FP相談でよく聞かれるのが、「大学の受験料って、だいたいいくらかかりますか?」という質問です。受験料はもちろん気になりますが、実際に大学受験を迎えた家庭が驚くのは受験料以外の出費の大きさ。共通テストの検定料、私立大学への出願料、遠方の大学を受けるための交通費・宿泊費、そして何より「併願校への入学金」──いわゆる捨て金が家計に重くのしかかります。
うちの長男のとき実際に、高3の秋になって「併願校への入学金って返ってこないんですか?」と聞かれてハッとしたことがあります。教育資金は「入学後の授業料」ばかりに目が行きがちですが、受験期の2〜3カ月に集中する出費を見落とすと、貯めてきた教育資金を予定外に取り崩すことになりかねません。
この記事では、大学受験にかかる費用の全体像を項目別に整理し、出願パターン別のシミュレーションと、高1から始められる準備術を解説します。
大学受験費用の全体像──「受験料だけ」で見ると見誤る
日本政策金融公庫の調査や各種データを総合すると、大学受験から入学手続きまでにかかる費用の平均は約30〜42万円です。進学先別では以下のような差があります。
| 進学先 | 受験費用の平均 |
|---|---|
| 国公立大学 | 約27.7万円 |
| 私立大学(文系) | 約31.3万円 |
| 私立大学(理系) | 約32.2万円 |
この金額には受験料だけでなく、交通費・宿泊費、入学しなかった大学への納付金(捨て金)が含まれています。つまり、受験料だけを計算しても実態の半分しか見えていないことになります。
費用①:受験料──出願パターンで10万円以上の差が出る
まず受験料の単価を確認しましょう。
| 試験の種類 | 受験料(目安) |
|---|---|
| 共通テスト(3教科以上) | 18,000円 |
| 共通テスト(2教科以下) | 12,000円 |
| 国公立大学 2次試験 | 17,000円 |
| 私立大学 一般選抜 | 約35,000円 |
| 私立大学 共通テスト利用入試 | 約15,000〜20,000円 |
| 私立大学 医学部 | 約40,000〜60,000円 |
ここで注目してほしいのが共通テスト利用入試です。個別試験の約35,000円に対して約15,000〜20,000円と半額以下で、試験会場に行く必要もありません。
出願パターン別シミュレーション
私立3校+国公立1校を受験する場合で比較してみます。
| パターン | 出願内容 | 受験料合計 |
|---|---|---|
| A(個別試験のみ) | 共通テスト+国公立2次+私立一般×3 | 約14万円 |
| B(共テ利用を併用) | 共通テスト+国公立2次+私立一般×2+共テ利用×2 | 約10.5万円 |
パターンBは共テ利用入試を2校分使うだけで約3.5万円の節約になります。さらに試験会場への交通費もかかりません。ただし共テ利用入試は合格最低点が高めに設定される傾向があるため、合格可能性とのバランスを見て使い分けることが大切です。
費用②:交通費・宿泊費──地方受験生の見えにくい負担
自宅から通える範囲の大学だけを受験するなら交通費は数千円で済みますが、地方から首都圏の大学を複数校受験する場合、状況は一変します。
| 費目 | 目安 |
|---|---|
| 新幹線・飛行機(往復) | 2〜5万円/回 |
| ビジネスホテル(1泊) | 7,000〜10,000円 |
| 受験期の宿泊日数 | 2〜5泊 |
| 現地での食事・交通費 | 2,000〜3,000円/日 |
仮に地方から首都圏の大学を3校受験し、4泊5日で滞在した場合、交通費・宿泊費だけで7〜10万円になることも珍しくありません。保護者が付き添う場合はその分もかかります。
節約のコツは、受験日程を連続させてホテルの滞在日数を減らすこと、早割の交通チケットを利用すること、そして前述の共テ利用入試で試験会場に行かずに出願できる大学を組み合わせることです。
費用③:併願校への入学金「捨て金」──最大の盲点
大学受験費用で最も見落とされやすく、かつ金額が大きいのが併願校への入学金です。
国公立大学の合格発表は多くの場合3月上旬〜中旬です。一方、私立大学の合格発表は2月中旬が多く、入学金の納付期限は合格発表から1〜2週間後に設定されています。つまり、国公立大学の結果を待つために、先に合格した私立大学に入学金を納めて席を確保する必要があるのです。
この入学金は、入学を辞退しても原則として返金されません。最高裁判所が「入学金は入学し得る地位の対価」と判示しており、法的にも返還義務はないとされています。
捨て金のシミュレーション
| 併願パターン | 入学金(平均) | 捨て金 |
|---|---|---|
| 私立1校に入学金を納付後、国公立に合格 | 約24万円 | 約24万円 |
| 私立2校に入学金を納付後、第一志望に合格 | 約24万円×2 | 約48万円 |
| 入学金の納付期限が重ならず1校で済む場合 | 約24万円 | 約24万円 |
各種調査では、入学しなかった大学への納付金は平均約10万円前後とされていますが、これは「払わなかった人」も含む平均値。実際に併願校に入学金を払った家庭に限れば、20〜30万円の捨て金が発生しているケースが多数です。
2026年度の変化:入学金返還・納付期限後ろ倒しの動き
朗報もあります。文部科学省は2025年6月に私立大学に対して入学金の負担軽減を求める通知を出しました。2025年12月のアンケート結果では、私立大学836校のうち約25%にあたる210校が負担軽減策を行う方針と回答しています。
2026年度入試で具体的に対応するのは83校で、その内訳は以下のとおりです。
- 納付期限の後ろ倒し:39校──国公立の合格発表後まで待てる
- 入学金の全部または一部返還:25校──辞退すれば返ってくる
- その他の軽減策(分割払いなど):19校
ただし、残りの約75%の大学は「現時点で対応予定なし」または「検討中」です。志望校が対象かどうかは、各大学の入試要項を必ず確認してください。入学金の納付期限が国公立合格発表後に設定されている私立大学を1校でも併願に入れられれば、捨て金を大幅に減らせる可能性があります。
受験費用を「月ならし」で準備する──FPが勧める3ステップ
結論から言うと家計の見直しが先、ではあるのですが、受験費用は金額以上に支出が2〜3カ月に集中することが問題です。教育資金全体の積立とは別に、受験費用を専用で準備する仕組みが必要です。
ステップ1:高1の段階で受験費用の「想定総額」を出す
志望校リストが固まっていなくても、「国公立志望+私立3校併願」「私立専願4校」など大まかなパターンで受験料・交通費・入学金の合計を概算します。多くの家庭で30〜50万円が目安になるでしょう。
ステップ2:高1〜高2の24カ月で「月ならし」積立
想定総額を24カ月で割れば、月々の積立額が見えます。
| 想定総額 | 月額(24カ月) |
|---|---|
| 30万円 | 12,500円 |
| 40万円 | 約16,700円 |
| 50万円 | 約20,800円 |
私はExcel家計簿に「受験費用積立シート」を別で作っています。授業料の教育資金とは口座を分けておくと、受験費用を取り崩しても教育資金の残高が見えなくなる心配がありません。
ステップ3:高2の冬に「出願カレンダー」を作成する
高2の冬〜高3の春に志望校リストが固まったら、各大学の出願期間・合格発表日・入学金納付期限をカレンダーに落とし込みます。このときに確認すべきは以下の3点です。
- 入学金の納付期限が重なる大学がないか(捨て金の最大額を把握)
- 共テ利用入試を使える大学はどこか(受験料と交通費の節約)
- 入学金返還制度がある大学はどこか(2026年度以降の新制度を要チェック)
出願カレンダーを夫婦で共有しておくと、「入学金の支払い、もう済ませた?」という確認漏れも防げます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 併願校への入学金は本当に返金されないのですか?
原則として返金されません。最高裁判例で入学金は「入学し得る地位の対価」とされています。ただし2026年度入試から、入学金の返還や納付期限の後ろ倒しに対応する私立大学が83校出てきています。各大学の入試要項で確認してください。
Q2. 受験費用はいつから準備を始めるべきですか?
高1の段階から月ならしで積立を始めるのが理想です。30〜50万円を24カ月で割れば月1.2〜2万円程度。教育資金の積立口座とは別口座で管理すると、使途が混ざりません。
Q3. 共通テスト利用入試を増やせば受験費用は大幅に減りますか?
受験料は個別試験の約半額(15,000〜20,000円)になり、交通費・宿泊費もかかりません。ただし合格最低点が高めの大学が多いため、「確実に受かる大学」を共テ利用で押さえ、チャレンジ校は個別試験で受けるという使い分けが現実的です。
Q4. 入学金の納付期限が国公立の合格発表後に設定されている私立大学はどう探せばいいですか?
各大学の入試要項やホームページで「入学手続期限」を確認するのが確実です。予備校や受験情報サイトが一覧表を出している場合もあります。2026年度入試では文科省の通知を受けて納付期限を後ろ倒しにした大学が39校あるため、最新情報を確認してください。
Q5. 浪人した場合、受験費用は単純に2倍になりますか?
受験料と交通費・宿泊費は再度かかりますが、予備校費(年間50〜100万円程度)が別途必要になるのが大きな違いです。受験費用そのものよりも予備校費のインパクトが大きいため、浪人の可能性も含めた資金計画を高2の段階で考えておくことをお勧めします。
まとめ
大学受験にかかる費用は、受験料だけ見ていると実態の半分しか把握できません。併願校への入学金(捨て金)、交通費・宿泊費を含めると30〜50万円が2〜3カ月に集中して出ていきます。
まずは高1の段階で想定総額を概算し、月ならしで積立を始めること。そして高2の冬に出願カレンダーを作り、共テ利用入試や入学金返還制度を活用して捨て金を最小化すること。この2つの準備で、受験期の家計の混乱を大幅に減らせます。
教育資金の計画は授業料だけでなく、こうした「入学前の集中出費」まで含めて組んでおくことが大切です。
参考文献
- 日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html - 文部科学省「私立大学における入学料に係る学生の負担軽減等について」(令和7年6月26日付通知)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/007/mext_03362.html - 文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果」
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00005.htm - 生命保険文化センター「大学受験から入学までにかかる費用」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/764.html






