FP相談でよく聞かれるのが「大学の受験料っていくらかかるんですか?」という質問です。私立大学の一般入試で1校3万5,000円、国公立の2次試験で1万7,000円──ここまでは調べればすぐわかります。でも、受験料だけで終わらないのが大学受験のお金の怖さです。

東京私大教連の「私立大学新入生の家計負担調査」(2024年度)によると、受験にかかる費用は自宅外通学者で平均27万3,800円、自宅通学者でも平均25万1,700円。これに併願校の入学金(いわゆる「捨て金」)が加わると、30〜50万円が高3の秋から冬のわずか2〜3カ月に集中して飛んでいきます。

うちの長男のとき実際に、高3の秋に「併願校の入学金って返ってこないんですか?」と聞かれてハッとしました。教育資金の積立口座から取り崩すことなく、受験期の家計パニックを防ぐ方法を整理します。

受験費用30〜50万円の「中身」を分解する

大学受験費用は、大きく4つの費目に分かれます。見落としがちなのは受験料以外の3つです。

費目1:受験料(検定料)

受験方式1回あたりの目安
大学入学共通テスト(3教科以上)18,000円
国公立大学2次試験17,000円
私立大学 一般方式約35,000円
私立大学 共通テスト利用方式15,000〜18,000円

たとえば国公立2校(前期・後期)+私立3校を一般方式で受験すると、受験料だけで約15万7,000円です。共通テスト利用方式を併用すれば、私立1校あたり約2万円の節約になります。

費目2:併願校の入学金(「捨て金」)

私立大学の入学金は平均約24万6,000円。第1志望の合格発表前に併願校の入学金納付期限が来るケースでは、辞退しても返金されないお金──いわゆる「捨て金」が発生します。

ただし、2025年6月に文部科学省が全国の私立大学に入学金の負担軽減を通知し、2026年度入試から83校が入学金返還や納付期限の後ろ倒しに対応しています。納付期限の後ろ倒しが46.99%(39校)、入学辞退時の全部または一部返還が30.12%(25校)と、従来の「捨て金」構造は変わりつつあります。

とはいえ、全大学が対応しているわけではありません。出願前に志望校・併願校の入学金返還制度を確認しておくことが、家計防衛の第一歩です。

費目3:交通費・宿泊費

遠方の大学を受験する場合、新幹線や飛行機の交通費+前泊のホテル代が1回あたり2〜5万円かかります。3校受験すれば6〜15万円。地方試験会場がある大学を選べばこの費用を大幅に抑えられます。

費目4:出願関連の実費

証明写真代、郵送料(速達・簡易書留)、願書取り寄せ費用など、1校あたり2,000〜3,000円の細かい出費も積み重なると1〜2万円になります。

合計シミュレーション:国公立志望+私立3校併願の場合

費目金額目安
共通テスト受験料18,000円
国公立2次(前期・後期)34,000円
私立3校(一般+共テ利用併用)約90,000円
併願校入学金(1校分)約200,000円
交通費・宿泊費(2回分)約60,000円
出願実費約10,000円
合計約41万2,000円

結論から言うと家計の見直しが先──ではなく、この場合は「先に積み立てる仕組み」が先です。受験期に教育資金の積立口座を取り崩してしまうと、入学後の授業料に回すお金が足りなくなる連鎖が起きます。

受験費用を教育資金と「別の箱」で管理する理由

FP相談で1,500件以上の家庭を見てきて断言できるのは、受験費用と教育資金(授業料用)を同じ口座で管理している家庭ほど、受験期に授業料用の資金まで取り崩してしまうということです。

口座残高が200万円あると「まだ余裕がある」と感じますが、そのうち160万円は入学金+初年度前期授業料に充てるお金。受験費用40万円を引いたら授業料が足りなくなる──この「残高の錯覚」が起きるのです。

対策はシンプルで、受験費用は教育資金の積立口座とは別の口座で管理するだけ。私はExcel家計簿に「受験費用積立シート」を追加して、高1の春から24カ月の月ならし積立を始めました。

高1から始める月ならし積立──3ステップ

ステップ1:受験費用の総額を見積もる

子どもの志望校レベルと受験パターンから、ざっくり3パターンで見積もります。

パターン受験校数費用目安月ならし額(24カ月)
堅実型(国公立+私立2校)3〜4校約25万円約10,500円
標準型(国公立+私立3校)5〜6校約40万円約16,700円
安全重視型(国公立+私立5校)7校以上約55万円約22,900円

迷ったら「標準型」の月1.5〜2万円を目安にすれば、多くの受験パターンに対応できます。

ステップ2:受験費用専用口座に自動振替を設定する

給与日の翌日に、受験費用専用のネット銀行口座へ自動振替を設定します。ポイントは3つです。

  • 教育資金口座とは別にする──残高の錯覚を防ぐため
  • 普通預金でOK──2年以内に使うお金なので元本保証が原則
  • ボーナス月に上乗せする必要はない──ボーナスは教育資金(授業料)と特別費に回す

ステップ3:高2冬に「出願カレンダー」を作成する

高2の冬(12〜2月)に、志望校・併願校の以下の情報を一覧にまとめます。

  • 出願期間と検定料の納付期限
  • 試験日
  • 合格発表日
  • 入学金納付期限
  • 入学金返還制度の有無と条件

この5項目を並べるだけで、「どの時点でいくら現金が必要か」が月単位で見えます。特に併願校の入学金納付期限と第1志望の合格発表日の前後関係は、捨て金が発生するかどうかの分かれ目です。

受験費用を抑える3つの出願戦略

戦略1:共通テスト利用入試を活用する

私立大学の共通テスト利用方式は受験料が1万5,000〜1万8,000円と、一般方式(約3万5,000円)の半額以下。しかも試験会場に行く必要がないので交通費・宿泊費もかかりません。安全校を共テ利用で確保し、一般方式は第1志望と実力相応校に絞ると、受験料+交通費で5〜10万円の差が出ます。

戦略2:入学金返還制度のある大学を併願校に組み込む

2026年度入試から83校が入学金返還や納付期限の後ろ倒しに対応しています。出願前に各大学の入試要項を確認し、併願校の候補に入学金返還制度のある大学を含めると、捨て金リスクを下げられます。

戦略3:同一大学の併願割引を使う

同じ大学で複数の学部・学科を受験する場合、2学科目以降の受験料を割引する制度があります。たとえば共通テスト利用方式で1学科目が1万5,000円、2学科目が1万円という大学もあります。「同じ大学内で学部を広げる」のは費用面でも合理的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 受験費用の積立は高1からでないと間に合いませんか?

高2からでも12カ月あれば標準型なら月約3.3万円で間に合います。ただし月額が大きくなるほど継続が難しくなるので、早く始めるほど楽です。FP相談の実感では、高1から24カ月かけて月1.5万円のほうが、高2から12カ月で月3.3万円より継続率が高いです。

Q2. 受験費用を新NISAで運用しても大丈夫ですか?

2年以内に使うお金を株式で運用するのはリスクが高すぎます。受験費用は普通預金が原則です。教育資金の中でも「使う時期が決まっている短期資金」は元本保証で管理してください。

Q3. 併願校の入学金(捨て金)を避ける方法はありますか?

完全に避けるのは難しいですが、3つの方法でリスクを減らせます。(1) 入学金返還制度のある大学を併願校に選ぶ、(2) 共通テスト利用入試で安全校を確保し、一般入試は第1志望に集中する、(3) 出願カレンダーで入学金納付期限と第1志望合格発表日の前後関係を確認し、期限が後ろの大学を併願校にする。

Q4. 受験費用と教育資金の口座を分ける具体的な方法は?

ネット銀行の普通預金口座を1つ新規開設し、「受験費用専用」と名づけるだけで十分です。メインバンクとは別の銀行にすると、ATMで気軽に引き出す誘惑を防げます。自動振替の設定は10分で完了します。

Q5. 地方から都市部の大学を受験する場合、交通費・宿泊費をどう抑えますか?

3つの方法があります。(1) 地方試験会場のある大学を優先的に選ぶ、(2) 共通テスト利用入試を活用して現地に行く回数を減らす、(3) 受験日程を連続させて1回の遠征で複数校を受験する。早割の新幹線や飛行機を使えば交通費を3割近く抑えられます。

まとめ:受験費用は「見えない教育費」だからこそ先手管理

大学受験費用は、教育資金の中でも「見えにくい出費」の代表格です。授業料のように年間の金額が事前にわかるものとは違い、受験校数や出願戦略によって金額が大きく変動し、しかも2〜3カ月に集中して出ていきます。

だからこそ、高1から月ならし積立で準備し、高2の冬に出願カレンダーで「いつ・いくら必要か」を可視化しておく。この2つの仕組みがあるだけで、受験期の家計は格段に安定します。教育資金の積立口座を受験費用で取り崩さないこと──それが、入学後の授業料を守る最大の防衛策です。

参考文献

  • 東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査」(2024年度)──受験費用の平均額データ
  • 文部科学省「入学辞退者の入学金に関する通知」(令和7年6月26日付、7文科高第491号)──私立大学83校の入学金返還対応
  • 河合塾 Kei-Net「受験や大学生活っていくらかかるの?」──受験料・検定料の一覧
  • ベネッセ教育情報「受験料だけじゃない!大学受験にかかる費用総額は約40万円!?」──受験費用の全体像