FP相談でよく聞かれるのが「うちの子はまだ小学生なので扶養控除は関係ないですよね?」という質問です。たしかに、16歳未満の子どもには所得税の扶養控除はありません。でも「関係ない」で終わらせると、住民税で損をしている可能性があります。

結論から言うと家計の見直しが先──ではあるのですが、その前に「扶養控除の仕組み」を正しく知っておくことが、見直しの土台になります。今回は、子育て世帯が見落としがちな扶養控除の3つのポイントを、FP相談の現場からお伝えします。

そもそも「年少扶養控除」はなぜなくなった?

2011年(平成23年)まで、0〜15歳の子ども1人につき所得税38万円・住民税33万円の扶養控除がありました。これが「年少扶養控除」です。

廃止の理由は、当時の民主党政権が「所得控除から手当へ」の方針で子ども手当(現在の児童手当)を創設したためです。控除は所得が高い人ほど節税効果が大きく、低所得世帯にはメリットが薄い。一方、手当は全員に同額が届く。より公平な子育て支援を目指した制度転換でした。

ところが、15年以上が経過した2026年現在も、この「16歳未満だけ控除ゼロ」の状態は続いています。16歳以上の子どもには38万円の一般扶養控除があり、19〜22歳には63万円の特定扶養控除がある。高齢の親を扶養すれば同居で58万円の控除がある。0〜15歳の子どもだけが「控除の空白地帯」に置かれているのです。

ポイント1:住民税の「非課税判定」では16歳未満もカウントされる

ここが最も見落とされやすい部分です。所得税の扶養控除は廃止されましたが、住民税の非課税限度額の計算では、16歳未満の扶養親族も人数にカウントされます

住民税が非課税になる所得の基準は「35万円×(本人+扶養親族の数)+31万円」(給与所得者の場合)で計算されます。たとえば扶養親族が0人なら所得45万円(給与収入100万円程度)が限度ですが、16歳未満の子ども2人を扶養に入れると所得136万円(給与収入約204万円)まで非課税になる可能性があります。

うちの長女が生まれたとき、私自身がこの仕組みを計算して驚きました。0〜15歳だけ扶養控除がゼロなのに、住民税の非課税判定ではしっかりカウントされる。逆に言えば、申告しなければ「子どもがいないもの」として住民税が計算されるのです。

共働き世帯は「どちらの扶養にするか」で住民税が変わる

共働きの場合、16歳未満の子どもをどちらの扶養に入れるかは自由に選べます。ポイントは年収の低いほうに入れること。年収が低いほうが非課税ラインに近いため、扶養親族を加えることで住民税がゼロになるケースがあります。

具体的には、パート収入が年150〜200万円程度の場合、子ども1人を扶養に入れるだけで住民税が非課税になる可能性があります。住民税の均等割(年約5,000円)と所得割を合わせて年1〜2万円の差が出ることもあるので、確認する価値は十分にあります。

年末調整の「住民税に関する事項」欄を空欄にしない

会社員の年末調整では、「扶養控除等(異動)申告書」の下部に「住民税に関する事項」という欄があります。ここに16歳未満の子どもの名前と生年月日を記入する欄がありますが、「控除がないから書かなくていい」と思って空欄にしている方が少なくありません。

この欄は住民税の非課税判定に直結します。空欄にすると、自治体は「扶養親族なし」として住民税を計算します。所得税の控除はなくても、この欄は必ず記入してください

ポイント2:高校生(16〜18歳)の扶養控除は2026年度も「維持」された

2024年10月から児童手当が高校生(16〜18歳)にも拡大され、1人あたり月1万円(第3子以降は月3万円)が支給されるようになりました。

これに伴い、政府内では「高校生の扶養控除を所得税38万円→25万円、住民税33万円→12万円に縮小する」案が検討されていました。児童手当と扶養控除の「二重取り」を調整するためです。

しかし、2026年度(令和8年度)の与党税制改正大綱で、高校生の扶養控除は現行の38万円が維持されることが決まりました。「教育費負担が重く、児童手当だけでは家計が厳しい」という声が反映された形です。

つまり、2026年現在の子育て世帯にとっては次のような構造になっています。

子どもの年齢児童手当所得税の扶養控除
0〜2歳月1.5万円(第3子は月3万円)なし(年少扶養控除廃止)
3〜15歳月1万円(第3子は月3万円)なし(年少扶養控除廃止)
16〜18歳月1万円(第3子は月3万円)38万円(維持)
19〜22歳なし63万円(特定扶養控除)

16〜18歳だけが「児童手当+扶養控除」の両方を受けられる、現時点ではもっとも手厚い年齢帯です。ただし、この措置がいつまで続くかは不透明なので、「もらえるうちにもらう」ではなく、教育資金の積立は控除に依存しない前提で組むことをおすすめします。

ポイント3:児童手当と旧・年少扶養控除の「年収別損得」はどうなっている?

「控除がなくなった代わりに児童手当がある」と言われても、本当にトータルで得なのか気になりますよね。年収帯別に比較してみましょう。

年少扶養控除が「あった場合」の節税効果

仮に年少扶養控除(所得税38万円・住民税33万円)が復活した場合、子ども1人あたりの節税額は次のようになります。

課税所得の目安(年収換算)所得税率所得税の節税額住民税の節税額節税合計
195万円以下(〜年収400万円台前半)5%19,000円33,000円52,000円
195〜330万円(年収500〜600万円台)10%38,000円33,000円71,000円
330〜695万円(年収700〜900万円台)20%76,000円33,000円109,000円
695〜900万円(年収1,000万円前後)23%87,400円33,000円120,400円

児童手当の年間支給額との比較

現在の児童手当は3歳以上で年12万円(月1万円×12カ月)。0〜2歳なら年18万円です。

年収500〜600万円台の世帯では、旧控除の節税効果が年約7.1万円なのに対し、児童手当は年12万円。差し引き年約4.9万円のプラスです。多くの年収帯で、児童手当のほうが旧控除よりも実質的な恩恵が大きい構造になっています。

ただし、年収が上がるにつれて控除の節税効果も大きくなるため、年収900万円を超えるあたりから控除のほうが有利になります。所得税率23%の場合、子ども1人の節税額は年約12万円で児童手当とほぼ同額。所得税率33%なら年約15.5万円と児童手当を上回ります。

FP相談でよくお伝えするのは、「制度の損得計算より、手元に届いた児童手当を確実に教育資金として確保する仕組みのほうが大事」ということです。控除の節税効果は天引きの中で見えにくいですが、児童手当は実際にお金が届く。届いたお金を教育資金の口座に自動振替する仕組みさえ作れば、控除があろうがなかろうが教育資金は貯まります。

6月の住民税通知書で「扶養の申告漏れ」を確認する方法

毎年5〜6月に届く住民税決定通知書で、扶養の申告状況を確認できます。

通知書の「扶養」欄に記載されている人数を確認してください。16歳未満の子どもを年末調整で申告していれば、「16歳未満扶養親族」の欄に人数が記載されているはずです。ここが空欄なら、昨年の年末調整で記入漏れがあった可能性があります。

私は朝5時に起きてExcel家計簿を整理する習慣があるのですが、毎年6月の住民税通知書が届いたタイミングで、扶養親族の記載と実際の家族構成を突き合わせるようにしています。うちは3人の子がいるので、特に次女が生まれたときに申告が漏れていないか注意が必要でした。

申告漏れがあった場合の対処法

もし16歳未満の子どもの申告漏れが見つかった場合は、以下の方法で修正できます。

  • 会社員の場合:勤務先の総務・経理に連絡し、扶養控除等申告書の修正を依頼する。または市区町村に直接「住民税の申告書」を提出する
  • 確定申告をしている場合:更正の請求(5年以内)で扶養親族を追加する
  • 過去分:住民税は5年分まで遡って申告の修正が可能。過去に非課税になるはずだった年度があれば、差額が還付される可能性もある

よくある質問(FAQ)

Q1. 16歳未満の子どもを夫婦のどちらの扶養にも入れていない場合、今からでも変更できますか?

はい、できます。今年の年末調整で「住民税に関する事項」欄に記入すれば、来年度の住民税から反映されます。過去分については市区町村の住民税窓口に相談すれば、遡って申告できる場合があります。

Q2. 共働きで夫の年収が700万円、妻のパート収入が150万円の場合、子どもは妻の扶養にすべきですか?

住民税の非課税判定を考えると、年収の低い妻側に入れるほうが有利なケースが多いです。妻の給与収入150万円の場合、子ども1人を扶養に入れると住民税が非課税になる可能性があります。ただし、夫の会社に扶養手当(家族手当)がある場合は、その条件も確認してから判断してください。

Q3. 高校生の扶養控除は今後も維持されますか?

2026年度の税制改正では維持が決まりましたが、将来的な縮小の可能性は残っています。政策は変わり得るため、高校生の扶養控除が「ある前提」で家計を組むのではなく、なくなっても対応できる教育資金計画を立てておくことをおすすめします。

Q4. 児童手当と扶養控除の両方を使えるのは何歳ですか?

2026年現在、16〜18歳(高校生年代)のみです。0〜15歳は児童手当のみ(扶養控除なし)、19歳以上は扶養控除のみ(児童手当なし)です。16〜18歳は児童手当月1万円+扶養控除38万円の両方が適用されます。

まとめ:子育て世帯が今日やるべき3つのアクション

  1. 住民税通知書を確認:「16歳未満扶養親族」欄に子どもの人数が正しく記載されているかチェック
  2. 共働き世帯は扶養の付け先を見直す:年収の低いほうに16歳未満の子どもを入れて、住民税の非課税判定を有利にする
  3. 今年の年末調整では必ず記入する:「住民税に関する事項」の16歳未満の子ども欄を空欄にしない

制度の損得を追いかけるよりも、届いた児童手当を確実に教育資金に回す仕組みを作ること。控除があってもなくても「貯まる家計」をつくることが、FP相談で繰り返しお伝えしている結論です。

参考文献