FP相談でよく聞かれるのが「高校受験って結局いくらかかりますか?」という質問です。「塾の月謝は把握していたけど、夏期講習や模試は別なんですね……」と後になって驚く保護者を、これまでの相談で何度も見てきました。

高校受験にかかる費用は、塾の月謝だけではありません。模試代・夏期講習代・受験料・私立高校の入学金(複数校受験した場合の「捨て金」含む)・入学時の制服や用品代が、中3の夏から翌年3月の約8カ月間に一気に集中します。この合計が30〜60万円になることも珍しくありません。

結論から言うと家計の見直しが先です。費用の全体像を把握して、中学1年生の段階から月ならし積立を仕込んでおけば、受験期の家計パニックはほぼ防げます。この記事ではFP目線で、高校受験費用の実態と積立設計の3ステップを整理します。

高校受験にかかる費用の全体像

高校受験にかかる費用は大きく「準備期の費用(中1〜中3)」と「受験・入学時の費用(中3秋〜高1春)」の2つに分かれます。

準備期の費用

模試代(中1〜中3)

公立高校を目指す場合、中3だけでなく中1・中2から模試を受ける家庭が増えています。代表的な模試は1回あたり3,500〜5,500円程度。中3では年5〜8回受けることが多く、模試だけで年間1.7〜4.4万円。3年間合計では4〜10万円になります。

塾の夏期講習代

受験の天王山と呼ばれる中3の夏。集団指導塾の夏期講習は6万〜20万円、個別指導塾では10万〜20万円が2026年時点の相場です(受講コマ数・科目数によって変動)。月謝の感覚で考えていると、この一時集中出費に家計が追いつかなくなります。

受験・入学時の費用

費目公立志望コース私立受験ありコース
受験料公立1〜2校:2,200〜4,400円私立3〜5校:6〜10万円
入学金公立:約5,650円私立:平均25万4,599円(2026年度)
制服・用品代約5〜8万円約10〜20万円
仮入学金(捨て金)なし公立発表前に私立へ:20〜25万円

特に私立を滑り止めとして受験する家庭では、公立合格発表前に私立の入学金を納付する「捨て金」が発生します。2026年度の私立高校入学金の全国平均は25万4,599円。公立合格後に返金されることは原則ありません。「備えていなかった」では済まない金額です。

3年間の費用イメージ(積立で準備すべき額)

以下は塾の月謝を除いた「積立で準備すべき受験関連費用」の目安です。

  • 公立高校コース(私立受験なし):模試代+夏期講習+受験料+入学時費用 = 約20〜30万円
  • 公立+私立滑り止め受験コース:上記+私立受験料+入学金(捨て金含む) = 約40〜55万円
  • 私立専願コース:模試代+夏期講習+受験料+入学金+制服代 = 約35〜55万円

この金額が中3の夏から翌春にかけて集中します。月換算すると5〜7万円。毎月の塾代とは別枠で捻出しなければならない費用です。

費用が「集中する」構造が家計を直撃する理由

高校受験費用が家計を直撃する最大の理由は、タイミングの集中です。

  • 中3の7月:夏期講習代(10〜18万円)
  • 中3の10〜11月:秋の模試ラッシュ(3〜4回分)
  • 中3の1〜2月:私立高校受験料(3〜5校分)+仮入学金
  • 中3の3月:公立高校受験料・合格後の入学手続き費用
  • 高1の4月:制服・用品・部活費用

「夏のボーナスで夏期講習を払い、入学金は冬のボーナスで」と計画していた家庭が、ボーナスの使い道が食い合って動けなくなるパターンをFP相談で何度も見てきました。ボーナス頼みに加えて教育資金の積立や生活防衛資金の補充が重なると、一気に家計が回らなくなります。

中1から始める高校受験費用の月ならし積立3ステップ

Step 1:「受験費用カレンダー」で全体像を可視化する

まず、中学3年間の受験費用を時系列で書き出します。進路の方向性(公立志望か私立も受験するか)をある程度決めてから作るのがポイントです。

中1の段階で進路は決まっていなくて当然です。「公立を第一志望にして、私立を滑り止め1〜2校受ける」という中間シナリオで試算しておくと現実的です。私立受験料と捨て金リスクを含めた40〜50万円を3年間(36カ月)で月ならしすると、月1.1〜1.4万円が積立目安になります。

受験費用カレンダーには以下を記入します:

  • 中3の7月(夏期講習代):目安10〜18万円
  • 中3の10〜1月(模試代):合計1〜3万円
  • 中3の1〜2月(私立受験料+仮入学金):合計25〜35万円
  • 中3の3〜4月(公立入学費用+制服代):合計10〜15万円

Step 2:専用口座を開設し、給与日翌日に自動振替を設定する

「受験費用専用口座」を作るのが最大のポイントです。教育資金(大学費用)の積立口座と別にするのには明確な理由があります。

受験費用は使う時期が明確で5年以内に使います。大学費用の積立(こどもNISAや新NISAで運用中)と口座を混在させると、受験費用支払い時に「大学用の資金まで取り崩してしまった」という事態になります。受験費用専用口座は元本保証のネット銀行普通預金が適切で、目標金額が決まっているので無理に運用する必要はありません。

給与日翌日の自動振替を設定したら、あとは放置でOKです。月1.2万円なら3年間で43.2万円が積み上がります。これで中間シナリオ(公立+私立滑り止め)の費用はほぼカバーできます。

Step 3:積立原資を「固定費見直し」で確保する

「月1.2万円の積立余力がない」という家庭に対して、FP相談で最初に確認するのが保険料と通信費です。

  • 通信費の見直し:大手キャリアから格安SIMへ乗り換えると夫婦で月5,000〜8,000円の削減になります。これだけで積立原資の大半が確保できます。
  • 保険料の見直し:子が中学生になると、末子の年齢が上がって死亡保障の必要保障額が下がります。中1のタイミングで保険を全件見直すと、月3,000〜8,000円が浮くケースは珍しくありません。
  • 児童手当の一部を振り分ける:子ども1人あたり月10,000円(3歳〜中学生)が児童手当として支給されます。このうち3,000〜5,000円を受験費用専用口座に直接振り込む設定にするだけで積立がかなり楽になります。

うちの長女のとき実際に感じたのですが、「なんとなく余ったら貯める」ではどの費目にも振り分けられないまま時間が過ぎます。受験費用は「使い道と時期が決まっている支出」なので、専用口座に自動振替する仕組みを先に作るのが正解です。

入学後の3年間の費用も並行して把握しておく

受験費用の積立とは別に、入学後の3年間の費用も把握しておきましょう。

2026年度から高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、私立高校の授業料は所得に関わらず年間45万7,200円まで支援されます。ただし、授業料以外の施設費・制服代・通学費・部活費などは支援対象外。私立高校の初年度納付金(2026年度全国平均)は100万7,549円で、授業料支援を引いた手出し額は年間30〜40万円程度になります(都道府県の上乗せ制度の有無で変動)。

「無償化で私立でも大丈夫」と安心していたら、授業料以外の費用で想定外の支出が続くというのが、最近のFP相談でよく聞かれるパターンです。受験費用の積立と並行して、入学後の月次キャッシュフローも試算しておくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 高校受験の費用は中1から積み立てなくても間に合いますか?

中2から始めても24カ月あります。月1.7〜2.1万円の積立で40〜50万円を確保できます。ただし、中1の段階で始めると月1.1〜1.4万円に抑えられ、固定費の見直しで捻出しやすくなります。「中学生になったらすぐ始める」が最も再現性の高いタイミングです。

Q2. 私立高校を受験しないと決めた場合、積立額を減らせますか?

公立専願コースなら目標金額を20〜30万円に下げられます。月8,000〜11,000円程度の積立で足ります。ただし、受験の方針は中3の秋まで変わることがあります。最初から少なめに積み立てておき、中2冬に受験プランが固まったタイミングで増額調整するのが現実的です。

Q3. 私立高校の入学金(捨て金)は必ず発生しますか?

公立高校の合格発表は多くの都道府県で3月中旬。一方、私立高校の入学金納付期限は合格後2〜3週間以内が一般的です。公立合格まで納付を保留できる私立高校はほとんどなく、「合格したら入学金を納める」前提で準備しておくのが安全です。私立を受験するなら入学金(20〜30万円)は費やす前提で確保しておきましょう。

Q4. 積立口座はどの銀行がおすすめですか?

受験費用は5年以内に使うため、元本割れリスクのある運用は不適切です。金利が0.1〜1.0%程度のネット銀行(楽天銀行、住信SBIネット銀行など)の普通預金に置いておくのが適切です。自動振替設定ができる銀行を選ぶことがポイントです。なお、金利上昇が続く現在では個人向け国債や定期預金も選択肢になりますが、急な出費に対応できる流動性を優先してください。

Q5. 受験費用の積立と大学費用の積立は別々に管理すべきですか?

別々が原則です。受験費用は「5年以内に使う確実な支出」であり、大学費用積立(こどもNISAや新NISA)と同じ口座で管理すると、受験時に大学用の資金まで取り崩してしまう連鎖が起きます。目的別に口座を分けて残高を見える化することで、取り崩し判断を誤りにくくなります。

まとめ:受験費用は「いつか積み立てよう」が一番危険

高校受験費用のポイントを整理します。

  • 受験関連費用(模試・夏期講習・受験料・入学金・制服代)は公立コースで20〜30万円、私立受験ありで40〜55万円
  • 費用の多くが中3の夏〜翌春に集中し、月謝とは別に月5〜7万円の支出が発生する
  • 中1から月1.1〜1.4万円の積立を専用口座で始めれば受験期の家計パニックを防げる
  • 積立原資は通信費・保険料の見直しと児童手当の一部振り分けで確保する

受験費用の積立で最も大切なのは「いつか始めよう」をなくすことです。中学入学のタイミングで自動振替を1本設定する——それだけで受験期の3年後がまったく違う景色になります。

参考文献

  • リセマム「高校受験2026 東京都私立高、初年度納付金は平均100万円超」(2025年12月19日)
  • 文部科学省「高等学校等就学支援金制度について」(2026年度版)
  • 塾選(ジュクセン)「2026年最新 夏期講習の費用はいくら?中学受験・高校受験・大学受験の学年別相場」(2026年)
  • 国立教育政策研究所「子供の学習費調査(令和5年度)」文部科学省