「布団に入ってもう1時間。子どもはまだ元気で、私のほうが先に寝そう」。夜、キッチンの片づけも自分の時間もないまま、暗い部屋で天井を見ている方は多いと思います。
保護者面談でよく出るのが、この「寝かしつけが終わらない」という相談です。結論から言うと、原因は「寝かしつけの技術」ではなく、その日の昼寝・夜の光・寝る前の過ごし方のどれかに偏りがあることがほとんどです。この記事では、見直す順番を3つに絞ってお伝えします。
まず確認したい「1日の睡眠の合計」
最初に見るのは、夜の寝つきではなく1日トータルの睡眠時間です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を紹介する自治体資料では、米国睡眠医学会の推奨として、1〜2歳で11〜14時間、3〜5歳で10〜13時間とされています。また大田区の資料では、午前寝や昼寝も含めて1日単位で見直すよう案内されています。
| 年齢 | 1日の睡眠時間の目安 |
|---|---|
| 1〜2歳 | 11〜14時間 |
| 3〜5歳 | 10〜13時間 |
たとえば3歳で、夜20時に布団に入って21時半に寝て朝7時に起きると、夜の睡眠は9時間半。そこに午睡が2時間あれば合計11時間半で、目安の範囲に収まります。つまり、「寝つきが悪い」のではなく「昼にすでに必要な分を取っている」可能性があるわけです。もちろん目安は範囲であり、必要な睡眠量には個人差があります。数字は「うちの子の全体像を見る物差し」として使ってください。
見直し1:昼寝の「長さ」と「終わる時刻」
園で見ている限り、夜に寝つけない子の多くは、午睡の終わりが遅いか、長いかのどちらかです。園では13時ごろから寝て、15時前後に起こす流れが一般的ですが、休日に家で夕方16時すぎまで寝かせてしまうと、その夜は確実に寝つきが後ろにずれます。
- 休日の昼寝は「起こす時刻」から決める:15時台までに起こすと決め、寝始めが遅ければ短く切り上げます。
- 起こし方は明るさから:カーテンを開けて、声をかけながら体をさすります。急に抱き上げるより機嫌が持ちます。
- 昼寝なしの日を作る必要はまだない:3歳ごろは、昼寝をしない日があっても夕方に眠くなる子が多く、いきなり全廃しないほうが夕方のぐずりが少なく済みます。
保育園でお昼寝をしない3歳児についても、午睡を「卒業」していく段階はあります。ただ、家で寝かしつけに時間がかかるからという理由だけで昼寝をやめると、夕方に電池が切れて、かえって夜が崩れることもあります。まずは「短くする」「早めに終える」から試してください。
見直し2:夜の「光」と「画面」
次に見るのは、夜の明るさです。富士市の資料は、画面の光が深い眠りに必要なメラトニンの分泌を抑えて睡眠を浅くすると説明し、就寝前1時間はスマホや携帯ゲームを使わないことを勧めています。兵庫県のガイドラインも、寝る1時間前から画面を見ないことと、暖色系の照明を使うことを挙げています。
ただ、現実には「動画を見せている間に夕食の片づけをしている」というご家庭も多いはずです。責める話ではありません。次のように、できる範囲から変えていけば十分です。
- 夕食後〜お風呂の間に動画を見る時間を移し、お風呂以降は見ない流れにする
- 寝る1時間前から部屋の照明を落とす(天井灯を消してスタンドライトだけにする)
- 画面を消すとき、「おしまい」を予告して、終わりを一緒に決める
画面を消した直後に泣くのは、眠れないからではなく切り替えが難しいからです。この切り替えの難しさは年齢相応のもので、「予告」と「次にやること」をセットにすると落ち着きやすくなります。
見直し3:寝る前30分の「流れ」を固定する
園の午睡前を思い浮かべてみてください。トイレ、パジャマ(着替え)、絵本、電気を少し落とす、と毎日同じ順番です。子どもは「次に何が起きるか」が見えると、体が先に眠る準備に入ります。家庭でも、この流れを固定するだけで寝つきが変わる子は少なくありません。
おすすめの流れ(約30分)
- 歯みがき・トイレ(5分)
- 布団に移動し、照明を落とす
- 絵本を1〜2冊(5〜10分)。冊数をあらかじめ決めておく
- 「今日楽しかったこと」を1つだけ話す
- 「おやすみ」と言い、同じ言葉で部屋を静かにする
絵本が好きで園の棚を毎月入れ替えている私は、「もう1冊」の攻防が寝かしつけを長引かせる最大の原因だと感じています。「2冊読んだらおしまい」と最初に約束し、読み終えたら本を棚に戻す動作までを儀式にすると、終わりが子どもにも分かります。
また、寝る前の「どうして寝ないの」「早く寝て」という声かけは、子どもに焦りを伝えてしまい、覚醒を促します。ゆっくりした声で「ここにいるよ」と伝えるほうが効果的でした。
それでも寝ないとき:焦らず続ける目安
見直しの効果は、1日では出ません。1〜2週間は同じ流れを続けて様子を見ます。途中で毎日変えると、子どもにとっても何が合図か分からなくなるためです。
- 入眠までの時間が少しずつでも短くなっている → そのまま継続
- 変化がない → 昼寝の終了時刻を30分早めるなど、1つだけ条件を変える
- 日中の眠気が強い、いびきや呼吸の乱れが目立つ、夜中に何度も長く起きる → 小児科や自治体の相談窓口で相談
他の子と比べると見落としますが、寝つきの早さは気質の影響も大きく、敏感でなかなか切り替えにくい子ほど時間がかかります。長く付き合っている私の実感として、「寝かしつけに1時間かかる子」が、環境を整えた数週間後に30分に縮まった例は何度も見てきました。
親の「自分の時間」も設計に入れる
私自身、小3の長男が小さかったころ、寝かしつけながら先に寝てしまい、翌朝に洗い物が残っている日が続きました。夜に何も終わらないと、翌日の気持ちに響きます。
- 洗い物や明日の準備は、寝かしつけの前に済ませる
- パートナーがいる場合は、曜日で寝かしつけ担当を交代する
- 「寝かしつけ中の30分は休憩時間」と割り切る。スマホは見ない、あるいは暗い画面で見るなど、子どもの眠りを邪魔しない約束を決めておく
保護者の疲れが減ると声のトーンが穏やかになり、結果として寝かしつけも短くなる、という循環は、現場でもよく見られます。
よくある質問
Q. 昼寝は何歳でやめるべきですか?
年齢で一律には決まりません。園では5歳児クラスで午睡を休息中心に切り替える園が多いですが、家庭では夕方に眠くならず、夜も無理なく寝つけるようであれば、自然に卒業へ向かっています。迷うときは「昼寝を短くして夜の様子を見る」から始めてください。
Q. 寝かしつけで抱っこや添い寝をするのは癖になりますか?
安心して眠るための関わりなので、悪いことではありません。ただ、毎晩ずっと続けて負担が大きい場合は、まず「同じ流れ」を整え、そのあとに少しずつ手を離す段階を作ると無理がありません。
Q. 夜中に起きて泣くのも見直しで改善しますか?
昼寝や就寝リズムの影響が出ることもありますが、夜泣きや夜驚症など別の要因もあります。頻繁に続く、呼吸が苦しそう、日中の様子が気になる場合は、小児科で相談してください。
Q. 休日に寝坊させると、リズムが崩れますか?
平日との差が大きいと崩れやすくなります。目安として、起床時刻の差は1時間以内にとどめると、翌週のスタートが楽になります。
まとめ
寝かしつけが長いとき、見直す順番は「①1日の睡眠合計と昼寝の終わり→②夜の光と画面→③寝る前30分の流れ」です。1つずつ、1〜2週間かけて試してみてください。うまくいかない日があっても、子どもの性格や育て方の問題ではありません。園で見ている限り、ほとんどの子は環境が整えば、少しずつ自分で眠りに入れるようになっていきます。






