うちの長女のとき実際に悩んだことがあります。小4の春に大手集団塾への入塾が決まった週末、夫とこんな話をしました。

「塾の月謝だけで4〜5万円になるんだから、子どもへのお小遣いはとりあえず止めてもいいかな」

FP歴12年の私でさえ、そう考えかけた。教育資金の計算ばかりしていると、子ども本人のお小遣い管理という視点が飛んでしまうのです。でも少し立ち止まって考えると、受験期こそ子どもが「お金を計画的に使う力」を実体験できる貴重な3年間なんですよね。

FP相談でよく聞かれるのが、「うちの子が来月から塾に通うんですが、お小遣いってどうすればいいですか?」という質問です。今回は、受験期のお小遣い設計でよくある失敗パターンと、塾代がかさんでも金銭教育を止めないための3ステップを整理します。

受験期に子どものお小遣いの「使い道」はどう変わるか

入塾前と入塾後で、子どもの生活動線は大きく変わります。週3〜4日の通塾が始まると、放課後のコンビニ立ち寄りや友達との外出が自然に減ります。お小遣いの「使い道」そのものが変化するのです。

一方で、新たな費目が生まれます。

  • 塾帰りの軽食代(塾弁を作れない夜のコンビニおにぎりなど)
  • 塾で使う文房具の消耗品(シャーペンの芯、ノート、蛍光ペン)
  • 模試会場までの電車代(学校以外の会場への遠征)
  • 息抜きのランチや映画(月1〜2回程度に減るが、ゼロにはならない)

問題が起きるのは、「使い道が変わったのにお小遣い制度がそのまま」の家庭です。入塾前は月1,500円で問題なかった子が、塾生活に合わせて費目を更新しないまま使うと、毎月「足りない」「追加で出して」が続きます。

逆に、塾代が高額になったことで「もう全部親が出す」方向に振れすぎても困る。子どもが「お金を考えなくていい環境」になってしまうからです。

受験期にやりがちな3つのミス

ミス① 「全部親が出すから気にしないで」方式

塾代が高額になるため、「その分は子どもへの出費を全額親が負担する」と決める家庭があります。短期的には子どもへの罪悪感を和らげる効果がありますが、合格後に「自分でお金を管理する」習慣を再起動するのに時間がかかります。受験という非常事態で金銭管理をリセットすると、中学入学後のスタートが遅れがちです。

ミス② 「勉強に集中させたいからお小遣いを止める」方式

「お金のことは考えさせない」という考えも耳にします。でも、月途中でお小遣いがなくなって「次の渡し日まで我慢しよう」と決める体験も、塾の帰りに「今日はコンビニに寄るのをやめよう」と判断する体験も、立派な金銭教育です。3年間のブランクは、中学進学後の「自分でやりくりする力」に影響が出ます。

ミス③ 「受験期だから特例ルールでいい」方式

「今は特別だから足りない分はその都度出す」「頑張っているから少し多めに」と、例外対応が続くパターン。本人のモチベーションには一時的になりますが、「頑張れば追加してもらえる」という感覚が定着しやすく、合格後にルールを戻すのに苦労します。

FP流3ステップ:受験期でも続くお小遣い設計

Step1 費目仕分け表を「受験版」に更新する

まず、お小遣い契約書の費目仕分け表を受験期仕様に更新します。塾関連費用は「親が出す費目」に移し、子どもが自己管理する範囲を明確にします。

費目 入塾前 受験期(更新後)
コンビニ・おやつ 子が管理 子が管理(量は自然に減る)
塾帰りの軽食 (なし) 親負担に移行
文房具(消耗品) 子が管理 親負担に移行
模試の交通費 (なし) 親負担に移行
友達とのランチ・映画 子が管理 子が管理(頻度は減る)
趣味(本・グッズなど) 子が管理 子が管理のまま維持

この線引きをしないまま「全部自分で管理して」にすると、塾関連費用が想定外に膨らんで「毎月足りない」が常態化します。逆に全部親負担にすると、子どもが費目を把握しなくなります。

費目を更新するときは、必ず子どもと一緒に確認すること。「塾関連の費用はお母さん・お父さんが出すから、自分で管理するのはこの範囲になるね」と見せながら話す。これをやるだけで、子どもの納得度が大きく変わります。

Step2 最小設計のお小遣い額を決める

受験期のお小遣いは、「子どもが自己管理する費目」だけを賄える最小額に設定します。塾が週3〜4日になると外出機会が減るため、金額も自然に絞れます。

FP相談で受験期を経験した家庭のデータから見えてきた参考額:

  • 小4:月500〜800円(外出機会がまだ多い時期)
  • 小5:月400〜700円(通塾が週4〜5日になり外出が減る)
  • 小6直前期:月300〜500円(土日も模試・講習で埋まる)

ここで大切なのは、結論から言うと家計の見直しが先ではなく、「金額を変えるときは費目の変更とセットで説明すること」です。塾関連費を親負担に移したことで、子どもが管理する費目の総額が下がった分だけお小遣いを絞る——この論理立てが伝わると、子どもは「減らされた」ではなく「役割分担が変わった」と理解できます。

Step3 合否後の「再設計の約束」を今から決めておく

受験が終わったとき、お小遣い制度をどう変えるかを今のうちに「約束」しておくことが、意外と重要です。

「中学に入ったら、一緒にお小遣いの設計を作り直そう」と伝えておくだけで、子どもは「今は特別な期間」「終わったら新しいステージに進める」という見通しを持てます。逆に何も言わないと、合格後に「あれ、お小遣いはいくらになるの?」という混乱が起きます。

入学前の家族会議の「議題」として「お小遣いの再設計」を組み込んでおく。これが私がFP相談でも提案している方法で、中学進学後のお小遣いトラブルを事前に防ぐ最もシンプルな手段です。

受験期こそ育つ、お金の3つの力

受験勉強中は、子どもが「時間とお金のトレードオフ」を自然に体感できる環境です。制約があるからこそ、金銭感覚が育ちやすい。

①「待つ力」──衝動買いが自然に減る

塾のある日は買い物に行く時間がない。気になっていたゲームソフトも「土曜の模試が終わったら」と待てるようになります。この「今すぐ手に入れなくていい」という体験は、将来の衝動買いを防ぐ感覚の土台になります。

②「貯める力」──目標貯金が自然発生する

受験が終わったら「○○を買いたい」という目標を持っている子は多い。月500円でも、6ヶ月貯めれば3,000円。その達成感が自信になり、貯めることへの抵抗感がなくなります。

③「計画する力」──限られた予算でやりくりする

模試がない土曜に友達とランチに行くとき、「今月あといくら残ってる?」と自分で確認する習慣が育ちます。月の前半に使いすぎると後半が苦しくなる——これが家計管理の原型です。

長女の中学受験を経て感じたのは、3年間の受験期を通じて子どもが「先を考えてお金を使う」姿勢をごく自然に身につけていたことでした。親が意識的に「待つ・貯める・計画する」を教えなくても、受験生活という環境が自然にその訓練をしてくれたのです。

受験終了後のお小遣い再設計ポイント

合格・進学が決まったら、お小遣い制度を「中学生仕様」に全面更新します。受験期の縮小版を継続するのは避けてください。

私立中学に進学する場合、通学定期代・学校指定品・部活費などが新たに発生します。公立中学に進む場合も、行動範囲が広がり交通費・友達との外出費が増えます。

どちらのルートでも、中学進学前に費目仕分け表を作り直す「お小遣い家族会議」を開くことをおすすめします。「中学生になったから、管理する費目を増やして金額も上げる」——裁量と責任のセット方式が、制度を長続きさせる鍵です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 受験期は家計が大変です。子どものお小遣いを0円にしてもいいですか?

A. 金銭教育の観点からおすすめしません。月300円でも維持することで「自己管理する習慣」が続きます。塾関連費を親負担に移し、子どもが管理する費目だけ最小額に設定するのが現実的な方法です。費目の範囲を明確にすることが大切で、金額より「何を自分で管理するか」が重要です。

Q2. 塾の帰りの軽食代は毎回違う金額になります。どう管理すればいいですか?

A. 塾帰りの軽食代は「親負担費目」としてお小遣いとは分離するのがシンプルです。毎回変動する費用を子どものお小遣いに含めると管理が難しくなります。「上限500円の軽食代は親が出す」とルール化して、お小遣いは固定費目(趣味・友達付き合い)だけを賄う設計にしましょう。

Q3. 子どもが「受験が終わったら○○を買う」と言って毎月貯めています。応援していいですか?

A. ぜひ応援してください。目標貯金は金銭教育の最高の実践です。貯める封筒に目標と金額を書いておくと、子ども自身が進捗を把握できます。合格後に本人のお金で買った体験は、「自分で貯めれば手に入る」という自信になります。

Q4. 入塾前から3分割ルール(使う・貯める・あげる)を続けていました。受験期も継続できますか?

A. 継続することをおすすめします。「使う」の費目と金額を受験版に更新するだけで、ルール自体は変えなくて大丈夫です。「貯める」封筒は合格後のご褒美目標があると継続しやすく、「あげる」も少額でも維持することで社会とのつながりの意識が途切れません。

Q5. 第一志望に落ちて公立中学に進学した場合、受験期のお小遣いをどう「戻す」べきですか?

A. 公立中進学の場合も、「中学生仕様への再設計」の機会として捉えてください。受験期の縮小版お小遣いをそのまま継続せず、中1の行動範囲に合わせた費目仕分け表を一緒に作り直す家族会議を入学前に開くことが大切です。「受験がなかったとしても、中学生になったらお小遣いは変わっていたよ」と伝えると、子どもが前向きに受け取りやすくなります。

参考文献

  1. 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表)
  2. 博報堂教育財団こども研究所「小学生の日常生活・学習に関する調査2026」(2026年2月)
  3. 金融広報中央委員会「子供の金融リテラシーに関する実態調査」(2025年)