FP相談でよく聞かれるのが「中学受験の塾に入れた途端、それまで続けていた教育費の積立ができなくなった」という悩みです。

小学校の6年間は教育費の支出が比較的軽く、保育料負担も消える「積立の黄金期」。この時期にコツコツ積み上げてきた教育資金が、小4の入塾を境に停滞してしまうケースをFP相談で何度も見てきました。

結論から言うと家計の見直しが先です。塾代を払いながら将来の教育資金も守る方法はありますが、何も準備せずに入塾すると家計が回らなくなります。この記事では、中学受験の塾代が家計に与えるインパクトの実態と、教育資金マップを修正して両立する3ステップを整理します。

中学受験の塾代は「小4で年50万円」では終わらない

大手進学塾の費用は学年が上がるごとに急カーブで膨らみます。2026年時点の主要4塾の年間費用目安は以下の通りです。

学年通常授業料(年間)季節講習等を含む年間総額月額換算
小4約35〜48万円約50〜70万円約4〜6万円
小5約48〜60万円約70〜100万円約6〜8万円
小6約60〜72万円約100〜150万円約8〜12万円
3年間合計約200〜300万円

ポイントは、月謝だけ見て「払えそう」と判断しないこと。春期・夏期・冬期講習、志望校別特訓、テスト代が上乗せされ、特に小6の夏期講習は1回で15〜20万円になることもあります。

うちの長男のとき実際に感じたのは、小4で月4万円だった塾代が小5になると月7万円近くに跳ね上がり、「あれ、教育資金の積立に回すお金がない」と気づいたことでした。それまで月2万円ずつ積み立てていた大学費用が、まるごと塾代に吸い込まれる構造だったのです。

FP相談で見る「塾代で積立が止まる」3つのパターン

FP相談1,500件の中で、中学受験期に教育資金の積立が崩れる家庭には共通のパターンがあります。

パターン1:塾代を生活費口座から出して残高の錯覚が起きる

教育資金の積立口座と生活費口座を分けていても、塾代の引き落としを生活費口座にしている家庭が多い。月7〜12万円が毎月出ていくと「生活費が足りない」と感じ、積立を一時停止してしまいます。

パターン2:季節講習の集中出費で積立を取り崩す

小6の夏期講習15〜20万円、冬期講習と正月特訓で10〜15万円。これが教育資金の積立口座から「一時的に」引き出され、そのまま戻らないケースです。

パターン3:「中学に入れば塾代は減る」と楽観する

私立中学に合格しても、学校の授業料+交通費+教材費で月5〜8万円の支出が始まります。塾代がなくなっても教育費の総額は下がらず、積立再開のタイミングを逃す構造です。

教育資金マップを修正する3ステップ

ステップ1:入塾前に「塾代の3年カレンダー」を作る

入塾を決める前に、小4〜小6の3年間の塾代を月ごとに書き出します。通常授業料だけでなく、季節講習・テスト代・教材費を含めた「全部入り」の金額です。

具体的には、検討中の塾に「年間でかかる費用の総額」を聞くこと。多くの塾は月謝しか提示しませんが、季節講習やオプション講座を含めた年間総額を事前に確認しておくと、家計への衝撃を防げます。

この3年カレンダーを、教育資金マップの中に組み込みます。大学費用の積立ラインと塾代のラインを同じシートに並べれば、「いつ積立が止まるか」が一目でわかります。

ステップ2:「削れる固定費」で月2万円の積立原資を確保する

塾代が月4〜12万円増えても、大学費用の積立を完全に止めないことが最重要です。月2万円でも積立を継続できれば、3年間で72万円。これに児童手当(第1子・第2子は月1万円)を加えれば、3年間で約108万円の大学費用が確保できます。

積立原資の作り方は以下の優先順位で。

  • 通信費の見直し(月5,000〜12,000円削減):大手キャリアから格安SIMへの乗り換えは、一度の手続きで毎月の効果が続く「仕組みの節約」です
  • 保険の重複整理(月3,000〜8,000円削減):独身時代の保険が残っている場合、公的保障との重複を確認
  • サブスクの棚卸し(月1,000〜3,000円削減):使っていないサービスの解約

固定費の見直しだけで月1.5〜2万円が浮くケースは珍しくありません。この金額を給与日翌日の自動振替で教育資金口座に積み立てれば、塾代を払いながらでも大学費用の積立を維持できます。

ステップ3:ボーナスの配分比率を「受験モード」に切り替える

塾代が家計に加わる3年間は、ボーナスの配分を修正します。

配分先通常時受験期(小4〜小6)
教育費(大学費用積立)30〜40%20〜25%
特別費(塾の季節講習含む)30〜40%40〜50%
ご褒美・家族イベント20〜30%15〜20%

大事なのは、教育費(大学費用)の配分をゼロにしないこと。ボーナスの20%でも残しておけば、手取り40万円のボーナスなら年2回で16万円、3年間で約48万円の大学費用が積み上がります。

「3年間の一時停止」がなぜ危険なのか

「中学に入ったら積立を再開すればいい」と考える家庭も多いですが、FP相談の実感では、一度止めた積立を再開できる家庭は半数以下です。理由は単純で、私立中学の費用が始まるからです。

仮に小4の入塾時に教育資金マップの積立を3年間完全に止めた場合、月2万円の積立なら72万円、新NISAで年利3%運用なら約76万円の機会損失が発生します。大学入学までの残り期間が短くなるほど、この差は取り戻しにくくなります。

教育費と住宅ローンが重なる「ダブルパンチ期」に塾代まで加わると、手取り月収の50%を超える教育関連支出になるケースもあります。入塾前の段階で、教育資金マップ全体を見直しておくことが最善の備えです。

塾代を「教育投資」として教育資金マップに位置づける

中学受験の塾代は、大学費用と別枠で考えるのではなく、教育資金マップの中に「小4〜小6の教育投資」として明確に位置づけます。

具体的には、毎年4月の教育資金棚卸しデーに以下を確認します。

  • 塾代の年間予算と実績のズレ(季節講習の追加分を含む)
  • 大学費用の積立残高と目標までの差額
  • 児童手当が教育資金口座に自動振替されているか
  • こどもNISA(2027年開始)への準備状況

この棚卸しを夫婦で共有することで、「塾代に圧されて大学費用が見えなくなる」状態を防げます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 中学受験の塾代3年間で本当に200〜300万円もかかるのですか?

A. 大手4塾(SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー)の場合、通常授業料に加え季節講習・志望校別特訓・テスト代を含めると3年間で200〜300万円が目安です。SAPIXが最も高く約300万円、日能研が比較的抑えめで約220〜250万円です。個別指導や家庭教師を追加するとさらに増えます。

Q2. 塾代を払いながら教育資金の積立を続けるのは現実的ですか?

A. 月2万円でも積立を維持するのが理想です。固定費の見直し(通信費・保険・サブスク)で月1.5〜2万円の原資を確保できるケースが多く、これに児童手当を加えれば3年間で約108万円の大学費用が積み上がります。完全に止めるのと続けるのとでは、大学入学時の貯蓄残高に大きな差が出ます。

Q3. 中学受験をしない場合と比べて、教育費の総額はどれくらい違いますか?

A. 中学受験をする場合、塾代3年間で約200〜300万円+私立中学3年間の学費約300〜400万円で、しない場合と比べて6年間で約400〜600万円の差が生じます。この差額を踏まえた上で、教育資金マップ全体を見直すことが重要です。

Q4. 小6の夏期講習が高額ですが、全コマ取るべきですか?

A. 全コマ+全オプションを取ると15〜20万円以上になりますが、苦手科目に絞る・前半だけ参加するなどの「引き算」で費用を半分以下に抑えられる場合もあります。塾の提案をそのまま受け入れるのではなく、費用対効果を家庭で判断することが大切です。

参考文献