10月から11月にかけて、年長クラスの保護者から必ず出てくる質問があります。「就学時健診のお知らせが届いたのですが、何をする日なんでしょうか」「落ちたりしないですよね?」というものです。

はじめにお伝えすると、就学時健診は合否を決める試験ではありません。この記事では、法令などの公的資料で確認できたことと、園で年長さんを見てきた経験を分けて整理します。通知の内容は自治体ごとに違うので、最後は必ずお手元の案内を優先してください。

就学時健診は「入学を決める」ものではなく、入学前の健康チェック

就学時健診の正式名称は「就学時の健康診断」です。学校保健安全法に基づき、市区町村の教育委員会が実施します。学校保健安全法施行令の第1条では、学齢簿が作成された後、翌学年の初めから4か月前までの間に行うと定められています。準備に支障がない場合は、3か月前までとされています。

4月入学を前提にすると、おおむね秋から年末にかけてが実施の時期の目安になります。10月から11月に通知が届く家庭が多いのはそのためです。ただし、具体的な日付は自治体ごとに決まります。

目的は、疾病や異常の疑いがある子を早めに見つけて、入学までに必要な対応につなげることです。確定診断をする場ではなく、スクリーニング(ふるい分け)の場だと公的資料でも説明されています。結果の記録(健康診断票)は、就学先の学校長に送られます。

保護者面談でよく出るのが、「ここで何か指摘されたら、入学できなくなるのでは」という心配です。健診は入学の可否を決めるものではありません。子どもが学校で安心して過ごすための情報を集める機会、と考えて大丈夫です。

どんな検査をするの? 確認できた範囲と自治体差

学校保健安全法施行規則の第3条には、就学時の健康診断の方法と技術的基準が定められています。条文で確認できた項目は次のとおりです。

項目見ているポイント
栄養状態皮膚の状態、皮下脂肪、筋骨の発達、貧血の有無など。栄養不良や肥満傾向で注意が必要な子を見つける
脊柱・胸郭背骨や胸の形、発育の状態
視力左右それぞれの裸眼視力。眼鏡を使う子は矯正視力も測る
聴力オージオメータという機器で、左右別々に聞こえを調べる

これ以外に、内科や歯科の診察、面接形式のやりとりなどを組み合わせる自治体が多いようです。私が条文そのもので確認できたのは上の表の範囲までです。内科・歯科・その他の内容や、当日の順番、所要時間は自治体によって異なります。通知にある「持ち物」「集合時間」「保護者の同伴」の記載をそのまま確認してください。

当日までに家庭でできる準備

特別な勉強や練習は必要ありません。園で見ていると、当日にいちばん力を出せるのは、体調と気持ちが整っている子です。準備は次の4つで十分です。

1. 前日までに通知と持ち物を確認する

受付時間、持ち物(通知書、問診票、上履きなど)、記入が必要な書類を前日の夜までにそろえます。問診票は事前に記入する形式のことが多く、当日の朝にあわてて書くと、気づいたことを書き漏らしやすくなります。

2. 問診票に「普段の様子」を具体的に書く

聞こえや見え方、アレルギー、持病、気になる行動などを書く欄があります。「気になることはない」と空欄にするより、「大きな音が苦手で耳をふさぐ」「人が多い場所だと固まりやすい」のように、場面ごとに短く書いておくと、あとで学校側と共有しやすくなります。書くのが不安なときは、園の担任に「入学前に学校へ伝えておきたいことは何でしょう」と聞くと、整理の助けになります。

3. 視力や聞こえは、気になっているなら先に受診する

園で見ている限り、テレビに近づきすぎる、絵本を見るときに顔を傾ける、呼びかけに反応が薄い日があるといった様子は、視力や聞こえの確認につながることがあります。健診の結果を待たずに、気になった時点で小児科や眼科、耳鼻科に相談して構いません。

4. 当日の朝は、いつもの生活リズムで

前夜に慌てて練習させるより、早めに寝て、朝ごはんを食べ、トイレを済ませておくほうがずっと効果的です。着脱しやすい服を選んでおくと、上半身の診察がある場合にも子どもが焦らずにすみます。

子どもへの伝え方──「テストじゃないよ」を先に

年長さんは「小学校」という言葉に敏感です。「ちゃんとできるかな」という空気を大人が出すと、子どもも緊張します。おすすめは、次の3点を短く伝えることです。

  • 「小学校に行って、体の様子を見てもらう日だよ」(目的を一言で)
  • 「身長を測ったり、目や耳を調べたりするよ」(何をするかを具体的に)
  • 「できなくても大丈夫。先生に聞かれたら、わかる範囲で答えればいいよ」(結果ではなく参加を認める)

園では健診の前に、保健の先生ごっこや視力検査ごっこをして遊ぶことがあります。家でも、片目を手で隠して「これはなあに?」と絵カードを当てる遊びをしておくと、検査の動作が「知っている遊び」になり、初めてでも落ち着きやすくなります。

ちなみに我が家の長男(今は小3)も、年長の秋に健診を受けました。私は保育士ですが、そのときは「ちゃんと待てるかな」と自分のほうがそわそわしていたことを覚えています。専門家の親でも気になるものですから、気になるのは自然なことです。

当日、うまく答えられなくても心配しすぎなくて大丈夫

人見知りで声が出ない、知らない大人の前で固まる、ふざけてしまう。年長さんなら、どれも珍しいことではありません。他の子と比べると見落としますが、普段の園では元気におしゃべりする子が、初対面の場だとほとんど話せなくなることはよくあります。

園で見ている限り、緊張しやすい子ほど、慣れた環境では力を発揮します。当日の一場面の様子で、その子の力のすべてが測られるわけではありません。むしろ、「この子は初めての場所で緊張しやすい」という情報として受けとめ、入学後の声かけや環境づくりに生かすほうが、ずっと意味があります。

気になることがあるときの相談先

健診の場で、あるいは問診票を書いている途中で、「ちょっと気になる」という点が見つかることがあります。そのときは一人で抱えず、次の順で相談してみてください。

  1. 当日の会場で担当者に聞く:その場で医師や担当職員に、気になった点を質問できる場合があります。
  2. 園の担任・主任に相談する:日中の様子を具体的に知っているので、家庭での印象と照らし合わせて話ができます。
  3. 自治体の教育委員会や就学相談窓口:就学先の選び方(通常の学級か、通級か、特別支援学級かなど)を含めて相談できます。申込の時期は自治体で異なるため、早めの問い合わせが安心です。
  4. かかりつけの小児科や専門の医療機関:視力、聞こえ、発達面で心配なことがあれば受診します。

相談したからといって、何かが決まるわけではありません。「聞いてみた」というだけで、入学までの数か月を見通しやすくなる方は多いです。

健診のあとにやっておきたいこと

健診が終わったら、結果の通知が届く場合は目を通し、受診の勧めが書かれていたら早めに動きます。眼科や耳鼻科、歯科は予約が混み合う時期があり、冬になるほど取りにくくなります。治療が必要な場合に入学前に間に合わせるには、結果を待たず、気になる点があれば早めの受診がおすすめです。

あわせて、入学準備の全体像も秋のうちに確認しておくと余裕が持てます。生活面の準備については、当サイトの年長さんの入学準備に関する記事もあわせてご覧ください。

まとめ

  • 就学時健診は入学の合否を決めるものではなく、入学前の健康チェックです。
  • 学校保健安全法施行令では、翌学年の初めから4か月前までの間に実施すると定められています(準備に支障がない場合は3か月前まで)。
  • 条文で確認できる検査項目は、栄養状態・脊柱・胸郭・視力・聴力です。その他の内容は自治体の案内で確認します。
  • 子どもには「テストじゃない」と先に伝え、問診票には普段の様子を具体的に書きます。
  • 気になることは、会場・園・教育委員会・医療機関のどこへ相談しても構いません。

よくある質問

就学時健診を欠席したらどうなりますか?

公的資料で、欠席時の扱いは私の調べた範囲では確認できませんでした。日程が合わない場合は、通知に書かれた教育委員会の連絡先に、早めに相談してください。別日の対応があるかどうかは自治体によって異なります。

健診で何か指摘されたら、入学に影響しますか?

健診は疾病や異常の疑いがある子を見つけるスクリーニングで、入学の可否を決めるものではありません。結果は、入学後の学校生活で必要な配慮を考える材料になります。心配な点は、教育委員会や医療機関に相談できます。

保育園・幼稚園は休ませる必要がありますか?

平日の午後などに実施されることが多いですが、時間帯は自治体によって違います。園への欠席連絡や早退の手続きは、通知が届いたら早めに担任へ伝えておくとスムーズです。

下の子を連れて行ってもいいですか?

同伴の可否や、託児の有無は会場によって異なります。通知に記載がなければ、事前に問い合わせておくと安心です。当日は子どもが主役の場なので、できれば預け先を確保できると、保護者の方も落ち着いて質問できます。

参考文献