FP相談でよく聞かれるのが、「子どもが友達にお金を貸したらしい」「おごってあげたと言っている」という相談です。小学校高学年あたりから子ども同士だけで買い物に行く機会が増え、そこで起きるお金のトラブルは想像以上に多い。金融広報中央委員会(知るぽると)も、子ども同士の金銭の貸し借りがいじめや仲間外れなどの問題行動に発展しやすいと警鐘を鳴らしています。
結論から言うと、トラブルが起きてから対処するのではなく、お小遣いを渡し始める段階で「お金の境界線」を親子で決めておくことが最大の予防策です。今回は、FP相談の現場で繰り返し見てきた3つのトラブルパターンと、わが家で実践している予防ルールを整理します。
子ども同士の金銭トラブルが増える構造的な理由
子どもの金銭トラブルが増えている背景には、2つの構造変化があります。
1つ目はキャッシュレス化です。交通系ICカードやプリペイド式電子マネーの普及で、「ピッとあてるだけ」で買えてしまう環境が広がっています。うちの長女のとき実際に、長男に持たせた交通系ICカードで友達の分のジュースまで買ってあげていたことがありました。現金なら財布の中身が減る実感がありますが、電子マネーでは「お金を使った」という感覚が薄れがちです。
2つ目は行動範囲の拡大です。小学校高学年になるとコンビニや100円ショップに子どもだけで行く機会が増えます。親の目が届かない場所で、少額の貸し借りやおごりが日常化しやすい環境ができているのです。
FP相談で繰り返し見る金銭トラブル3パターン
パターン1:少額の貸し借りがエスカレートする
最も多いのが「100円だけ貸して」から始まるパターンです。最初は自販機やコンビニでの少額ですが、返さなくても何も起きないと学習すると、金額も頻度も増えていきます。FP相談では、気づいたときには合計で数千円に膨らんでいたケースを何度も見てきました。
厄介なのは、貸した側は「貸した」と思っているのに、借りた側は「もらった」と認識しているケースが少なくないこと。大人の世界でも金銭トラブルの多くはこの認識のズレから生まれますが、子どもはなおさらです。
パターン2:おごり・おごられの常態化
「お小遣い余ってるから買ってあげるよ」「今度おごってね」──こうしたやりとりが繰り返されると、おごる側・おごられる側の力関係が固定化します。最悪の場合、「買ってくれないなら遊ばない」という形でいじめにつながることもあります。
2024年3月には名古屋市で、小学生が友人に騙されて93万円を支払わされた事件も報道されました。極端な事例ではありますが、少額のおごりが大きなトラブルの入口になりうることは知っておくべきです。
パターン3:ゲーム課金・プリペイドカードの立て替え
オンラインゲームのギフトコードやプリペイドカードの立て替えも、近年急増しているトラブルです。「コンビニで買っておいて。あとで返すから」と頼まれて1,000〜3,000円を立て替えたまま返してもらえない、というケースがFP相談でも増えています。金額が大きく、親が気づいたときにはすでに複数回やりとりが行われていることが多いのが特徴です。
家庭で教える「お金の境界線」ルール──3ステップ
ステップ1:「貸さない・借りない・おごらない・おごられない」の4原則を伝える
お小遣いを渡し始めるタイミングで、この4つの原則を子どもに伝えましょう。わが家ではお小遣い契約書を親子で作っていますが、その中に「友達とのお金の貸し借りはしない」を1項目として明記しています。
ただし、頭ごなしに「ダメ」と言うだけでは子どもは納得しません。「お金を貸すと、返してと言いにくくなって友達関係が壊れることがあるんだよ」と理由をセットで伝えるのがポイントです。
ステップ2:「お金が足りないとき」の行動ルールを事前に決める
友達と出かけてお金が足りなくなる場面は必ず来ます。そのとき「友達に借りる」以外の選択肢を、事前に親子で決めておくことが大事です。
- 自分の持っているお金で買えるものだけ買う
- 買えないなら「今日はやめておく」と言う
- どうしても困ったら、その場で親に電話する
「払えないなら断る勇気を持つ」──これは知るぽると(金融広報中央委員会)も子ども向けの金融教育で繰り返し伝えているメッセージです。
ステップ3:月1回の「お金の振り返り」で変化を察知する
お小遣い帳やICカードの履歴を月1回確認する習慣があれば、不自然な支出や残高の急減に早めに気づけます。わが家では月末の土曜日に長男とICカードの利用履歴を一緒に確認していますが、ここで「あれ、この分は?」と声をかけるだけで、子ども自身が使い方を振り返るきっかけになります。
大事なのは「叱る場」ではなく「確認する場」にすること。追及されると思うと、子どもは隠すようになります。「先月より使ってるね。何かあった?」くらいの声かけで十分です。
もしトラブルが起きてしまったら
予防していてもトラブルが起きることはあります。その場合の対応手順を整理しておきます。
- まず子どもの話を聞く──感情的にならず、「何があったか教えて」と事実を確認する
- 相手の保護者に連絡する──子ども同士の解決に委ねず、大人が介入する。日常的な付き合いがない場合は、学校の先生に仲介を頼むのも有効
- 金額と経緯を記録する──口頭だけだと「言った・言わない」になるため、日付・金額・状況をメモに残す
- 再発防止のルールを更新する──トラブルを経験した後こそ、ルールの見直しタイミング
よくある質問(FAQ)
Q1. 子ども同士のお金トラブルは何歳くらいから注意すべき?
小学校高学年(小4〜小5)が最も注意が必要な時期です。子どもだけで買い物に行く機会が増え、お小遣いの額も上がる時期と重なります。ただし低学年でも、友達にお菓子を買ってあげた・もらったという小さなやりとりは起きるので、お小遣いを渡し始めた段階でルールを伝えるのがベストです。
Q2. 子どもが「友達におごってもらった」と言ってきたらどうする?
まずは冷静に状況を聞き、相手の親にお礼と確認の連絡を入れましょう。「おごってもらうのは嬉しいけど、お金のやりとりはトラブルになりやすいから、次からは自分の分は自分で払おうね」と伝えます。相手の家庭のお金の方針を否定せず、自分の家のルールとして伝えるのがコツです。
Q3. お金のトラブルが起きたとき、学校に相談してもいい?
相談して構いません。特に相手の保護者と面識がない場合は、担任の先生に間に入ってもらうほうがスムーズです。学校側も子ども同士の金銭トラブルには注意を払っており、相談することで同様のケースが他にも起きていないか確認してもらえることもあります。
Q4. 電子マネーを持たせるとトラブルが増える?
電子マネー自体が悪いわけではありませんが、現金に比べて「使った実感」が薄いため、おごりや立て替えのハードルが下がりやすいのは事実です。導入する場合は、チャージ上限を低く設定し、月1回の履歴確認を習慣にすることで予防できます。
Q5. 子どものお年玉を友達に見せたがるのですが、やめさせるべき?
お年玉に限らず、持っている金額を友達に見せたり話したりすることはトラブルの種になります。「お金の話は家族の中でするもの」というルールを、小さいうちから伝えておきましょう。
まとめ
子ども同士の金銭トラブルは、「わが家には関係ない」と思っている家庭ほど対策が遅れがちです。FP相談の現場では、家庭の年収や教育方針に関係なくトラブルは起きています。
大切なのは、お小遣いの「渡し方」だけでなく「使い方のルール」まで含めて子どもに伝えること。お金の貸し借りをしない、おごり・おごられをしない──この境界線を親子で共有しておくだけで、トラブルのリスクは大幅に下がります。ルールは一度決めたら終わりではなく、子どもの成長に合わせて年に1回は見直す。その積み重ねが、子どものお金のリテラシーを育てる一番の近道です。
参考文献
- 金融広報中央委員会(知るぽると)「子ども同士でお金のかし借りをしてはなぜいけないの?」
- 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第3回)2015年度」
- 学研キッズネット「小学生が「奢る」!? 令和時代の子どもの金銭トラブルを防ぐシンプルな方法」
- きずなネットよみものWeb「子ども同士の金銭トラブルに注意! よくあるケースと対策【FP解説】」






