FP相談で最近増えているのが「国公立なら児童手当を貯めれば大丈夫ですよね?」という質問です。結論から言うと家計の見直しが先──というより、その「大丈夫」の前提自体がいま揺らいでいます。

東京大学が2025年度入学生から授業料を約11万円引き上げたのを皮切りに、2026年度は埼玉大学・名古屋工業大学・電気通信大学・山口大学が追随を表明。国立大学の授業料は20年間据え置かれてきた標準額(年53万5,800円)から、上限額(年64万2,960円)へと動き始めました。

この記事では、値上げによって教育資金プランにどのくらいのズレが生じるのか、そしてそのズレを家計でどう埋めるかを具体的な数字で整理します。

国立大学の授業料「標準額」と「上限額」──4年間で約43万円の差

国立大学の授業料は文部科学省の省令で標準額が定められており、各大学は標準額の120%まで独自に引き上げることができます。

項目標準額上限額(120%)差額
年間授業料53万5,800円64万2,960円+10万7,160円
4年間授業料214万3,200円257万1,840円+42万8,640円
入学料込み4年間総額242万5,200円285万3,840円+42万8,640円

入学料(28万2,000円)は現時点で据え置きですが、授業料だけで4年間に約43万円の差が生まれます。うちの長男のとき実際に「児童手当+学資保険で国公立なら足りる」と計算して安心していたのですが、あのときの前提は標準額の年53万5,800円。12年前に組んだプランが、いまの上限額では成り立たなくなっていることに気づいたときはさすがに焦りました。

児童手当18年間の総額と値上げ後の不足額

2024年10月の制度改正で、児童手当は高校生年代まで延長されました。第1子・第2子の18年間の受取総額を計算してみましょう。

期間月額月数小計
0〜2歳1万5,000円36カ月54万円
3歳〜高校生1万円180カ月180万円
合計234万円

標準額なら4年間総額242万5,200円に対して児童手当234万円で「ギリギリ足りる」水準でした。しかし上限額になると285万3,840円──約51万円の不足が生じます。

つまり「児童手当を全額貯めれば国公立は大丈夫」というプランは、値上げによって約43万円のズレが発生しているのです。

値上げは一部の大学だけ?──広がる可能性を見ておく

「東大や一部の大学の話でしょ?」と思われるかもしれません。しかし、FP相談でよく聞かれるのが「うちの子が受験する頃にはどうなっているか」という不安です。

2025年度時点で上限額に引き上げた大学は東京大学・東京工業大学・千葉大学など首都圏が中心ですが、2026年度は埼玉大学・名古屋工業大学・電気通信大学・山口大学と地方にも広がり始めています。国立大学の運営費交付金が削減傾向にある中、今後さらに追随する大学が増える可能性は十分にあります。

教育資金のプランは「値上げしなかった場合」ではなく「値上げした場合」で組んでおくほうが安全です。

月2,000円から始める補填策──不足額の月額換算

約43万円の不足と聞くと大きく感じますが、月額に換算すると意外と手が届く数字です。

積立開始時期積立期間月額(概算)
0歳から18年間約2,000円
6歳(小1)から12年間約3,000円
10歳(小4)から8年間約4,500円
15歳(中3)から3年間約1万2,000円

0歳から始めれば月2,000円。小学校入学からでも月3,000円です。この金額なら、通信費の見直しやサブスク1つの解約で捻出できる範囲ではないでしょうか。

補填資金の置き場所

補填分の積立先は、使う時期までの年数で選びましょう。

  • 5年以上先に使う:個人向け国債 変動10年(2026年6月時点で年利約1.3%前後)やネット銀行の定期預金
  • 3〜5年先に使う:ネット銀行の定期預金(年利1.0〜1.3%程度)
  • 3年以内に使う:ネット銀行の普通預金(年利0.3〜0.75%程度)

朝5時に起きてデータ整理をしていた日に、自分のExcel家計簿で「値上げ後シミュレーション」のシートを追加したのですが、不足額を月額換算した瞬間に「これなら固定費見直しで十分カバーできる」と肩の力が抜けたのを覚えています。

多子世帯の大学無償化に頼りすぎない

2025年度から始まった多子世帯の大学等授業料無償化(所得制限なし)を前提にプランを組む方もいますが、注意点があります。この制度は「扶養する子どもが3人以上」が条件であり、第1子が就職して扶養を外れた時点で、残りのきょうだいが対象外になる可能性があります。

制度の恩恵を受けられる期間はきょうだいの年齢差によって大きく変わります。教育資金は制度が使えなかった場合も想定して組むのが鉄則です。

教育資金プランの見直し3ステップ

  1. 現在のプランの前提を確認する:授業料はいくらで計算しているか。標準額(年53万5,800円)で組んでいるなら、上限額(年64万2,960円)で再計算する
  2. 不足額を月額換算する:子どもの年齢から逆算し、月いくらの追加積立が必要かを把握する
  3. 固定費から原資を捻出する:通信費・保険料・サブスクの見直しで月2,000〜5,000円は確保できるケースが多い

よくある質問(FAQ)

Q. 公立大学も値上げしているのですか?

A. 公立大学は設置自治体が授業料を決定するため、国立大学とは仕組みが異なります。ただし、国立大学の値上げに連動して公立大学も引き上げる可能性はあるため、進路候補の大学の最新の授業料は個別に確認しましょう。

Q. 値上げ分を新NISAで運用するのはありですか?

A. 5年以上先に使う資金であれば選択肢の一つですが、3〜5年以内に使う教育費は元本保証型で管理するのが安全です。値上げ分の約43万円は金額として大きくないため、無理に投資リスクを取る必要はありません。

Q. 授業料免除の制度はありますか?

A. 国立大学には経済的理由による授業料免除制度があります。住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が対象で、全額免除・半額免除・1/4免除の区分があります。各大学の学生課に事前に確認することをおすすめします。

Q. 値上げは今後も続くのでしょうか?

A. 国立大学の運営費交付金が削減傾向にある中、大学側が収入確保のために授業料を引き上げる動きは今後も広がる可能性があります。文部科学省が標準額自体を引き上げる議論も出ており、上限額の120%という枠組みが変わる可能性もゼロではありません。

まとめ

国立大学の授業料値上げは、数年前に組んだ教育資金プランに約43万円のズレを生じさせます。ただし月額換算すれば0歳からで約2,000円、小学生からでも約3,000〜4,500円。固定費の見直しで十分にカバーできる金額です。

大切なのは「値上げに気づいて、プランを更新すること」。毎年4月の教育資金棚卸しデーに、志望校候補の最新授業料もチェック項目に加えてみてください。

参考文献