「育休中だから仕方ない」で積立を止めると、半数以上が再開できない

FP相談でよく聞かれるのが「産休に入ったら教育費の積立どうすればいいですか?」という質問です。多くの方が育休中は積立を止めてしまい、復職後に「もう一度始めようと思っているんですが……」と言いながら、気づけば半年以上が経っているというケースを見てきました。

うちの長女のとき実際に経験したのですが、育休中に育児休業給付金の初回振込が約4か月後になることを知らず、その間に貯蓄を50万円以上取り崩してしまいました。「まず手元のお金を安定させてから積立を再開しよう」と思っていたのに、気づけば復職まで積立がゼロのままだった——この体験がFP相談の原点になっています。

積立を一度止めてしまうと、「どうせ再開するなら元の金額に戻さないと意味がない」という心理が働き、満額に戻すのを先延ばしにするうちに半年以上が過ぎてしまうのです。

結論から言うと家計の見直しが先で、積立を止める前にやることがあります。この記事では、収入が減る産休・育休の12か月を「支出断捨離→積立最低額維持→固定費1か所見直し」の3ステップで乗り越えるフレームワークをお伝えします。


産休・育休中の手取りはいくら減る?まず数字で把握する

「育休中は給付金で80〜85%の手取りが確保される」というのは正確に言うと半分正解です。仕組みを理解しないと、家計計画が狂います。

育休給付金の計算式

育児休業給付金は、休業開始前6か月の平均賃金日額 × 67%(育休開始後180日間)→ その後は50%で支給されます。2025年4月から新設された出生後休業支援給付金(13%上乗せ)は、夫婦ともに14日以上取得が条件です。

社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)は育休期間中全額免除なので、手取りベースでは67%+免除効果で実質80〜85%になるというのがよく言われる説明です。

月収(額面)育休給付金(67%)社保免除効果実質手取り目安
20万円約13.4万円約3万円免除約16〜17万円
25万円約16.8万円約3.8万円免除約20〜21万円
30万円約20.1万円約4.5万円免除約24〜25万円

ここで見落とされがちなのが「最初の2〜3か月間は給付金の振込がない」という現実です。育休開始から初回振込まで2〜3か月のタイムラグがあるため、手元に2か月分の生活費を確保せずに育休に入ると家計が底をつきます。

産休中の出産手当金も確認を

産休(産前42日+産後56日)中は出産手当金として標準報酬日額×2/3×98日分が支給されます。月収25万円なら、おおよそ25万円×2/3÷30日×98日≒54万円前後。ただし初回振込は産休終了後さらに1〜2か月後になるので、産休直後も収入がゼロの期間が生じます。


3ステップで育休中の教育資金積立を守る

Step 1:支出の見える化と断捨離(育休前に必ずやる)

育休に入る前の1か月で、家計の支出を全部書き出します。固定費(毎月同じ金額が引き落とされるもの)と変動費(月によって変わるもの)を分けて書き出すだけで、「削れる固定費」が見つかります。

チェックすべき固定費リスト:

  • スマホ代(大手キャリア→格安SIMで月5,000〜15,000円削減可能)
  • サブスクリプション(使っていないサービスの解約)
  • 生命保険・医療保険(独身時代の保障が残ったまま、は多い)
  • ジム・習い事(育休中は一時休会できるケースも)

このStep 1の目標は「月1〜2万円の固定費削減原資を見つけること」です。全部一気にやろうとせず、1か所だけ見直せば十分。固定費の節約は「1回の手続きで毎月効果が続く」ため、変動費(食費・外食費)を無理に削るより時間あたりの効果が圧倒的に高いのです。

Step 2:積立を止めず「最低額」に下げる

教育資金の積立で最大の失敗パターンは「止めること」です。私が見てきたFP相談の実感として、一度止めた積立を自力で再開できた家庭は半数以下でした。

理由は心理的なもので、自動振替を停止した瞬間に「振替しない」が新しいデフォルトになってしまうからです。元の金額(たとえば月2万円)に戻そうとすると心理的ハードルが高くなり、「来月からにしよう」を繰り返して半年が経ちます。

正解は、月5,000円でもいいから自動振替を継続することです。

  • 月2万円の積立 → 育休中は月5,000円に下げる
  • 自動振替の設定は変更するが、停止はしない
  • 復職後の随時改定(手取りが安定)したら元の金額に戻す

月5,000円でも12か月継続すれば6万円が積み上がります。ゼロとの差は6万円だけではなく、「積立の習慣が切れていない」こと自体に価値があるのです。

Step 3:浮いた固定費を差額として積立に上乗せ

Step 1で見つけた固定費削減額をそのまま積立に充当します。たとえば大手キャリアから格安SIMに乗り換えて月8,000円が浮いたなら、Step 2の5,000円に加えて合計13,000円を積み立てられます。

私の家でも夫婦で格安SIMに乗り換えたことで月1.2万円・年間14万円以上の通信費削減に成功し、その全額を教育資金口座の自動振替に充てました。1回の手続きで毎月効果が続く「仕組みの節約」が教育資金積立の継続を支えるのです。

積立原資を確保するための「固定費見直し3選」:

見直し項目月削減額目安手続きの難易度
スマホ(大手→格安SIM)5,000〜15,000円低(オンライン完結)
サブスク見直し(不要なものを解約)1,000〜5,000円低(アプリで確認)
生命保険の重複保障を整理3,000〜10,000円中(証券確認が必要)

育休前に必ずやっておく「空白期間」対策

育休中の家計管理で最も危険なのは、給付金の初回振込前の「空白期間」です。育休開始から初回振込まで2〜3か月かかるため(産後育休の場合は出産から4か月ほど)、この期間の生活費を事前に確保しておかないと、教育資金を取り崩すことになります。

育休前に普通預金に確保すべき金額の目安

  • 生活費の3か月分(家賃・光熱費・食費など)
  • 住民税(育休中も前年所得に基づいて課税。年払い・月払いの確認を)
  • 出産費用の自己負担分(一時金50万円で賄えない分)

この3つを合わせると、多くの家庭で80〜100万円が目安になります。教育資金専用口座とは別の普通預金(生活防衛資金口座)に積んでおくことが重要です。混在させると育休中に教育資金まで取り崩す「連鎖」が起きます。

育休中の新NISA・iDeCoはどうする?

育休中に新NISAの積立を続けるかどうかは、家計キャッシュフロー次第です。基本の考え方は以下の通りです。

  • 新NISA(成長投資枠・つみたて枠):最低額に下げて継続。いつでも引き出せる器なので柔軟に対応できます。
  • iDeCo:育休中でも掛金の拠出は可能(ただし節税効果は所得がある年のみ)。所得がゼロになる場合は拠出を一時停止するより、最低掛金5,000円で継続するほうが長期の複利効果を維持できます。

家計が厳しい場合の優先順位は、①生活費の確保 → ②教育資金の最低額維持 → ③新NISA → ④iDeCoの順です。生活費が底をつく状態でNISAに積み立てるのは本末転倒です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に新NISAを始めてもいいですか?

A. 始めることはできます。ただし、育休前に生活防衛資金(3か月分の生活費)と空白期間対策(80〜100万円)を確保してからが鉄則です。資産形成は生活の安定が前提です。まず固定費を見直して積立原資を作り、最低額(月5,000円)から開始するのが最も再現性の高い方法です。

Q2. 育休中に積立を止めた場合、復職後にすぐ元の金額に戻すべきですか?

A. 元の金額にいきなり戻す必要はありません。復職後は随時改定(育休前→復職後の標準報酬月額変更)が発生するまで社会保険料が旧額で引かれる「タイムラグ期」があります。手取りが安定する4か月目以降に増額するのが現実的です。焦って無理な金額に戻すと、また止まるリスクがあります。

Q3. 産休中(産前42日〜産後56日)も積立は継続すべきですか?

A. 継続できるなら継続が理想です。ただし出産手当金の初回振込は産休終了後さらに1〜2か月後になるため、手元キャッシュに余裕がない場合は産休入りのタイミングで最低額(月5,000円)に下げ、住民税・出産費用対策を優先してください。

Q4. 育休中は住民税をどうやって払うのですか?

A. 育休前は給与から天引きだった住民税が、育休中は「自分で納付」になります(特別徴収→普通徴収への切り替え)。前年の所得を基に計算されるため、特に産前の収入が高かった場合は年間数十万円になることもあります。6月に届く住民税決定通知書の金額を確認し、毎月分を普通預金に積み立てておくことで「まとめ払い」の衝撃を回避できます。

Q5. 育休中に教育資金を全部使ってしまった場合はどうすればいいですか?

A. 復職後に焦って大きな金額を積み立て直そうとするより、まず「月5,000円の自動振替を復活させること」だけを目標にしてください。金額よりも「習慣を再開する」行為そのものが大切です。固定費を1か所見直した差額を積立に充てる方式で、半年かけて元の金額に近づけていくのが最も再現性の高い方法です。


まとめ:育休中でも積立を止めない3ステップ

  1. Step 1(育休前):支出を全部書き出し、固定費を1か所だけ見直して削減原資を作る
  2. Step 2(育休中):積立金額を止めず「月5,000円」の最低額に下げて継続
  3. Step 3(育休中):浮いた固定費差額をそのまま積立に上乗せして積立額を積み上げる

育休中に積立を止めてしまうことは、意思の弱さではなく「止め方」の問題です。自動振替を一度停止すると、再開するには能動的な手続きが必要になります。これがデフォルト効果の逆作用として家計を圧迫するのです。

産休・育休の12か月は家計を大きく変える転換期でもあります。固定費の見直しを「育休前の宿題」として終わらせておけば、手取りが減った育休中も積立の継続とキャッシュフローの安定を両立できます。


参考文献・データ出典

  • 厚生労働省「育児休業給付について」(2026年)
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「育児休業中の保険料免除について」(2026年)
  • 厚生労働省「出生後休業支援給付・育児時短就業給付」(2025年)