12月が近づくと、2学期の通知表を受け取る家庭が増えます。開いてみると、教科ごとに「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」と並び、A・B・Cの記号がついています。「Bが多いけれど、クラスの中ではどのあたりなのだろう」と気になる保護者の方は少なくありません。

結論から言うと、通知表のA・B・Cは、友達との比較で決まる順位ではありません。この記事では、公的資料で確認できる範囲に絞って、通知表の仕組みを整理します。確認できなかったことは書いていません。

この記事でわかること

  • A・B・Cが何を基準に付けられているか
  • 3つの観点がそれぞれ何を見ているか
  • 小学校の評定(3段階)との関係と、低学年の扱い
  • 通知表が届く前後に、家庭で確認したい3つのこと

A・B・Cは「目標に準拠した評価」

各教科の評価は、学習指導要領に示された各教科の目標や内容に照らして学習状況を評価する「目標に準拠した評価」です。集団の中での相対的な位置を示す相対評価とは異なります。都道府県の学習評価資料でも、この点が説明されています(参考文献の神奈川県・福岡県資料など)。

観点別の記号は、たとえば江戸川区の学校資料では次のように整理されています。

記号意味
A「十分満足できる」状況
B「おおむね満足できる」状況
C「努力を要する」状況

つまりBは「平均的」ではなく、「目標をおおむね達成している」という意味です。クラス全員がBやAになることもありえますし、その逆もあります。ここを取り違えると、通知表の見方がずれてしまいます。

3つの観点は何を見ているのか

現在の学習指導要領のもとでは、全教科で次の3観点で評価します。以前は「関心・意欲・態度」「思考・判断・表現」「技能」「知識・理解」の4観点でした(福岡県教育委員会の資料による)。

  1. 知識・技能:学んだ内容を理解し、使える状態になっているか
  2. 思考・判断・表現:身につけた知識を使って考え、判断し、表現できているか
  3. 主体的に学習に取り組む態度:粘り強く取り組もうとする側面と、自分の学習を調整しようとする側面の2つから見る

3つ目の2側面は、国立教育政策研究所の「学習評価の在り方ハンドブック」で示された考え方として、複数の都道府県資料が紹介しています。「手を挙げた回数」や「ノートの丁寧さ」だけで決まるものではない、という位置づけです。ただし、実際の場面でどんな材料を使うかは学校や教員の運用によるため、ここは次の章で触れる「確認」が必要になります。

なお、次期学習指導要領でこの観点がどう変わりうるかは、別記事「「主体的に学習に取り組む態度」が通知表の成績欄から消える」で扱っています。本記事は現行制度の読み方に絞ります。

評定(3段階)との関係と低学年の扱い

観点別の評価とは別に、教科全体の学習状況を数字で示す「評定」があります。岡山県の資料では、評定は小学校で3段階、中学校で5段階とされ、小学校の第1学年と第2学年では評定を行わないと記されています。

そのため、小1・小2の通知表には評定欄がない、あるいは観点別の記号が中心になるのが通常です。小3以上で数字(1〜3)が登場して驚く、という家庭もあります。

観点別の記号を評定にどう換算するかは、今回確認した資料の範囲では、学校ごとの総括の方法に委ねられる部分があるようです。「AがいくつでOO」といった一律の公式は、少なくとも私が確認できた公的資料には見当たりませんでした。これは断定せず、後述のとおり学校に聞くのが確実です。

文科省の発表を読み解くと見えてくる評価の狙い

平成31年3月29日付の文部科学省初等中等教育局長通知「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」は、学習評価を「学習改善や指導改善につながるもの」にするという基本的な考え方を示しています(山口県の資料による整理)。文科省はその後、通知の趣旨を明確にするためのQ&A(令和元年11月5日時点)も公表しました。

文科省の発表を読み解くと、通知表は「子どもに順位を付ける書類」ではなく、「次の学習のために、どこまで達成できたかを伝える書類」という設計です。私は英語民間試験の報道が賛否の煽り合いになったとき、原典に戻ると論点がもっと多層だったという経験をしました。通知表の「Bだった」という一つの記号も、同じように、原典の定義に戻ると読み方が変わります。

2学期の通知表が届く前後に家庭で確認したい3つのこと

1. A・B・Cを「順位」として話題にしない

子どもに「Bなの? Aの子もいるんでしょ」と聞くと、子どもは評価を比較の結果として受け取ります。まずは「どの観点が何だった?」と、観点ごとの現状を一緒に確認する会話にすると、記号が次の学習の話題に変わります。

2. 観点ごとに、つまずきの種類を分ける

観点が違えば、手当ても違います。

  • 「知識・技能」が弱い:漢字や計算など、基本の定着を小さく繰り返す
  • 「思考・判断・表現」が弱い:「どうしてそう考えたの?」と理由を言葉にする機会を増やす
  • 「主体的に学習に取り組む態度」が弱い:学習の進め方を子ども自身が選ぶ場面を作る(例:今日どの順で宿題をやるか)

1つの記号だけで「勉強が苦手」と括らず、どの観点かを見ることが出発点になります。

3. 不明点は、個人面談や連絡帳で学校に具体的に聞く

観点ごとの評価材料(テスト、ワークシート、授業中の発言、ノートなど)や、評定への総括の方法は、学校で運用が異なる可能性があります。聞くときは、次のように具体的にすると答えを得やすくなります。

  • 「『主体的に学習に取り組む態度』は、どんな場面を見て評価されていますか」
  • 「Cの観点について、家庭でどんな点を意識するとよいでしょうか」
  • 「評定は、観点別の評価をどう総括して付けていますか」

責めるためではなく、評価の根拠を知るための質問だと添えると、面談が建設的になります。

やってしまいがちな読み方

  • Bを「普通以下」と受け止め、本人に伝えてしまう
  • Cを「能力がない」と読み、特定の観点の問題であることを見落とす
  • 評定の数字だけを見て、観点別の中身を確認しない

通知表は1学期、2学期、3学期と積み重なる記録です。1回の記号よりも、観点ごとの流れを見るほうが、判断材料として使えます。

よくある質問

Q1. Bは「クラスの真ん中」という意味ですか?

いいえ。各教科の評価は目標に準拠した評価で、相対評価ではありません。Bは「おおむね満足できる」状況を示します。

Q2. 小1・小2の通知表に数字の評定がないのはなぜですか?

岡山県の資料では、小学校第1学年・第2学年では評定を行わないとされています。観点別の評価が中心になるため、評定欄がないのは通常のことです。

Q3. 3つの観点のうち、どれが評定に一番影響しますか?

今回確認した公的資料の範囲では、一律の比重は確認できませんでした。総括の方法は学校で異なる可能性があるため、面談などで学校に確認するのが確実です。

Q4. 「主体的に学習に取り組む態度」は、発言の多さで決まるのですか?

ハンドブックの考え方では、粘り強い取組と、自らの学習を調整しようとする側面の2つから見るとされています。発言の回数だけで決まるわけではありません。具体的な評価場面は学校に聞いてみてください。

Q5. 通知表でCがあったらどうすればいいですか?

まず、どの教科のどの観点かを確認します。そのうえで担任に評価の根拠と家庭でできることを尋ね、観点に合った小さな手当てから始めるのがおすすめです。

まとめ

  • A・B・Cは、学習指導要領の目標に照らした「目標に準拠した評価」で、順位ではない
  • 3観点は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」
  • 小学校の評定は3段階で、小1・小2には評定がない
  • 評価材料や総括の方法は、学校に具体的に聞いて確認する

制度を正しく読めば、通知表は子どもを比べるものではなく、次の一歩を決めるための資料に変わります。

参考文献