FP相談でよく聞かれるのが「給食費が無償化になったのに、家計がラクになった実感がない」という声です。2026年4月から公立小学校の給食費支援(児童1人あたり月5,200円)が全国でスタートしましたが、支援開始から2カ月が経った今、浮いたはずのお金が「どこに行ったかわからない」家庭が少なくありません。
結論から言うと家計の見直しが先──ではなく、今回は「すでに浮いているお金」をどう捕まえるかがテーマです。ソニー生命の「子どもの教育資金に関する調査2026」では、教育資金に不安を感じる親が78.0%に達し、不安の理由1位は3年連続で「物価の上昇」(62.9%)。一方で学校外教育費の月額支出は前年から4,150円も減少し、家計が教育費を削り始めている構造が浮かび上がっています。
この記事では、2026年度に子育て世帯が「制度変更で浮かせられるお金」の全体像を整理し、そのお金を教育資金に自動で積み上げる仕組み化3ステップをお伝えします。
2026年度、子育て世帯に「浮くお金」はいくら?
まず全体像を押さえましょう。2026年度に新たに始まった、または拡充された制度で子育て世帯の支出が減る(または収入が増える)主なものは以下の3つです。
①給食費支援:月5,200円×11カ月=年57,200円
公立小学校の児童1人あたり月額5,200円が国から支援されます。所得制限はありません。文部科学省の令和5年度調査で全国平均の給食費は月約4,700円でしたので、平均的な自治体であれば保護者負担はほぼゼロになる計算です。うちの長女のとき実際に毎月口座から引き落とされていた給食費が約4,500円だったので、この支援は月4,500〜5,200円の「見えない減額」になります。
ただし注意点が2つ。すでに独自に給食費を無償化していた自治体(約30%)では「新たに浮く金額」はありません。また、食材にこだわり給食費が5,200円を超える自治体では差額が自己負担になります。お住まいの自治体の状況を確認してください。
②児童手当の拡充:所得制限撤廃・高校生拡大
2024年10月の改正で所得制限が撤廃され、高校生年代まで支給対象が拡大されました。それまで所得制限超過で不支給だった家庭は、子ども1人あたり月1〜3万円が新たに入ってきている計算です。すでに受給中の家庭でも、高校生の子がいれば月1万円の増額になっています。
③物価高対応子育て応援手当:1人あたり2万円(一時金)
0〜18歳の子ども1人あたり2万円の一時金が2026年2〜3月に支給されました。申請不要で児童手当の口座に振り込まれていますが、「入っていたことに気づかなかった」という声もFP相談で聞きます。
合計すると?
たとえば公立小学校に通う子どもが2人いる家庭(これまで給食費を払っていた場合)では、給食費支援だけで年間約11.4万円が浮きます。これに物価高手当の4万円を加えると、2026年度だけで約15万円。児童手当の所得制限撤廃で新たに受給対象になった家庭なら、さらに年間24〜72万円が加わります。
なぜ「浮いたお金」は消えるのか
FP相談1500件の経験から断言しますが、仕組みがなければ浮いたお金は100%生活費に溶けます。理由は3つあります。
①「引き落としが減った」だけでは気づかない。給食費の支援は自治体経由で学校に直接支払われるケースが多く、保護者の口座から「引かれなくなる」形で反映されます。引き落とし額が減っても、残高が少し多いだけで意識に上りません。
②物価上昇が浮いた分を相殺する。2026年度の4人家族の生活費負担は前年から約8.9万円増加と試算されています(第一生命経済研究所)。給食費で浮いた5.7万円のうち大半が、食費や電気代の値上がりに吸収されてしまう構造です。
③「教育費を削る」ほうが先に起きている。ソニー生命の調査では、学校外教育費(塾・習い事)の月額支出が前年の20,039円から15,684円へと4,150円も減少しました。物価高で生活費が膨らみ、教育費から削るという本末転倒が起きています。
つまり、制度で浮いたお金を「意識せずに放置」すると、物価上昇に食われるか、すでに削ってしまった教育費の補填にすら回らないまま消えていくのです。
浮いたお金を教育資金に変える「仕組み化3ステップ」
ステップ1:浮いた金額を「見える化」する(所要時間15分)
まず、自分の家庭で実際にいくら浮いているかを計算します。
- 給食費:お住まいの自治体の月額給食費を確認(学校からの通知 or 自治体HP)。すでに無償化済みの自治体なら「0円」
- 児童手当:2024年10月以降、新たに受給を開始した or 増額されたかを確認
- 物価高手当:2万円×子どもの人数(すでに振り込み済み)
この合計額が、あなたの家庭の「2026年度に浮いたお金」です。紙でもスマホのメモでもいいので、金額を1つの数字として書き出すことが最初の一歩です。
ステップ2:浮いた金額と同額の「自動振替」を設定する(所要時間30分)
浮いた金額がわかったら、その分だけ教育資金用の口座への自動振替を設定します。ここが最も重要なポイントで、手動ではなく自動にすることがすべてです。
FP相談で3年以上教育資金の積立を継続できている家庭に共通するのは、給与日翌日の自動振替で手取りの5〜7%を先取りする仕組みを持っていること。今回の給食費支援で浮いた月5,200円をそのまま自動振替に乗せれば、年間57,200円が「何もしなくても」教育資金口座に積み上がります。
具体的な設定先は、教育資金を「使う時期」で選びます。
- 3年以内に使う教育費(中学入学準備など)→ ネット銀行の普通預金(金利0.30〜0.75%)
- 3〜5年先の教育費 → ネット銀行の定期預金(金利1.0〜1.3%)
- 5年以上先の教育費 → 新NISAのつみたて投資枠(月5,000円からでOK)
迷ったら、まずはネット銀行の普通預金に自動振替するだけで十分です。大切なのは「生活費の口座と分ける」こと。教育資金と生活費が同じ口座にあると、残高の錯覚が起きて積立が後回しになります。
ステップ3:半年に1回、「浮いた額」と「積立額」を突き合わせる
仕組みを作ったら、あとは半年に1回のチェックだけ。確認するのは2点です。
- 自動振替は止まっていないか(残高不足で失敗していないか)
- 制度変更で浮く金額に変化はないか(2027年度はこどもNISA開始で新たな選択肢も増えます)
わが家では毎年4月の第1土曜日を「教育資金棚卸しデー」にしていますが、給食費無償化を機に10月にもミニ棚卸しを追加しました。4月は制度変更の反映確認、10月はボーナス後の中間チェックという位置づけです。夫婦で10分、口座残高をスマホで見せ合うだけで「ちゃんと積めている」安心感が生まれます。
子ども2人・公立小の場合のシミュレーション
具体的な数字で見てみましょう。公立小学校に通う子ども2人(小5・小2)の家庭で、給食費が月4,500円だった場合:
- 浮く給食費:月4,500円×2人=月9,000円 → 年99,000円
- このうち月9,000円を自動振替で教育資金口座へ
- 6年間継続した場合(金利0.5%で試算):約55万円
55万円あれば、公立中学の入学準備費(制服代・部活費・塾代の初期費用)の大部分をまかなえます。「小中の崖」と呼ばれる中学入学時の教育費急増(年間約19万円増)への備えとしても、給食費で浮いた分の自動積立は効果的です。
「月5,200円」は小さな金額に見えますが、仕組みにすれば確実に積み上がる。FP相談の現場で実感するのは、教育資金を貯められる家庭と貯められない家庭の差は収入の多寡ではなく、仕組みがあるかないかだということです。
よくある質問(FAQ)
Q1. すでに自治体独自の給食費無償化を受けている場合、新たにできることはありますか?
A. 給食費では新たに浮く金額はありませんが、2024年10月の児童手当拡充(所得制限撤廃・高校生拡大)や2026年4月の子ども・子育て支援金の影響を確認してください。支援金は医療保険料に上乗せされる新たな負担(年収600万円で月約575円)なので、浮いた分と新たな負担の差額を把握することが大切です。
Q2. 給食費支援の月5,200円は現金でもらえるのですか?
A. 保護者に直接振り込まれるわけではありません。国から自治体を通じて学校設置者に支援される仕組みで、保護者の口座からの給食費引き落としが「減る」または「なくなる」形で反映されます。口座残高が少し多くなるだけなので、意識しないと気づかないことがあります。
Q3. 中学校の給食費は対象になりますか?
A. 2026年度の国の支援対象は公立小学校のみです。ただし、都道府県が1/2を負担する枠組みにより、自治体によっては中学校まで独自に無償化を拡大しているケースもあります。お住まいの自治体の最新情報を確認してください。
Q4. 浮いたお金は新NISAに回すべきですか?
A. 5年以上先に使う教育資金であれば新NISAのつみたて投資枠も選択肢になりますが、3年以内に使う教育費は元本保証型(普通預金・定期預金)で管理するのが鉄則です。まず使う時期を確認し、それに合った預け先を選びましょう。
Q5. 私立小学校に通わせている場合はどうなりますか?
A. 2026年度の国の給食費支援は公立小学校が対象で、私立小学校・国立小学校は対象外です。私立に通わせている家庭は、児童手当の拡充分や物価高手当を教育資金に回す仕組みを検討してください。
参考文献
- 文部科学省「学校給食費の抜本的な負担軽減」(2026年4月施行)
- ソニー生命保険「子どもの教育資金に関する調査2026」(2026年3月公開)
- 第一生命経済研究所「2026年の物価と家計負担」(4人家族で約8.9万円増加の試算)
- こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」(2026年4月施行)





