保護者面談で毎年、繰り返しいただく相談があります。
「うちの子、保育園でお友達と遊べていますか?」
お迎えのとき、わが子が一人でブロックを触っている姿を見て不安になる。連絡帳に「お友達と一緒にままごとをしました」と書かれている日は安心するけれど、「一人で絵本を見ていました」と書かれると胸がざわつく──園で見ている限り、こうした気持ちを抱えている保護者はとても多いです。
でも、ここで一つ知っておいていただきたいことがあります。1〜3歳の子どもにとって「一人で遊んでいる」ことは、友達関係の発達において自然で必要なプロセスです。この記事では、保育現場で15年間観察してきた子どもの遊びの発達段階と、家庭で無理なくできるサポートについてお伝えします。
1〜3歳の遊びには「4つの発達段階」がある
子どもの遊びの発達を研究したパーテン(Parten, 1932)の分類は、保育の現場でも広く参考にされています。私が担当してきたクラスでも、この段階は驚くほど当てはまります。
段階1:一人遊び(0〜2歳ごろ)
周囲に他の子がいても、自分の世界に没頭して遊ぶ段階です。1歳児クラスではほぼ全員がここにいます。ブロックを積む、絵本をめくる、砂を触る──こうした一人遊びこそが、集中力や探究心の土台を育てています。
段階2:傍観遊び(1歳半〜2歳半ごろ)
他の子が遊んでいるのをじっと見ている段階です。「見ているだけで参加しない」と心配される保護者がいますが、実はこれは大きな成長のサインです。他の子への興味が芽生えているということだからです。
段階3:並行遊び(2〜3歳ごろ)
隣に座って同じおもちゃで遊ぶけれど、会話やおもちゃの貸し借りはほとんどない段階です。保護者面談でよく出るのが「隣にいるのに一緒に遊んでいない、大丈夫ですか?」という質問です。並行遊びは「一緒にいたい」という気持ちの表れであり、協同遊びへの重要なステップです。
段階4:協同遊び(3歳後半〜)
役割分担をしたり、ルールを共有したりしながら一緒に遊ぶ段階です。ままごとで「お母さん役」「赤ちゃん役」を決めたり、砂場で一緒にお城を作ったりする遊びがこれにあたります。
ここで強調したいのは、これらの段階は一方向に進むわけではないということです。協同遊びができる3歳の子でも、疲れているときや新しい環境では一人遊びに戻ります。それは「後退」ではなく、安心できる遊びに自分で切り替えているだけです。
2歳児クラス20人の「遊びの段階」分散データ
私が担当した2歳児クラス20人の6月時点での遊びの様子を、ざっくり4段階に分類した記録があります。
- 一人遊びが中心:4人──自分の好きなおもちゃに集中。他の子が近づくと場所を移動することも。
- 傍観+並行遊びが中心:8人──他の子のそばに行くが、言葉でのやりとりは少ない。同じ遊びを隣でやっている状態。
- 並行遊び+ときどき関わり:6人──おもちゃの受け渡しや「見て!」という呼びかけが出始めている。
- 簡単なやりとり遊びができる:2人──「いっしょにやろう」と声をかけたり、短時間のごっこ遊びができたりする。
つまり、2歳児クラスの6割以上が「一人遊び」または「隣にいるけど一緒には遊んでいない」状態です。「うちの子だけお友達と遊べていない」と感じるのは自然ですが、他の子と比べると見落としますが、クラス全体を見れば多くの子がまだその段階にいるのです。
「一人で遊ぶ力」が友達関係の土台になる理由
保育の現場で15年間子どもたちを見てきて、一つ確信していることがあります。一人遊びが豊かな子ほど、後から友達関係も豊かになるということです。
なぜなら、一人遊びの中で子どもは「自分はこれが好き」「これがおもしろい」という感覚を育てています。その「自分の世界」を持っている子は、他の子の遊びにも興味を持てるし、「いっしょにやろう」と言われたときに自分のアイデアを持ち込めます。
逆に、一人遊びの時間が十分にないまま「お友達と遊びなさい」と急かされた子は、友達の輪には入れても何をしていいかわからず、結果的にトラブルが増えることがあります。
以前、1歳児クラスで一人の子がバイバイを覚えたとき、数日のうちにクラスの半数以上がバイバイをするようになったことがありました。誰かに教えられたのではなく、隣で見ていた子が真似をして、それがさらに広がっていった。一人遊びの中で「見る力」を育てていた子が、模倣という形で最初に友達とつながった瞬間でした。
家庭でできる3つのサポート
「友達と遊べるようになるために特別な訓練が必要」ということはありません。家庭の日常の中にある関わりが、社会性の土台を育てています。
サポート1:親子の1対1のやりとり遊びを大切にする
「ちょうだい」「どうぞ」「ありがとう」──この3つのやりとりができれば、友達との関わりの基本はすでに身についています。おままごとでお皿を渡す、ボールを転がし合う、絵本を「これ読んで」と持ってくる。こうした親子間の「やりとりの往復」が、将来の友達関係のリハーサルになっています。
特別な教材は必要ありません。私自身、息子が小さかった頃は、朝7時に出勤する生活の中で、毎朝玄関で5秒間のハグ──「行ってきますのぎゅー」をルーティンにしていました。たった5秒でも、安心感という土台が子どもの外の世界への探索意欲を支えてくれます。
サポート2:「お友達と遊びなさい」と言わない
公園で他の子がいるのにわが子だけ砂場で一人で遊んでいると、つい「あの子と一緒に遊んでおいで」と言いたくなります。でも、この声かけは逆効果になることが多いです。
子どもは「遊びたい」と思ったときに自分から近づきます。親にできるのは、安全基地としてそこにいることです。「ここにいるよ」「楽しそうだね」と見守る姿勢が、子どもの「ちょっと近づいてみようかな」という勇気を育てます。
サポート3:家庭で「気持ちの言語化」を少しずつ練習する
友達関係のトラブルの多くは「気持ちをうまく伝えられない」ことから生まれます。噛みつきも、おもちゃの取り合いも、根っこは同じです。
家庭でできるのは、子どもの気持ちを親が代わりに言葉にしてあげること。「おもちゃ取られて悲しかったね」「一緒に遊びたかったんだね」「まだ使いたかったんだね」──こうした感情の翻訳を日常的にしてもらえると、子どもは少しずつ自分の言葉で気持ちを表現できるようになります。
園でも「かして」「いやだ」「まって」の3語を繰り返し練習していますが、家庭でも同じ言葉を使っていただけると、子どもの定着がぐっと早くなります。
「心配すべきサイン」と「見守っていいサイン」の見分け方
とはいえ、すべてのケースで「見守りましょう」とは言えません。以下のポイントを参考にしてください。
見守っていいサイン
- 一人遊びに集中して楽しそうに過ごしている
- 他の子の遊びをチラチラ見ている(傍観遊びの段階)
- 家では親との「やりとり遊び」ができている
- 園では機嫌よく過ごし、日中の活動に参加できている
担任に相談してほしいサイン
- 他の子が近づくと毎回パニック的に泣く・逃げる(一時的なものではなく、数ヶ月続く場合)
- 大人とのやりとり(目を合わせる、指差し、呼びかけへの反応)も極端に少ない
- 特定の感覚刺激(音、光、触感)に強い拒否反応がある
- 2歳を過ぎても「ちょうだい」「どうぞ」のやりとりがまったく成立しない
気になるサインがある場合は、まず担任の保育士に園での様子を聞いてみてください。お迎え時の短い会話でも構いません。保育士は日中の子どもの姿を細かく観察していますので、家庭での様子と照らし合わせることで、より正確な状況把握ができます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2歳になっても友達に興味を示しません。発達に問題がありますか?
2歳で友達への興味が薄いこと自体は、発達上の問題とは限りません。私が見てきた2歳児クラス20人のうち、積極的に他の子に関わろうとする子は1〜2割程度です。ただし、大人との関わり(目を合わせる、呼びかけに反応する、指差しをする)も乏しい場合は、かかりつけの小児科や地域の子育て支援センターに相談することをお勧めします。
Q2. 保育園で「一人で遊んでいます」と毎日言われます。転園したほうがいいですか?
一人遊びが中心であること自体は転園の理由にはなりません。大切なのは、お子さんが園で安心して過ごせているかどうかです。担任に「日中の表情はどうですか?」「活動には参加できていますか?」と聞いてみてください。安心して一人遊びができている環境は、むしろ良い園の証拠です。
Q3. 一人っ子は友達づくりが苦手になりますか?
きょうだいの有無と友達関係の発達に、決定的な因果関係はありません。きょうだいがいる子は「やりとりの練習」が多い分、トラブル対処が早い傾向はありますが、一人っ子は親との1対1の関わりが濃密な分、大人との信頼関係を土台にして友達関係を築いていきます。
Q4. 家で「お友達と遊んだ?」と聞いても「わからない」と言います。何を聞けばいいですか?
2〜3歳児に「今日何したの?」は難易度が高い質問です。代わりに「今日、積み木した?」「お砂場行った?」など具体的な場面を挙げて聞いてみてください。「○○ちゃんと遊んだ?」と特定の名前を出すのも有効です。連絡帳に書かれている内容をもとに「今日、お庭で遊んだんだって?」と声をかけると、子どもも思い出しやすくなります。
Q5. 友達に興味を持ち始めたら、おもちゃの取り合いが増えました。どう対応すべきですか?
おもちゃの取り合いは、友達への興味が芽生えた証拠であり、社会性の発達の正常な過程です。「貸して」「まだ使ってるよ」「次に貸すね」という言葉を、その場で親が代わりに言ってあげてください。何度も繰り返すうちに、子ども自身が使えるようになっていきます。
参考文献
- Parten, M. B. (1932). Social participation among pre-school children. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 27(3), 243–269.
- 厚生労働省「保育所保育指針」(平成29年告示)── 第2章「保育の内容」における人間関係の領域
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0 - 厚生労働省「未就学児の睡眠指針」(厚生労働科学研究費補助金)── 子どもの発達と生活リズムに関する知見
https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s04_nyu_pan004.pdf - ベネッセ教育総合研究所「幼児期の遊びの発達と社会性」── 並行遊びから協同遊びへの移行に関する解説
https://benesse.jp/kosodate/202011/20201103-5.html





