「長女が小学校に入学した春、ランドセル・制服・学用品をまとめて買ったら、その月だけ家計が真っ赤になりました」

うちの長女のとき実際に経験したことですが、あの衝撃は忘れられません。お祝いムードで気が大きくなっていたこともあって、気づいたら10万円超えていたんですよね。翌月から急いで月ならし積立に切り替えましたが、あれは完全に"仕組みのなさ"が招いた赤字でした。

そして、長男が中学校に入学した半年後。制服代・部活の道具・夏期講習が重なり、あっという間に23万円が消えました。中学に上がるまで「小学校の教育費は軽い」と安心していた自分が恥ずかしくなりました。

この2つの体験から、私がFP相談でも繰り返し伝えるようになったのが、「小学校の6年間こそ、教育資金を育てる黄金期」という考え方です。

今回は、文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」のデータをベースに、小学校6年間の教育費を年次別に全部見える化して、中学入学後に「しまった」と後悔しないための積立設計を3ステップで整理します。


小学校6年間の教育費、全体像を把握する

まず、大きな数字から確認しましょう。

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、公立小学校に通う子1人あたりの年間学習費総額は約33.7万円です。6年間で合計すると約202万円。ここに入学準備費(ランドセル・学用品など)の8〜12万円を加えると、6年間で210万円前後が現実的な数字です。

この202万円の内訳は、大きく2つに分かれます。

  • 学校教育費(給食費含む):年間約12.2万円 ── 給食費・教材費・修学旅行積立金など、学校が徴収する費用
  • 学校外活動費:年間約21.5万円 ── 習い事・塾・通信教育など、家庭が任意で支出する費用

注目したいのは「学校外活動費」の割合の高さです。全体の63%以上が、学校に払う費用ではなく、家庭の選択による費用なのです。つまり、教育費は「学年」だけでなく「家庭の選択」によって大きくばらつくということ。これが、「うちはどのくらいかかるんだろう」と全体像が見えにくい最大の理由です。


【学年別カレンダー】費用の波が来るタイミングを把握する

FP相談でよく聞かれるのが、「小学校でいつ、何にお金がかかりますか?」という質問です。年次別に整理すると、費用の波がはっきり見えてきます。

小学1年生(入学年):「一気に出る年」

入学準備費がかかる分、1年生が最も特殊です。

  • ランドセル:4〜8万円(平均約6万円)
  • 学習机:3〜8万円(購入する場合)
  • 体操服・上履き・文房具類:2〜3万円
  • 入学式衣装:1〜2万円
  • 習い事開始費用(水泳・英語など):月0.5〜1万円

入学準備費の合計:8〜12万円+が1〜3月に集中します。ここが最初の「構え」の場所です。

小学2〜3年生:「習い事が増える助走期間」

この時期は学校の授業料は少なく、費用の主役は習い事です。水泳・ピアノ・英語・習字など、子どもの興味が広がるとともに、月謝が積み重なります。

  • 習い事(複数掛け持ちの場合):月1〜2万円
  • 自由研究・工作材料、本・教材:年間1〜2万円
  • 宿泊体験学習(3年生ごろ):1〜3万円

年間の学校外活動費は15〜25万円前後に収まることが多い時期です。保育料の負担が消えた分を積立に回しやすい、まさに「積立の助走期」です。

小学4〜5年生:「塾代が膨らむ転換点」

この時期から費用の構造が変わります。中学受験を考える家庭では、小4から進学塾が始まり、一気に教育費が跳ね上がります。受験しない場合でも、補習塾や英語スクールへの支出が増える傾向があります。

  • 進学塾(受験あり):月4〜7万円
  • 補習塾・英語(受験なし):月1.5〜3万円
  • 教材・参考書:年間1〜3万円
  • 林間学校・野外学習(5年生ごろ):2〜4万円

受験しない場合でも、学校外費用が年間30〜40万円に増加し始める時期。「気づいたら塾代で家計が追いつかない」となる前に、小4までに積立の仕組みを整えておくことが重要です。

小学6年生:「修学旅行+塾の最高値」

6年生は最も費用がかかる学年です。

  • 修学旅行(1泊2日〜2泊3日):3〜5万円
  • 塾代(受験あり):月7〜10万円(夏期講習等含む)
  • 塾代(受験なし):月2〜4万円
  • 卒業アルバム・卒業式衣装:1〜3万円
  • 中学入学準備(3〜4月):制服3〜5万円、部活道具1〜5万円

特に6年生3月〜中1の4月にかけては、卒業関連と入学準備が重なる「二重出費期」です。長男が中学に入学した半年で23万円が飛んだのも、この時期の集中出費を「中学入学後の話」と切り離して考えていたためでした。

【表:学年別・年間教育費の目安(公立・受験なし)】

学年 学校外活動費(目安) 主な特別出費 年間合計(概算)
小1 月1〜1.5万円 入学準備 8〜12万円 35〜45万円
小2 月1〜1.5万円 宿泊行事など 24〜30万円
小3 月1〜2万円 宿泊体験 1〜3万円 26〜36万円
小4 月1.5〜3万円 塾代本格化 30〜48万円
小5 月2〜4万円 林間学校 2〜4万円 38〜60万円
小6 月2〜5万円 修学旅行 3〜5万円 40〜75万円

※公立小学校・中学受験なしの場合の目安。給食費を含む学校教育費(年間約12万円)を含む。地域・習い事の選択により変動する。


小学校時代が「積立の黄金期」である3つの理由

中学・高校の教育費は、塾代・部活・受験費用が重なり、月5〜10万円台が珍しくありません。それに比べると、小学校時代は(特に低〜中学年)は教育費が相対的に軽い。ここに積立を仕込む絶好のタイミングがあります。

理由①:保育料が消えて、手元に余裕が生まれる

認可保育園の月謝(3歳以降は無償化ですが、0〜2歳は月3〜8万円かかる地域も)が消えた小学校入学のタイミングは、手取りに「余白」が生まれる瞬間です。この余白を生活費に溶かさず、教育資金口座に自動振替するのが最も再現性の高い仕組み化です。

理由②:月々の積立が複利で育つ時間がある

たとえば小1の4月から月1.5万円を積み立て、6年間(72カ月)継続すると、元本だけで108万円になります。年利3%で運用できれば約127万円。これは大学入学準備費(受験料・入学金の一部)に充てられる水準です。時間は、一番お金がかからない今使わないと、二度と買えないのです。

理由③:中学・高校で「止めない」土台を作れる

FP相談で、一度積立を止めて再開できた家庭は体感で半数以下です。小学校のうちに「給与日翌日に自動振替が動く」状態を作っておくと、中学以降に塾代が増えても「下げるけど止めない」判断ができます。結論から言うと家計の見直しが先。先に仕組みを作った家庭と作らなかった家庭では、中3の春の選択肢が大きく変わります。


CFP流3ステップ:小学校6年間の積立設計

Step1(小1〜小3):月1〜1.5万円で「仕組み」を作る

やること:給与日翌日に教育資金専用口座へ自動振替を設定する。金額は「手取りの5〜7%」が継続しやすい水準です(手取り25万円なら月1.2〜1.7万円)。

口座の選び方:引き出しにくい別銀行が理想。ネット銀行の普通預金(2026年現在、利率0.3〜0.7%台)でまずはシンプルに。こどもNISAが2027年に始まる前の準備口座としても使えます。

原資の作り方:保育料がなくなった分を丸ごと移すのが最も楽です。通信費の見直し(大手→格安SIMで月5,000〜8,000円削減)や保険の重複整理で原資を確保してもOK。

この期間の目標残高:元本36カ月 × 月1.5万円 = 約54万円(年利3%運用なら約58万円)

Step2(小4〜小5):月1.5〜2万円に増額する

小4は塾代が増えるタイミングです。「塾代が増えたから積立を減らす」ではなく、固定費の見直し分を積立に振り向けることで増額を実現します。

増額のための固定費見直し3点

  1. 通信費(格安SIM未対応なら今すぐ):月5,000〜10,000円削減
  2. 重複保険(独身時代の死亡保障):月3,000〜8,000円削減
  3. サブスク棚卸し(使っていないサービス):月2,000〜5,000円削減

固定費を1カ所だけ変えると毎月効果が継続します。変動費を毎月削るより、はるかに心理的コストが低い。

この期間の目標残高:Step1からの累積 + Step2 24カ月分 ≒ 約110〜130万円

Step3(小6):中学入学準備の「特別費口座」を別に作る

大学費用の積立口座とは別に、中学入学準備専用の口座を小6の4月に開設します。目安は月1〜1.5万円を12カ月(卒業まで)=12〜18万円。これで制服・部活道具・入学手続き費に対応できます。

大学費用の積立と受験・入学準備費を同じ口座で管理すると、中3〜高3で「取り崩す連鎖」が起きます。別口座に分けるだけで、目的が明確になり迷わなくなります。

3ステップ完了時の残高目安(月1.5万円→2万円増額、年利3%の場合)

  • 大学費用口座:約130〜150万円(小1〜小6の72カ月積立)
  • 中学入学準備口座:約12〜18万円(小6の12カ月積立)
  • 合計:約145〜168万円

これが、小学校卒業時点でのスタート台になります。高校・大学の費用が本格化する前に、この土台を作れるかどうかが、中学以降の家計の余裕を決めます。


よくある質問 FAQ

Q1. 習い事を複数させているので、月2万円の積立は難しい。どうすればいい?

まずは月5,000円でもOKです。大切なのは「自動振替が動いている状態を維持すること」。0円にすると再開に大きなエネルギーが必要になります。まず5,000円で始め、習い事を整理できた時点で増額する設計が、長続きする家庭に共通するパターンです。

Q2. こどもNISA(2027年開始)が始まるまで積立を待ったほうがいい?

待つことにはコストがあります。月1.5万円を12カ月待つと18万円の積立機会損失。こどもNISAはすばらしい制度ですが、2027年まで何もしないのではなく、「今から親のNISAで準備→2027年以降はこどもNISAで加速」というハイブリッドが現実的です。

Q3. 児童手当はどう扱えばいい?

小学生(3歳〜中学校修了)の児童手当は月1万円(第3子以降は3万円)です。この金額を教育資金専用口座に直接自動振替するだけで、年間12万円が確実に積み上がります。積立の「最低ライン」を児童手当で担保し、上乗せ積立を家庭の余力で調整するのがバランスの取りやすい設計です。

Q4. 2026年から自治体によって給食費が無償化されると聞いた。その分を積立に回せる?

給食費(公立小学校の月平均約4,800〜5,500円)が無償化される自治体に住んでいる場合、年間約5〜6万円の支出が減ります。この金額を教育資金口座への自動振替に追加するだけで、年間の積立額が大きく伸びます。「浮いたから何となく使う」より「同額を自動振替に追加する」のが鉄則です。

Q5. 中学受験を検討中だが、受験するかどうかまだ決めていない。どう積立すればいい?

「受験することにした時点で積立計画を修正」という後出し設計が最も安全です。まず小3までに月1.5〜2万円の基本積立を整え、小3の秋〜冬に進路方針を夫婦で確認。受験する場合は、塾代を固定費見直しと合わせてカバーし、積立は「下げても止めない」ルールで維持します。受験しない場合は積立をそのまま継続して大学費用に育てるだけです。


まとめ:小学校時代に「積立の習慣」を作った家庭が中学以降も強い

小学校6年間の公立教育費は、文科省データで約202万円。入学準備を含めると約210万円が現実的な数字です。これ自体は大きな金額ですが、毎月の支出として見ると月平均2.9万円(6年÷12カ月)。一気に怖い数字には見えないはずです。

大切なのは、この6年間を「費用の波が来るタイミング」と「積立の原資を作るタイミング」に分けて設計すること。保育料が消えた小1、固定費を見直した小4、中学準備口座を作った小6。この3つの節目を押さえるだけで、中学入学後の「しまった」が激減します。

FP歴12年で1,500件以上の相談に携わってきた実感として、教育資金の不安の多くは「全体像が見えていないこと」から生まれています。小学校の費用を学年別にカレンダーに落とし込み、自動振替を1本設定するだけで、漠然とした不安が「月1.5万円で動ける計画」に変わります。

まず今月中に、教育資金専用口座を1つ作ること。そこから始めましょう。


参考文献・データ出典