600万円の会社員なら月額575円(年間約6,900円)、年収800万円なら月額767円(年間約9,200円)の負担増です。この支援金率は2028年度にかけて段階的に0.4%程度まで上がる見込みで、負担はさらに増える方向です。

つまり、児童手当が増えても、保険料負担も増えている。控除が復活しても、別の名目で負担が増える可能性がある。制度単体で「得か損か」を判断するのではなく、家計全体の手取りで見る癖をつけることが大切です。

2026年もう一つの注意点──高校生の扶養控除「縮小」

年少扶養控除の復活とは別に、2026年分の所得税から、16〜18歳(高校生)の扶養控除が縮小されることが決まっています。

  • 所得税の控除額:38万円 → 25万円に縮小
  • 住民税の控除額:33万円 → 12万円に縮小(2027年度〜)

高校生まで児童手当が拡充された(年12万円)見返りに、扶養控除が削られるわけです。うちの長男は今小5ですが、高校生になる頃にはこの影響をもろに受けます。朝5時に起きて長男と算数をやりながら、「この子が高校に上がる頃の制度はどうなってるんだろう」と考えることもあります。

FPとして伝えたい「制度に振り回されない」3つの家計防衛策

  1. 児童手当は「なかったもの」として貯蓄・投資に回す
    制度変更で金額が変わっても、生活費に組み込んでいなければダメージは最小限です。うちでは児童手当は全額、新NISAの積立原資にしています。
  2. 年末調整の後に「控除もれ」がないかチェックする
    年少扶養控除が復活した場合、適用初年度は会社側の対応が遅れる可能性があります。確定申告で取り戻す準備をしておきましょう。
  3. 「手取りベース」で年1回、家計の定点観測をする
    額面年収ではなく、税金・社会保険料を引いた「手取り」がいくらかを毎年チェック。私はExcel家計簿で毎年1月に前年の手取り推移を記録しています。これだけで制度変更の影響を実感値として把握できます。

よくある質問(FAQ)

Q. 年少扶養控除が復活したら、児童手当は廃止されますか?
A. 現在の議論では、児童手当はそのまま維持し、控除を「追加で」復活させる案が主流です。ただし、財源次第で変わる可能性があるため、国会審議を注視しましょう。
Q. 共働きの場合、年少扶養控除はどちらの親が使えますか?
A. かつての制度と同じであれば、どちらか一方の親のみが適用可能です。一般的には所得税率が高い方(年収の高い方)に適用した方が減税額が大きくなります。
Q. 年少扶養控除の復活はいつからですか?
A. 国民民主党の法案では所得税は2026年分から、住民税は2027年度分からの適用を想定しています。ただし2026年5月時点で国会審議中であり、成立は確定していません。
Q. 子ども・子育て支援金は子どもがいない世帯も負担するのですか?
A. はい。健康保険の加入者全員が対象です。子どもの有無に関係なく、標準報酬月額に支援金率(2026年度は0.23%)を掛けた額が徴収されます。
Q. 第3子の児童手当が月3万円になったと聞きましたが、「第3子」の数え方は?
A. 2024年10月の改正で、第3子のカウント対象が「22歳の年度末まで」に拡大されました。大学生の上の子も数に入るため、以前より第3子加算を受けやすくなっています。

参考文献