「うちは習い事を3つ掛け持ちしているけれど、周りと比べて多いのだろうか」「高学年になって月謝が膨らんできた」。秋は新年度を前に習い事を見直す家庭が増える時期です。この記事では、民間調査の数字を原典に当たって読み直し、数字の限界も含めて、家庭が判断に使える形に整理します。
まず結論:数字は「相場」ではなく「傾向」として使う
- ビデオリサーチ「Kids/ex」2025年調査では、小学校高学年の習い事・塾の費用は1人あたり月2万3,000円超(2021年は月2万円台)。
- 習い事をしている子の割合は、小学校低学年で8割台、高学年で9割前後。未就学児は64.2%で、2021年から9.7ポイント増。
- ただし調査対象は関東(東京50km圏)の584サンプル。全国平均として扱うのは危険です。
- 家庭の判断には、金額の比較より「目的・頻度・出口」の3軸での点検が有効です。
調査の中身を原典で確認する
私は出版社時代から「見出しの数字は、調査概要を読んでから使う」ことを徹底してきました。今回も、ビデオリサーチのリリースから調査設計を確認しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査名 | ビデオリサーチ「Kids/ex」子どもの習い事に関する調査 |
| 対象 | 満3〜12歳の男女個人(回答は父母または代行者) |
| エリア・時期 | 関東(東京50km圏)、10月(年1回) |
| サンプル数 | 2017年593/2021年626/2025年584(2025年は未就学児193、低学年175、高学年216) |
高学年の回答は216サンプルです。月2万3,000円超という平均は、中学受験対策の塾や複数の掛け持ちを含む家庭に引き上げられている可能性があります。調査側も、高学年の増加について中学受験対策や掛け持ちが背景にあると分析しています。「平均がこの額だから普通」と読むと、実際の中央的な家庭像を見誤ります。
人気の習い事に見える変化
同調査では、男子はスイミングが未就学児・低学年で1位、高学年で2位。2025年は通信教育が全学齢でトップ3に入りました。女子はスイミングとピアノが全学齢でトップ5に入り続け、ダンスは低学年で6.6%(2017年)から19.8%(2025年)へ約3倍、高学年でも11.1%から18.0%に増えています。
通信教育が全学齢で上位に入った点は、「通う時間をかけずに学習を足したい」という家庭の事情を反映しているとも読めますが、これは私の解釈であり、調査が理由を示しているわけではありません。
「子どもの意思」は多くの家庭の最優先事項
栄光が2025年1月に実施した調査(小1〜高3の保護者3,598人)では、小学生の保護者の99.2%が子どもに習い事の経験が「ある」と回答し、習い事の選び方では子ども本人の意思が最も重視されていました。つまり、始める入口は「本人がやりたい」で決まっている家庭が多い。一方で、続けるか減らすかの判断基準は、家庭に明文化されていないことが少なくありません。ここに点検の余地があります。
続ける・減らすを決める3つの点検軸
以下は調査が示す結論ではなく、判断を再現しやすくするために私が整理した枠組みです。
軸1:目的──何のために通っているか1行で言えるか
「体力づくり」「楽器を弾けるようになりたい」「英語に慣れる」など、1行で書けるかを確認します。書けない習い事は、惰性で続いている可能性があります。親の目的と子の目的が違うときは、両方を書き出して並べるだけで、ずれが見えます。
軸2:頻度──週の時間と移動を含めて見る
月謝だけでなく、送迎・移動・宿題・練習の時間を足した「週の総量」で見ます。高学年は学校の宿題や塾が増えるため、同じ習い事でも負担感が変わります。子どもの睡眠が削られていないかも一緒に確認してください。
軸3:出口──いつまで・どこまでを決めているか
発表会、級・段位の取得、チームの大会、中学入学のタイミングなど、区切りを決めておくと、やめる判断が「逃げ」ではなく「卒業」になります。出口が曖昧なまま月謝だけが続くのが、高学年で費用が膨らむ典型です。
家庭で今週できる5分の点検
- 習い事ごとに「月謝+教材・用具・交通費」の合計を書き出す。
- 各習い事について、目的を1行で書く(子ども本人にも聞く)。
- 週の拘束時間を合計する。
- 出口(次の区切り)の時期を決める。
- 減らす候補があれば、「やめる」ではなく「半年休む」「頻度を下げる」の選択肢も含めて話し合う。
文科省の発表を読み解くと、学校の学習内容は学習指導要領で全国共通に定められており、習い事は学校外で何を足すかを家庭が選べる領域です。選べるからこそ、基準を持つことが家計と子どもの時間の両方を守ります。なお、個別の家庭の事情に踏み込んだ相談は、この記事の対象外です。学校の担任や地域の相談窓口を活用してください。
この記事が確認できていないこと
文科省「子供の学習費調査」は、学校外活動費を公立・私立別に集計する公的統計ですが、今回、最新年度の個別金額は原典で確認できなかったため、数字の引用は控えました。家計の位置づけを確かめたい方は、公式ページで最新の結果をご確認ください。
よくある質問
Q1. 月2万3,000円は高学年の「平均」なら、うちは払いすぎですか?
一概には言えません。これは関東の216サンプルの平均で、塾を含む数字です。比較より、目的に対して費用と時間が見合っているかで判断するのが現実的です。
Q2. 習い事は何個までが適切ですか?
今回確認できた公的・調査資料に、適切な個数を示した基準はありません。個数より、週の総時間と子どもの睡眠・宿題への影響で見てください。
Q3. 子どもが「やめたい」と言ったらどうすればよいですか?
理由を「内容」「人間関係」「時間」「疲れ」に分けて聞くと、やめる以外の解決策(クラス変更、頻度調整)が見つかることがあります。出口を事前に決めておくと話し合いが進みやすくなります。
Q4. 通信教育も習い事に含めて考えるべきですか?
調査では通信教育が男子の全学齢でトップ3に入っており、習い事の一つとして扱われています。費用・時間の点検では含めて数えるのがおすすめです。






