公立中高一貫校の人気が続いている。2026年度の都立中高一貫校の平均倍率は約3.5〜4倍。三鷹4.30倍、桜修館3.88倍と、私立中堅校よりも狭き門だ。にもかかわらず「公立なら塾なしでもいけるのでは」と考える家庭は少なくない。
私は18年間、四大進学塾で主任講師を務め、独立後は家庭学習戦略のコンサルを行っている。公立中高一貫校を志望する家庭からの相談も多い。そこで毎年繰り返されるのが「適性検査の作文がまったく書けない」という悩みだ。
結論から言えば、作文が書けない原因の大半は練習量ではなく「型」を知らないことにある。そして適性検査で最も差がつくのは、この作文と記述だ。志望校選定の段階で勝負は決まっているという私の持論は、公立中高一貫校でも変わらない。出題構造を分析し、家庭で何をどう練習するかを設計することが合否を分ける。
適性検査の作文は私立4科入試とまったく構造が違う
まず保護者に理解してほしいのは、適性検査と私立4科入試の出題構造の根本的な違いだ。
- 私立4科入試:教科独立型。算数は特殊算、国語は心情読解。各教科の知識と解法パターンが問われる
- 適性検査:教科横断型。複数の資料を読み取り、論理的に考え、400字前後の意見文で表現する力が求められる
つまり、適性検査の対策は私立対策の延長線上にはない。両方を均等に対策するのは時間的に困難であり、ここを理解せずに「念のため四大塾にも通わせる」と判断すると、どちらも中途半端に終わるリスクが高い。
作文が「書けない子」の3パターンと家庭での処方箋
コンサルで年間200家庭以上と接する中で、適性検査の作文が書けない子のパターンは3つに分類できることがわかった。
パターン1:設問の条件を読み飛ばす
「あなたの体験をもとに」「筆者の意見に対して賛成か反対か」といった条件指定を無視し、感想文を書いてしまう。対策は設問の指示語に線を引く習慣をつけること。「もとに」「ふまえて」「理由を挙げて」など、条件を示す言葉を蛍光ペンでマークさせるだけで、ズレた回答は激減する。
パターン2:意見はあるが構成できない
頭の中に考えはあるのに、書き始めると途中で止まる。このタイプには「主張→理由→具体例→まとめ」の4パーツ構成を教えるのが最も効果的だ。400字なら各パーツ100字ずつ。まず骨組みメモを3分で書き、そこから肉づけする手順を体に覚えさせる。
パターン3:そもそも意見が浮かばない
これが最も根深い。日常的に「自分はどう思うか」を言語化する機会がない子に多い。処方箋は夕食時の「今日のニュース1分コメント」だ。新聞やニュースサイトの見出しを1つ選び、「賛成か反対か、理由を1つ」だけ言わせる。朝5時に起きて過去問を分析している私の日課と同じで、毎日の小さな積み重ねが思考の筋力をつくる。
週1本・400字の意見文トレーニング──家庭での実践法
適性検査の作文対策として、私が家庭に勧めているのは週1本、400字の意見文を書く習慣だ。毎日書く必要はない。週1本を丁寧に書き、親が「プロセス確認」することで十分に力がつく。
ステップ1:テーマを選ぶ(月曜・5分)
過去の適性検査で出題されたテーマ(環境問題、地域社会、コミュニケーション等)から1つ選ぶ。全国の公立中高一貫校の作文テーマは各年度100校以上が公開されており、ネタに困ることはない。
ステップ2:骨組みメモを書く(水曜・10分)
「主張→理由→具体例→まとめ」の4パーツを箇条書きでメモする。ここで親が見るべきは「設問の条件に合っているか」だけ。内容の良し悪しは判断しない。
ステップ3:本文を書く(土曜・30分)
骨組みメモをもとに400字で書く。時間は30分以内。書き終えたら子ども自身に声に出して読ませる。音読すると、接続詞の不自然さや論理の飛躍に本人が気づく。
ステップ4:親の確認は3項目だけ(土曜・5分)
添削はしない。確認するのは3つだけ。①設問の条件を満たしているか、②理由が1つ以上あるか、③字数は9割以上埋まっているか。この3項目をクリアしていればOKとする。親が内容に踏み込みすぎると、子どもは「正解を書かなければ」と萎縮し、自分の意見を出せなくなる。
適性検査型私立を活用した併願設計4ステップ
公立中高一貫校の倍率3〜5倍は、私立中堅校より厳しい。偏差値表ではなく過去問との相性で見ると、公立一本の受検は構造的にリスクが高い。そこで私が勧めているのが、適性検査型入試を実施する私立中学を併願に組み込む戦略だ。2026年度は東京都だけでも数十校が適性検査型入試を実施しており、選択肢は年々広がっている。
ステップ1:志望校の出題マップを作る(小5夏まで)
志望する公立中高一貫校の過去問を3〜5年分、「解かずに読む」。適性検査I(作文・読解)、II(算数的思考・理科的思考)、III(実施校のみ)の配点比重と出題傾向を親が把握する。これは30分でできる親の最重要タスクだ。
ステップ2:適性検査型私立をリストアップする(小5秋)
出題形式が公立に近い私立校を3〜5校リストアップする。1月に受験できる埼玉・千葉の学校を1校、2月1日・2日に受験できる東京・神奈川の学校を1〜2校含めるのが理想だ。
ステップ3:1月校で「安全基地」を確保する
1月に適性検査型私立で合格を取ることで、2月3日の公立本番に心理的余裕を持って臨める。親が動く範囲を最初に決めるという私の原則に従えば、1月校の選定と出願は親の仕事だ。
ステップ4:対策の重複を最小化する
適性検査型私立は公立との出題形式が近いため、対策が重複する。つまり、1つの対策で2つの受験に活きる。私立4科入試との二刀流を避け、適性検査に集中することで、限られた時間を最大限に活かせる。
費用面の構造的な違いも把握しておく
公立中高一貫校を志望する家庭の多くは費用も重視している。四大塾に3年間通えば200〜300万円。公立特化塾なら2年で80〜120万円。家庭学習+夏期講習スポット参加のハイブリッド型なら30〜60万円程度に抑えられる。週1本の作文トレーニングは家庭でできるため、追加費用はほぼゼロだ。
よくある質問
Q. 適性検査の作文対策は何年生から始めるべきですか?
A. 週1本の意見文トレーニングは小4後半から始めるのが理想です。ただし、小3以前は作文の「型」より「自分の考えを口に出す習慣」を優先してください。夕食時の1分コメントなら小2からでも始められます。
Q. 塾に通わず家庭だけで適性検査の作文対策は可能ですか?
A. 可能です。適性検査の作文で求められるのは知識量ではなく、条件整理→意見→根拠の型と、それを400字で表現する技術です。週1本の意見文を親がプロセス確認する形で十分に対策できます。ただし、模試は年2〜3回受けて現在地を確認してください。
Q. 公立中高一貫校と私立の併願は対策が分散しませんか?
A. 適性検査型入試を実施する私立を選べば、対策の重複が大きいため分散しません。私立4科入試との併願は出題構造がまったく異なるため時間的に厳しくなりますが、適性検査型私立なら1つの対策で2つの受験をカバーできます。
Q. 適性検査の作文で最も差がつくポイントは何ですか?
A. 「設問の条件に正確に答えているか」です。多くの受検生が自分の意見を書くことに集中するあまり、設問が求めている条件(体験に基づく・賛否を明示する等)を満たしていません。型を守ったうえで条件を満たすことが、部分点を安定させる最短ルートです。
Q. 親が作文の添削をする場合、どこまで踏み込むべきですか?
A. 添削は不要です。確認すべきは①条件充足 ②理由の有無 ③字数の3点だけ。内容の良し悪しを親が判断すると、子どもは正解を探す姿勢になり、自分の意見を出せなくなります。親の役割は添削者ではなくプロセスの確認者です。






