2026年1月に実施された共通テスト「情報I」の平均点は56.59点。初年度(2025年度)の69.26点から12.67点の下落を記録しました。受験者数は30万5,104人、受験率は61.5%。「取りやすい科目」という初年度の印象は一変し、保護者からも「情報Iって何をどう対策すればいいの?」という声が急増しています。
文科省の発表を読み解くと、この平均点下落は「難化」というより、出題が学習指導要領の本来の趣旨に近づいた結果と見るべきです。今回は、学習指導要領の原典に立ち返りながら、「情報I」の出題構造と家庭でできる備えを整理します。
「情報I」は何を問う科目なのか──学習指導要領の本文にはこう書かれている
学習指導要領の本文には、「情報I」の目標として「問題の発見・解決に向けて、事象を情報とその結びつきの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を育む」と明記されています。つまり、プログラミング言語を書けることが目的ではなく、情報を構造的に読み解き、課題を論理的に整理する力が本丸です。
「情報I」は大きく4分野で構成されています。
- 情報社会と問題解決──情報モラル・知的財産権・個人情報保護
- コミュニケーションと情報デザイン──情報の可視化・ユーザビリティ
- コンピュータとプログラミング──アルゴリズム・論理的思考
- 情報通信ネットワークとデータの活用──統計的処理・データ分析
2025年度の初回出題では分野1・2の比重が高く、知識問題で得点しやすい構成でした。しかし2026年度は分野3・4、すなわちプログラミング的思考とデータの科学的解釈を本格的に問う出題へとシフト。これが平均点下落の主因です。
国公立大学における「情報I」の配点構造
国立大学ではほぼすべての大学が「情報」を共通テストの必須科目としています。東京大学の場合、共通テスト全体1,000点のうち情報Iの配点は100点(配点比10%)。一方で、6割以上の国公立大学が情報Iの配点比率を他教科より低めに設定しており、「この1教科で大きく差がつくわけではないが、取りこぼすと痛い」という位置づけです。
大学側の意図はこういう構造です──「専門的な情報技術を問いたいのではなく、どの学部に進んでも必要になるデータリテラシーの基盤を確認したい」。配点が低めでも必須にしている理由はここにあります。
教員の16.3%が情報免許を持たない──学校間格差の構造
出版社時代に教育白書を10年読み続けてきた経験から言えば、新教科が導入されるたびに繰り返されるのが「指導体制の格差」問題です。文科省の2022年調査では、情報科担当教員4,756人のうち16.3%にあたる796人が情報免許を持たないまま授業を担当していました。
さらに、教員・学校関係者の86.7%が「情報I」の指導に不安を感じていると回答し、35.2%が「自校の学習環境が十分に整っていない」としています。かつて小学校プログラミング教育の学校間格差を取材した際にも同じ構造を見ましたが、情報Iでは共通テストという「出口」が明確にある分、格差の影響がより直接的に成績に表れます。
高校生の親が今からできる4つの備え
備え1:「情報I=プログラミング」という誤解を手放す
共通テストの出題を分析すると、純粋なコード記述問題は全体の2割程度。残りの8割は情報社会のルール、データの読み取り、アルゴリズムの考え方を問う問題です。プログラミングスクールに通わせる前に、まず4分野の全体像を親子で確認してください。
備え2:教科書と文科省の「情報I」手引を一読する
朝の情報収集で文科省のリリースを確認する習慣がある私の経験上、教科書こそ最も効率のよい教材です。情報Iの教科書は約200ページ。全分野を網羅しており、共通テストの出題範囲と完全に対応しています。文科省が公開している「情報I」導入に関する資料も保護者向けの理解に役立ちます。
備え3:数学I・Aの基礎固めを並行する
データ活用分野では統計の基礎知識が必須で、数学I・Aの「データの分析」と直結します。情報Iの得点が伸びない生徒の多くは、実は数学の統計分野に穴がある──これは教科横断的な弱点です。高1の段階で数学I・Aの統計単元を確実に押さえることが、情報Iの得点力にも直結します。
備え4:学校の授業進度と質を早めに確認する
教員の指導体制に格差がある以上、「学校任せ」はリスクです。お子さんに「情報の授業で何をやっているか」を定期的に聞いてみてください。4分野のうち特に分野3(プログラミング)と分野4(データ活用)の授業が薄い場合は、市販の参考書や無料のオンライン教材で補完する判断が必要です。大学入試センターが公開している試作問題・過去問も、出題レベルの確認に有効です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 情報Iは文系でも受験が必要ですか?
はい。国立大学ではほぼ全大学で共通テスト「情報」が必須です。文系・理系を問わず受験する必要があります。公立大学では必須としない大学もありますが、志望校が変わる可能性を考えると対策しておくのが安全です。
Q2. 情報Iの勉強はいつから始めればいいですか?
高校1年の授業が始まった段階から、授業内容の復習を定期的に行うのが理想です。共通テストの出題範囲は高1の授業内容がベースのため、高3から慌てて対策するより、高1・2で授業を着実に理解する方が効率的です。
Q3. プログラミング経験がない子でも大丈夫ですか?
共通テストの「情報I」は特定のプログラミング言語の知識を前提としていません。出題に使われるのは「共通テスト用の疑似コード」であり、アルゴリズムの考え方(順次・分岐・反復)を理解していれば対応できます。
Q4. 情報Iで差がつくのはどの分野ですか?
2026年度の結果を見ると、分野3「プログラミング」と分野4「データ活用」で得点差が大きく開いています。この2分野は暗記では対応できず、論理的に考える練習が必要です。
Q5. 配点が低いなら対策しなくてもいいのでは?
配点比率が低い大学が多いのは事実ですが、「0点に近い」と他教科でカバーしきれません。国公立大学の合否は1〜2点差で決まることも多く、情報Iで30点落とすのは致命的です。「高得点を狙う」より「取りこぼさない」戦略が合理的です。
まとめ
共通テスト「情報I」は2年目で出題の本質が明確になりました。学習指導要領が求めているのはプログラミング技術ではなく、情報を構造的に捉え、データから意味を読み取る力です。教員の指導体制に格差がある現状では、保護者が「学校の授業で何をやっているか」を把握し、必要に応じて家庭で補完する姿勢が重要です。
原典を読んだかどうかで、対策の方向性は大きく変わります。まずは学習指導要領と教科書に立ち返ることから始めてみてください。






