FP相談でよく聞かれるのが、「保険って何に入ってるか正直覚えてない」という声です。特に多いのが、独身時代に親や職場の勧めで加入した保険をそのまま払い続けているパターン。結論から言うと家計の見直しが先──そしてその中でも保険の見直しは、食費の節約より効果が大きく、しかも一度やれば毎月自動で浮き続ける「仕組みの節約」です。

うちの長女のとき実際に、夫婦で保険証券を全部テーブルに並べてみたんです。そしたら、独身時代に入った保険と住宅ローンの団信、さらに会社のグループ保険で死亡保障が三重になっていました。月にして約1万円、年間約12万円のムダ。これを教育資金の積立に回せたときは、「もっと早くやればよかった」と本気で思いました。

なぜ独身時代の保険は子育て世帯に合わなくなるのか

独身のときに保険に入る動機は、多くの場合「親に勧められた」「職場で団体保険の案内が来た」「なんとなく社会人だから」の3つです。このとき設定される保障内容は、独身者の生活を前提にしています。

ところが、子どもが生まれると保障ニーズが根本的に変わります。

  • 死亡保障:独身なら葬儀費用程度(200〜300万円)で十分だったのが、子育て世帯では遺された家族の生活費・教育費をカバーする必要がある
  • 医療保障:高額療養費制度や会社の傷病手当金の存在を知らずに、過剰な医療保険に入っているケースが多い
  • 貯蓄型保険:低金利時代に契約した貯蓄型は、予定利率0.25%程度。教育資金の「増やす」手段としては非効率

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2024年度)によると、世帯の年間払込保険料の平均は約35.3万円(月約2.9万円)。このうち、公的保障と重複している部分を整理するだけで、月1万円前後が浮くケースは珍しくありません。

公的保障を知れば「本当に必要な保障額」は想像より小さい

保険を見直す前に、まず公的保障でどこまでカバーされるかを押さえましょう。

遺族年金(2026年度)

会社員の配偶者が亡くなった場合、子のある配偶者には以下が支給されます。

  • 遺族基礎年金:年84万7,300円+子の加算(第1子・第2子 各24万3,800円、第3子以降 各8万1,300円)
  • 遺族厚生年金:亡くなった方の報酬比例部分の3/4(年収500万円の場合、年約40〜50万円)

たとえば子ども2人の世帯なら、遺族基礎年金だけで年約133万円。遺族厚生年金と合わせると年約180万円前後が、18歳年度末まで支給されます。

高額療養費制度

年収約370〜770万円の一般的な子育て世帯の場合、医療費の自己負担上限は月約8万円程度。2026年8月の改正で上限額の見直しがありますが、入院しても青天井に費用がかかるわけではありません。会社員なら傷病手当金(給与の2/3、最大1年6カ月)も受けられます。

団体信用生命保険(団信)

住宅ローンを組んでいる場合、ほぼ全員が団信に加入しています。万が一の際にローン残高がゼロになるため、住居費の心配は不要。つまり、民間の死亡保険で住居費分まで上乗せする必要はないのです。

子育て世帯が見直すべき保険の重複5パターン

FP相談1,500件の実績から、独身時代の保険で特に多い重複パターンを5つに整理しました。2〜3パターン該当すれば、年間10〜12万円の節約が見込めます。

パターン1:独身時代の高額死亡保障が残っている

独身のときに「なんとなく3,000万円」の死亡保障に入ったまま、結婚・出産後も見直していないケース。遺族年金+団信を差し引くと、民間保険で必要な上乗せ額は想像より小さくなります。逆に、子どもが生まれたのに独身時代の200万円のままという過少保障も危険です。

チェック方法:保険証券の「死亡保険金額」を確認し、遺族年金の年額×子が18歳までの年数+団信のローン残高を差し引いた「本当に足りない額」を計算する。

パターン2:医療保険の二重加入

独身時代に入った医療保険と、結婚後に追加した医療保険で入院日額が合計2万円以上になっているケース。高額療養費制度があるため、入院日額5,000円の掛け捨て1本で十分なことが多いです。

チェック方法:加入中の医療保険すべての入院日額を合計する。1万円を超えていたら重複の可能性大。

パターン3:低利回り貯蓄型保険の放置

予定利率0.25%前後の貯蓄型保険(終身保険・養老保険)を「貯金代わり」に続けているケース。2026年6月現在、個人向け国債変動10年の利率は約1.7%、ネット銀行の定期預金でも1%超の商品があります。保障と貯蓄を分離したほうが効率的です。

チェック方法:保険証券の「予定利率」を確認。1%未満なら、払済保険への変更+差額を別の運用先に回すことを検討。

パターン4:会社のグループ保険との重複

職場の福利厚生で団体生命保険に加入しているのに、同じ保障を個人で別途契約しているケース。グループ保険は保険料が割安なことが多いため、個人契約を縮小してグループ保険に寄せるだけで保険料が下がります。

チェック方法:会社の福利厚生ガイドで団体保険の保障内容を確認。個人契約と保障が重なっていないか突き合わせる。

パターン5:学資保険の複数社加入

「1社だけだと不安」と複数の学資保険に加入しているケース。FP相談でも時々見かけますが、同じ目的の保険を分散させると管理コストが増え、返戻率も把握しにくくなります。

チェック方法:子ども1人に対して学資保険が2契約以上ないか確認。ある場合は返戻率の高いほうに一本化を検討。

見直しで浮いた保険料を教育資金に回す3ステップ

保険を見直して月1万円が浮いても、そのまま生活費口座に入れておくと確実に溶けます。わが家で実践している方法を紹介します。

ステップ1:保険証券を全部集めて一覧表を作る(所要時間30分)

夫婦それぞれの保険証券を集め、以下の項目を1枚の表に書き出します。

  • 保険の種類(死亡・医療・がん・貯蓄型・学資)
  • 月額保険料
  • 保障内容と金額
  • 契約時期(何歳のときに入ったか)
  • 公的保障・団信と重複していないか

ステップ2:5つのパターンに照らして「やめる・残す・変える」を判断

上記5パターンのどれに該当するかを確認し、「やめる(解約)」「残す(継続)」「変える(減額・払済)」の3択で仕分けます。迷ったら「公的保障でカバーされる部分は民間保険から外す」が基本原則です。

ステップ3:浮いた保険料と同額を教育資金口座に自動振替

見直しで浮いた金額を、給与日翌日に教育資金専用口座へ自動振替する設定をします。月1万円でも18年間続ければ216万円。年利3%で運用すれば約286万円になり、私立文系の4年間の授業料の大半をカバーできる計算です。

わが家では、保険の見直しで浮いた月約1万円を教育資金口座に自動振替しています。年間約12万円。これは格安SIMへの乗り換え(年間約14万円の削減)に次ぐ、固定費見直しの効果でした。

見直しで「やってはいけない」3つの注意点

  1. 解約してから新しい保険に入る順番にしない:新しい保険の加入手続きが完了してから旧契約を解約すること。健康状態の変化で新規加入できないリスクがあります
  2. 貯蓄型保険の解約は損益分岐点を確認してから:解約返戻金が払込保険料を下回る「元本割れ期間」の途中で解約すると損をします。あと数年で損益分岐点を超えるなら「払済保険」への変更が有利な場合もあります
  3. 片働き世帯は死亡保障の減額に慎重に:共働きなら収入源が2つありますが、片働き世帯で稼ぎ手の死亡保障を過度に削ると、万が一のとき遺族年金だけでは生活費が不足する可能性があります

よくある質問(FAQ)

Q1. 保険の見直しは自分でできますか?それともFPに相談すべきですか?

保険証券の一覧表を作り、5つの重複パターンに照らすところまでは自分でできます。ただし、必要保障額の計算(遺族年金の試算や教育費の見積もり)は家庭ごとに条件が異なるため、一度はFPに相談することをおすすめします。無料相談も多くありますが、特定の保険商品を勧められない「独立系FP」を選ぶのがポイントです。

Q2. 保険を見直すベストなタイミングはいつですか?

ライフイベントの直後(結婚・出産・住宅購入・転職)がベストです。特に第一子の出産後は保障ニーズが大きく変わるため、産後半年以内に一度は保険証券を並べて確認しましょう。すでに子どもがいて見直していない方は、今すぐ始めて問題ありません。

Q3. 学資保険は解約して新NISAに乗り換えるべきですか?

一概には言えません。学資保険には「払込免除特約」という、契約者が万が一のとき以降の保険料が免除される保障機能があります。死亡保障が手薄な家庭では、この機能は新NISAにはない強みです。すでに払い込んだ部分は継続し、増額分を新NISAへ振り分ける「ハイブリッド方式」が多くの家庭に適しています。

Q4. 遺族年金はいくらもらえるか簡単に計算する方法はありますか?

日本年金機構の「ねんきんネット」で試算できます。ログインして「年金見込額試算」から条件を入力すると、遺族年金の概算が確認できます。2026年度の遺族基礎年金は年84万7,300円+子の加算で、子ども2人なら年約133万円です。

Q5. 見直しで浮いた保険料は毎月いくらくらいが目安ですか?

FP相談の実感として、独身時代の保険を一度も見直していない子育て世帯であれば、月5,000円〜1万5,000円が浮くケースが多いです。2〜3パターンの重複があれば年間10〜12万円の節約が見込めます。

参考文献