2026年6月、日銀が政策金利を0.75%から1.0%に引き上げました。SNSでは「また変動ローンの返済が増える」「もう固定に切り替えるべきか」という声が飛び交っています。

FP相談でよく聞かれるのが「住宅ローン返済が増えるから、教育資金の積立を減らしてもいいか」という質問です。結論から言うと家計の見直しが先。減らす前に、すでに積み上げた教育資金の「置き場所」を見直すだけで、ローン返済増を相殺できる可能性があります。

うちの長女のとき実際に、3人分の教育資金をメガバンクの普通預金に何年も放置していたことに気づいたのは、ちょうど住宅ローンの返済額増加を家計簿で確認したタイミングでした。「損している分を取り返せる」と思って、すぐに預け先の見直しを始めたのです。

日銀1%時代──損しているのは「普通預金に眠らせている人」

利上げは、住宅ローンを抱える世帯にとっては返済増ですが、預金・国債を持つ世帯にとっては利息が増えるチャンスでもあります。2026年8月現在の主な金利を整理すると、次のとおりです。

商品金利(年率・目安)特徴
メガバンク普通預金0.30%前後利上げで改善も依然低水準
ネット銀行 普通預金(高金利型)0.6〜1.0%程度条件あり、流動性高い
ネット銀行 定期預金(1年)0.5〜1.5%程度キャンペーン期間限定あり
個人向け国債 変動10年1.87%(2026年8月募集)1年後から中途換金可
個人向け国債 固定5年2.06%(2026年8月募集)5年間金利固定

もし子どもの教育資金500万円をメガバンクの普通預金(0.30%)に入れたままなら、年間利息は約1万5,000円。それを個人向け国債変動10年(1.87%)に移すと年間約9万3,500円。差し引き年約7万8,000円の差が生まれます。

一方、変動金利住宅ローン残高3,000万円に今回の利上げ(短プラ+0.25%相当)が反映されると、年間の利息負担は約4.5万円増になる計算です(5年ルールにより返済額自体は翌年1月まで据え置きになるケースが多いですが、利息の比率は上昇しています)。

教育資金の置き場所を変えるだけで、ローン返済増(年4.5万円)を利息増(年7.8万円)が上回る構造が作れます。

FP流3ステップ──置き場所を変えて差し引きプラスにする

Step 1:教育資金を「使う時期」で棚卸しする

まず、教育資金がどこにいくら、いつ使う予定で置いてあるかを確認します。子ども別・口座別に書き出し、使う時期を付記してください。確認すべきリストは次のとおりです。

  • 子ども名義の銀行口座(普通預金・定期預金)
  • 学資保険(満期時期と満期金を確認)
  • 新NISAで積み立てている教育資金分
  • 生活費口座に混在している教育費用の積み立て

「複数の口座に分散していて全体像がわからない」というのがFP相談でよく聞かれる悩みです。ExcelでもA4一枚の手書きメモでも構いません。まず書き出すことが最初の一歩です。

Step 2:使う時期で3分類し、最適な置き場所に移す

棚卸しした教育資金を、使う時期で次の3分類に振り分けます。

分類A:1〜2年以内に使うお金

来年の受験費用、今年の塾の夏期講習代や模試代など、短期で使う分。元本割れが絶対に許されないため、ネット銀行の普通預金(0.6〜1.0%程度)が最適です。メガバンクより利息を稼ぎながら、必要なときに即座に引き出せる流動性を確保できます。

分類B:3〜5年後に使うお金

高校入学の準備費用、中学受験の塾代ピーク(小4〜小6)など、3〜5年後に使う見込みのもの。ネット銀行の定期預金(1年もの、0.5〜1.5%程度)個人向け国債 固定5年(2.06%)が候補です。1年ごとに更新しながら金利の上昇にも対応できます。

分類C:5年以上先に使うお金(主に大学進学費用)

小学校低学年〜中学年の子の大学費用など、5年以上先のもの。個人向け国債 変動10年(2026年8月現在1.87%)が有力です。半年ごとに金利が見直されるため、今後も利上げが続けば利率がさらに上がる可能性があります。1年後から中途換金も可能です。

分類使う時期おすすめの置き場所目安金利(2026年8月)
A1〜2年以内ネット銀行 普通預金0.6〜1.0%程度
B3〜5年後ネット銀行 定期預金(1年)0.5〜1.5%程度
C5年以上先個人向け国債 変動10年1.87%(2026年8月募集)

注意点:新NISAやこどもNISA(2027年開始予定)で運用中の分は、使う時期が3〜5年以内に近づいてきたら段階的に現金化することを検討してください。含み損がある状態での換金は損失確定になるため、タイミングは慎重に判断することが必要です。

Step 3:ローン返済増と利息増を差し引き計算して確認する

最後に、今回の見直しで家計全体がどう変わるか、差し引き計算で確認します。

【試算例:横浜市在住・共働き世帯・子ども2人・住宅ローン残高3,000万円】

項目年間の変化
変動ローン利息増(短プラ+0.25%相当・残高3,000万円)約▲4.5万円
教育資金500万円 メガバンク普通預金→個人向け国債変動10年へ約+7.8万円
差し引き約+3.3万円

住宅ローンの利息増(年4.5万円)を、教育資金の利息増(年7.8万円)が約3万円上回る計算です。「積立を減らしたい」という結論に飛びつく前に、すでに貯まっている教育資金の置き場所を変えるだけで、家計がプラスになります。

繰り上げ返済のために教育資金を取り崩すのは最悪のパターンです。教育費は「いつ使うか」という期限がある資金なので、住宅ローンの利息削減より優先度が高いのです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 繰り上げ返済と教育資金の置き場所見直し、どちらが先ですか?

教育資金の置き場所見直しが先です。住宅ローンを繰り上げ返済するために教育資金を取り崩すのは避けてください。使う時期が確定している教育費は、住宅ローンの利息削減より流動性を確保することが優先です。教育費の現金を確保したうえで、余裕資金があれば繰り上げ返済を検討するのが正しい順序です。

Q2. 個人向け国債の「1年間は中途換金不可」が不安です。急な出費が必要になったら?

分類A(1〜2年以内に使う分)はネット銀行の普通預金に置き、国債には入れないことが前提です。「国債を買ったら使えない」という不安は、3分類を守ることで解消できます。緊急時に備えた生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)も、国債ではなく普通預金・定期預金で別管理してください。

Q3. 固定金利住宅ローンへの借り換えは検討すべきですか?

これは教育資金とは別の判断です。「残高が大きい・今後さらに利上げが続きそう・教育費と老後資金のダブルピークが重なる」という3条件が重なる場合は、FPへの個別相談を検討してください。フラット35「子育てプラス」(子ども3人で当初5年間0.75%引き下げ)という選択肢も参考にしてください。ただし、まず教育資金の置き場所見直しを先に行い、プラス効果を確認してから借り換えを検討するほうが冷静に判断できます。

Q4. ネット銀行のキャンペーン金利は信頼できますか?

キャンペーン金利は期間・条件限定です。「新規口座開設者のみ」「○月末まで」といった制約がある場合が多く、終了後は通常金利に戻ります。継続性を重視するなら、通常金利自体が高いネット銀行の普通預金・定期預金を選ぶほうが安定的です。GMOあおぞらネット銀行やauじぶん銀行など、2026年現在通常金利が比較的高い銀行を複数比較したうえで選んでください。

Q5. 新NISAで積み立てている教育資金も今すぐ売却すべきですか?

急いで売却する必要はありません。5年以上先に使う分は引き続き新NISA・親のNISA枠で運用し、使う時期が3年以内に近づいてきたら段階的に現金化するのが基本です。利上げ局面で株式相場が不安定になっても、まず「使う時期はいつか」で冷静に判断してください。含み損がある場合は回復を待つ余裕があるかどうかで判断し、焦って換金しないことが重要です。

まとめ

日銀の利上げは「ローン返済増」だけを見ると不安になりますが、「預金・国債の利率上昇」というプラス面が同時に起きています。教育資金の置き場所を3ステップで見直すだけで、年間数万円単位の利息増を実現でき、ローン返済増を相殺できるケースは珍しくありません。

  • 1〜2年以内に使う分 → ネット銀行の普通預金(0.6〜1.0%)へ
  • 3〜5年後に使う分 → ネット銀行の定期預金(0.5〜1.5%)へ
  • 5年以上先の大学費用 → 個人向け国債 変動10年(1.87%)へ

結論から言うと家計の見直しが先。積立を減らす前に、今ある教育資金がどこにいくら、いつ使う予定で置いてあるかを確認してみてください。毎年4月の「教育資金棚卸しデー」にこの3分類を更新する習慣をつけると、金利環境の変化に柔軟に対応できます。

参考文献・出典

  • 財務省「個人向け国債 変動10年・第159回(2026年8月募集)利率 年1.87%」
  • 日本銀行「当面の金融政策の運営について(2026年6月)─政策金利を1.0%へ引き上げ」
  • 綾野1級FP事務所「短期プライムレート推移グラフ【2026年8月更新】2.125%│住宅ローン変動金利への影響」
  • LIMO&ファイナンス「【速報】個人向け国債(変動10年)の利率、2026年8月募集分は年1.87%になる見通し。7月から0.07%上昇」