FP相談でよく聞かれるのが「教育費って結局、毎月いくら貯めればいいんですか?」という質問です。SNSでは大きな数字が飛び交っていますが、正解はひとつではありません。進路パターンと世帯年収を掛け合わせれば、わが家にちょうどいい金額が見えてきます。

筆者自身、3人の子ども(長男・小5、長女・小2、次女・年中)を育てながらこの問題と向き合ってきました。この記事では2023年度の文部科学省データをもとに進路別の必要総額を整理し、年収帯ごとに「無理なく続く月額」を試算します。2027年に始まるこどもNISAを含めた教育資金の配分方法もあわせて紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

教育費の総額──「わが家のケース」で目標を置く

結論から言うと家計の見直しが先、ではあるのですが、見直す前に「いくら必要なのか」を把握しないと手の打ちようがありません。

文部科学省が2024年12月に公表した「令和5年度子供の学習費調査」のデータを整理します。幼稚園から高校までの15年間にかかる学習費総額は、すべて公立で約596万円、すべて私立で約1,976万円でした(2026年5月時点の最新データ)。

各学校段階の年間学習費も確認しておきましょう。

  • 公立小学校:約33.6万円/年
  • 公立中学校:約54.2万円/年
  • 公立高校:約59.8万円/年
  • 私立中学校:約156.0万円/年
  • 私立高校:約103.0万円/年

ここに大学4年間を加えます。

  • 国公立大学:約243万円(入学金28.2万円+授業料53.6万円×4年。ただし東大など一部は上限の年64.3万円に値上げ済み)
  • 私立大学・文系:約400万円
  • 私立大学・理系:約540万円

「すべて公立+国立大学」コースなら約840万円。「中学から私立+私立大学理系」なら約1,500万円超。同じ「教育費」でも、進路の組み合わせ次第で倍近い差が出ます。FP相談で1,500件以上の家庭を見てきましたが、多くの方が「なんとなく不安」なまま貯めていました。進路想定を1パターンでも置いてみるだけで、毎月の積立額がぐっと明確になります。

「月いくら」を逆算する──0歳・6歳・10歳スタートの比較

幼稚園〜高校の費用は毎年の家計から払うのが基本です。家計を大きく揺さぶるのは、大学4年間の費用をまとめて用意する部分。だから積立の目標額は「大学費用」に絞るのが現実的です。

0歳から18年間で貯める場合(月額目安)

  • 国公立大学(約243万円)→ 月約1.1万円
  • 私立大学・文系(約400万円)→ 月約1.9万円
  • 私立大学・理系(約540万円)→ 月約2.5万円

月1〜2.5万円。意外となんとかなりそうな数字です。

ただし、これは生まれた直後に積立を始めた場合の話。スタートが遅れるほど、月額は確実に膨らみます。

6歳(小学校入学)から12年間で貯める場合

  • 国公立大学 → 月約1.7万円
  • 私立文系 → 月約2.8万円
  • 私立理系 → 月約3.8万円

10歳から8年間で貯める場合

  • 国公立大学 → 月約2.5万円
  • 私立文系 → 月約4.2万円
  • 私立理系 → 月約5.6万円

うちの長女のとき実際に、入学前後で制服代・ランドセル・学用品費が同じ月に集中し、家計がいきなり赤字になりました。こういう不定期の出費に押されて積立が後回しになると、気づいたら中学生なのに大学資金が100万円しかない──という事態が起きます。始めるなら今月。自動引き落としを設定してしまうのが、いちばん確実です。

年収帯別──「無理なく続く」積立額の目安

「月2万円」と言われても、年収400万円の家庭と年収800万円の家庭では意味合いがまるで違います。FP相談の現場で「3年以上続いている」家庭の傾向を、ざっくり年収帯ごとに整理してみました。

子ども1人あたりの教育費積立目安

  • 世帯年収400万円台(手取り月約26万円)→ 月1.0〜1.5万円(手取りの約4〜6%)
  • 世帯年収500〜600万円台(手取り月約30〜36万円)→ 月1.5〜2.5万円(手取りの約5〜7%)
  • 世帯年収700〜800万円台(手取り月約38〜45万円)→ 月2.0〜3.0万円(手取りの約5〜7%)

手取りの5〜7%。家賃や食費と比べると小さく聞こえるかもしれませんが、これを10年以上続けるのは簡単ではありません。途中で挫折しないためのポイントは「児童手当をそのまま教育費に充てる」ことです。

2024年10月の改正で、児童手当は所得制限なし・高校生まで延長・第3子は月3万円に拡充されました。第1子・第2子で18年間の受給総額は約234万円。これだけで国公立大学の学費(約243万円)をほぼカバーできる計算です。

つまり「児童手当を全額教育費として貯める+月1万円を上乗せ」すれば、私立文系にも届く。この組み合わせが、FP相談で最も再現性の高いパターンでした。子どもが2人・3人いる家庭では、まず児童手当を各子の教育費に充て、持ち出しは1人あたり月5,000〜1万円に抑えると家計が回りやすくなります。

教育資金の「3つの器」──預貯金・こどもNISA・親の新NISAの使い分け

月額が決まったら、次は「どこに入れるか」です。教育資金をひとつの口座にまとめるのではなく、使う時期に応じて3つの器に分けると管理がしやすくなります。

器①:預貯金(使う時期が5年以内の資金)

入学金・受験料など確実に必要な費用は、ネット銀行の普通預金(2026年5月時点で年0.30〜0.75%)か定期預金に置いておく。元本保証があるので、必要なタイミングで確実に引き出せます。個人向け国債変動10年(年1.67%前後)も5年以上先の資金には選択肢になります。

器②:こどもNISA(12歳以降〜大学の資金)

2027年1月に開始予定のこどもNISAは、年60万円・生涯上限600万円・非課税保有期間は無期限です。12歳以上であれば子の同意のもとで引き出しが可能になる設計で、中学〜大学の教育費に向いています。児童手当の月1〜1.5万円をそのままこどもNISAの積立に回すのが、最も手間の少ない運用でしょう。

器③:親の新NISA(引き出しの自由度が最も高い)

中学受験の塾代など12歳より前に大きな出費がある家庭や、引き出し制限を避けたい家庭は、親の新NISA枠を教育資金に充てるほうが柔軟です。売却・引き出しがいつでもでき、急な進路変更にも対応しやすい。

うちではExcel家計簿に「預け先シミュレーションシート」を追加して、3人の子ども別に教育費を使う時期で仕分けています。長男は大学まであと7年なので預貯金と親のNISAが中心。次女は13年先なのでこどもNISA中心、という形です。大事なのは「この器がベスト」と決めつけないこと。家庭の収入、子の年齢、進路の見通しで最適な配分は変わります。

「貯めどき」は小学校の6年間──支出カーブを味方につける

教育費の支出は一定ではありません。公立小学校の年間学習費は約33.6万円に対し、公立中学校は約54.2万円、公立高校は約59.8万円。学年が上がるにつれて支出が増え、積立に回せる余裕は減っていきます。

小学校の6年間は教育支出が相対的に軽い「貯めどき」です。この時期に月2〜3万円を積み立てれば、6年間で144〜216万円。大学費用の半分以上をここで確保できます。

中学以降は塾代・部活費・模試代が加わり、積立額を減らさざるを得ない家庭が多い。だからこそ「小学校のうちに貯める」を合言葉にして、この6年間を最大限に使ってほしいと思います。まだ小学生なら、間に合います。

FAQ

教育費の積立は子どもが何歳から始めるべきですか?

早いほど月額負担は軽くなります。0歳から始めれば国公立大学の場合で月約1.1万円。6歳からだと月約1.7万円、10歳からだと月約2.5万円に増えます。まだ始めていないなら、今月から始めても遅くはありません。

児童手当だけで大学費用は足りますか?

第1子・第2子の児童手当18年間の総額は約234万円で、国公立大学の学費(約243万円)にほぼ届きます。ただし私立大学や下宿費まで含めると不足するため、月1〜2万円の上乗せ積立を組み合わせるのが現実的です。

こどもNISAと学資保険、教育費にはどちらが向いていますか?

こどもNISAは運用益が非課税で増やせる反面、元本保証はありません。学資保険は契約者死亡時の払込免除特約がありますが利回りは限定的。貯蓄習慣に自信がある家庭はこどもNISA寄り、強制貯蓄のほうが続けやすい家庭は学資保険が合うケースもあります。家庭の状況で選ぶものであり、どちらかが絶対に優れているわけではありません。

子どもが2人・3人いる場合、積立額はどう配分すべきですか?

人数分を単純に掛けると家計が厳しくなります。まず児童手当を各子の教育資金に全額充て、追加の持ち出しは子の人数×月5,000〜1万円が目安です。第3子は児童手当が月3万円と手厚いため、手当だけで国公立大学の費用をほぼ賄える計算になります。

参考文献