秋は、合不合判定テストなど小6向け公開模試の結果が続けて返ってくる時期です。封筒を開けて最初に目に入るのは、おそらく「第一志望の判定」でしょう。A判定なら安心し、D判定なら志望校を変えるべきか悩む。この反応は自然ですが、判定だけで動くと、遠回りになることが少なくありません。
元四大塾の講師として18年、1500家庭以上の模試結果を一緒に読んできました。結論から言うと、判定欄は「見る順番の最後」で十分です。この記事では、親が先に見るべき3つの欄と、返却当日の30分でできる分析手順を整理します。
まず確認:合格可能性判定は何を表しているか
模試の合格可能性判定は、「その回の成績」で見たときの合格の見込みを示したものです。四谷大塚の合不合判定テストは年6回実施される小6向けの公開模試で、志望校の入試動向や受験者の学力を分析して合格力を判定する仕組みです。偏差値一覧には「合格可能性80%偏差値」が載っており、その偏差値以上であれば合格可能性が約80%という目安を意味します(リセマム)。
ここで押さえたいのは次の3点です。
- 判定は模試当日の成績に基づく:偶然の正答や当日のミスも含まれます。高校向けの進路資料でも、判定は「今現在の成績」であり一喜一憂しないよう勧められています。
- 入試本番の問題で測ったものではない:模試の出題は志望校の問題とは別物です。
- 受験者層は模試ごとに違う:母集団が変われば、同じ学力でも偏差値は変わります。
塾をまたいだ偏差値比較は、そのままできない
三大模試と呼ばれる四谷大塚の合不合判定、日能研の全国公開模試、首都圏模試センター(現ONETES)の模試では、同じ子でも偏差値の出方が異なるとされています。首都圏模試は偏差値が10〜15ポイントほど高めに出るという解説もあります(神戸教育センター)。ただし、これは一般的な傾向の紹介で、年度や回によって差は変わります。
実務上のルールは単純です。偏差値は同じ模試同士の推移でだけ比べる。塾が違う友達の偏差値や、他社の偏差値一覧と並べて比較するのは避けてください。
なお、リセマムなどに掲載される各校の80%偏差値一覧は便利ですが、回ごとの数値の違いは記事だけでは判断しにくい面があります。正確な数値は、必ず各模試の公式資料で確認してください。
親が先に見る3つの欄
私が返却当日に必ず見る順番は、判定ではなくこの3つです。偏差値表ではなく過去問との相性で見ると、模試結果の価値は「判定」より「中身」にあると分かります。
1. 科目別の偏差値と得点(4科の合計より先に)
4科目の総合偏差値は平均化された数字で、得意・不得意が打ち消し合っています。志望校の配点が算数重視なのか、理科・社会の比重が高いのかで、同じ総合偏差値でも合格しやすさは変わります。まず科目別の偏差値を並べ、志望校の配点と見比べます。
2. 設問別の正答率と自分の正誤
成績表の設問別データで、次の3つに○印をつけます。
- 正答率が高いのに落とした問題:取りこぼし。最優先で直す対象です。
- 正答率が中程度で落とした問題:合否を分ける層。伸びしろが最も大きい領域です。
- 正答率が低く落とした問題:多くの受験生も落としている問題。深追いは不要です。
この分類をすると、「できなかった」の中に、直すべきものと放置してよいものが混在していると分かります。
3. 偏差値の推移(3回分以上)
1回の結果ではなく、同じ模試の3回分以上の推移を見ます。偏差値は±3〜5程度は簡単に動きます。下がった・上がったは、ほとんど誤差の範囲で、傾向として見えるのは3回以上並べたときです。
返却当日30分の分析手順
結果を受け取った日に、親子で次のように進めます。時間を区切ることが重要です。
- 最初の5分:判定欄は見ない。まず科目別の偏差値を前回と並べて書き出します。
- 次の10分:取りこぼしに印をつける。正答率の高い問題で落としたものを、ミスの種類(計算・読み違い・知識・時間切れ)に分けます。
- 次の10分:志望校の配点と見比べる。科目別の強み・弱みが志望校の出題とどう噛み合うかを確認します。
- 最後の5分:次の2週間の対策を1つだけ決める。「算数の計算ミスを減らす」など、1つに絞ります。
親が動く範囲を最初に決める、というのは私の持論です。このとき親の役割は「分類を手伝う」までで、解き直しの中身や勉強量の指示は塾と本人に任せます。結果を見て親が責める形になると、子は次回から結果を見せなくなります。
判定別に考える:A・B・C・Dのとき親がすること
| 判定の傾向 | よくある親の反応 | 先にやること |
|---|---|---|
| A・B(高め) | 安心して演習量を減らす | 過去問の得点で裏付けを取る。模試の問題と志望校の問題は別物 |
| C(境界) | 志望校を下げるか迷う | 科目別の差を確認し、直すべき失点の種類を絞る |
| D・E(低め) | 志望校変更・問題集の追加 | 3回分の推移と過去問の得点を見てから判断する |
志望校選定の段階で勝負は決まっている、と私は考えています。模試の判定が変わったから志望校を変える、という順番ではなく、まず過去問との相性を確かめ、その上で判定を補助資料として使うのが正しい順序です。
模試より過去問を信頼すべき場面
以前、偏差値60まで届いた家庭が、偏差値65の難関校を「安全圏」と見ていたケースがありました。お子さんの得意は理科の論述、不得意は算数のスピードでした。そこで論述比重の高い偏差値50前後の学校を提案し、第一志望に合格、進学後も上位を維持しました。模試の偏差値は「届く目安」にはなりますが、「伸びる相性」までは教えてくれません。
小6の秋であれば、模試の結果は志望校の過去問の得点と必ず並べてください。模試で届いていなくても過去問で得点できる子はいますし、その逆もあります。過去問の使い方については、過去問の進め方の記事もあわせて読んでください。
親がやってしまいがちな3つの失敗
- 判定だけを家族に共有する:「D判定だった」という伝え方は、子どもの意欲を削ぎます。科目別の改善点から話してください。
- 他塾の偏差値と比べる:前述のとおり、模試が違えば母集団も違います。
- 1回の結果で戦略を変える:3回分の推移を見ず、一度の下降で勉強法や志望校を変えるのは逆効果になりがちです。
まとめ
模試結果は、判定を読む道具ではなく、次の2週間の勉強を決めるための材料です。科目別偏差値、設問別の正誤、3回分の推移という3つの欄から入り、返却当日の30分で「次の1つ」を決める。この型を家庭で続けるだけで、結果への反応は落ち着き、勉強の中身が変わります。
よくある質問
Q1. 合格可能性80%の偏差値に届いていれば、ほぼ合格ですか?
いいえ。80%は模試の母集団における目安で、入試本番の保証ではありません。過去問の得点や科目ごとの相性とあわせて判断してください。
Q2. 判定が悪い回は、志望校を変えるべきですか?
1回の判定だけで変更しないでください。最低でも3回分の推移と、志望校の過去問の得点を確認してから検討します。
Q3. 塾が違う友達と偏差値を比べても大丈夫ですか?
おすすめしません。模試ごとに受験者層が異なり、偏差値の出方も変わります。比べるのは同じ模試の推移です。
Q4. 結果を子どもに見せる前に親が分析すべきですか?
親が先に判断をまとめるより、返却当日に親子で一緒に確認するほうがおすすめです。ただし、判定の良し悪しではなく、改善点から話し始めてください。






