2025年度の男性育休取得率が50.9%に到達した。ニュースでは「パパ育休がついに過半数」と報じられ、転職市場でも「男性育休実績あり」を打ち出す企業が増えている。
でも、こんな話を保育園の送り迎えで聞くことが増えた。
「転職先の求人票に"男性育休取得実績100%"って書いてあったんですよ。面接でも問題ないって言われて。でも実際に申し出たら"うちは1〜2週間が実態"で、長く取ると評価に影響するって遠回しに言われて…」
実際に育休取った身として言うと、「育休が取れる会社かどうか」は、数字を一枚見ただけでは分からない。制度と文化は別物だ。この記事では、転職活動中のパパに向けて、求人票・口コミ・面接の3段階で育休取得の「実態」を確認する方法を整理する。
まず知っておきたい「育休取得率」という数字の3つの落とし穴
転職活動で「育休取得率」の数字を見るとき、以下の3点に注意が必要だ。
落とし穴①:「1日取ったら取得扱い」になる
育休取得率の計算では、期間を問わず「育休を1日でも取得した」社員は取得者にカウントされる。つまり取得率100%でも、実態は全員5日未満という会社もありえる。実際、厚生労働省の調査(2023年度)によれば、育休を取得した男性の6割が1ヶ月未満、うち「5日未満」が16%、「5日〜2週間未満」が22%だった。
落とし穴②:業種・規模で数字が大きく違う
50.9%は全国平均の数字だ。業種・企業規模によって実態は大きく異なる。大企業や官公庁、IT・金融では取得率が高い傾向がある一方、建設・運輸・製造の現場系では低い傾向がある。一社の数字を全体像と混同しないようにしたい。
落とし穴③:「申請できた」と「実際に取りやすい」は別の話
上司の反応、同僚の空気、業務引き継ぎ体制の整備度合い──これらは数字に現れない。形式的に申請は通るが、職場の雰囲気で「2週間が限界」になるケースが実態として多い。
Step 1:求人票で確認すべき3つの指標
求人票や会社の採用サイトを見るとき、「取得率」の数字だけでなく以下の3点を確認する習慣をつけてほしい。
① 育休「平均取得日数」を探す
取得率と並んで「平均取得日数(期間)」を開示している企業は、実態の透明性が高い会社と見てよい。2週間取得率99%と6ヶ月取得率50%では、文化がまったく違う。有価証券報告書、CSRレポート、厚生労働省の「両立支援のひろば」にも一部企業の実績が掲載されている。
② 男女別の取得率の差を見る
女性取得率が高く、男性が極端に低い会社(たとえば女性97%・男性12%)は、制度はあっても男性取得を想定した職場文化が整っていない可能性がある。男女差が20ポイント以内であれば、比較的文化として定着していると見てよい。
③ 育休取得率の公表を義務化された企業か確認する
2025年4月から、従業員300人超の企業は男性育休取得率の公表が義務化された(改正育児・介護休業法)。300人以上の企業であれば厚生労働省の「育休取得率公表」サイト(両立支援のひろば)や有価証券報告書で実績が確認できる。
Step 2:口コミサイトで「建前の外側」を読む
求人票は企業の公式発信だ。実態を知るには、退職者・現職者の声を集めた口コミサイトを活用する。
確認先とチェックポイント
- OpenWork(旧Vorkers):「残業・有給」カテゴリに育休についての記述が多い。「育休」で絞り込んで男性の投稿を探す。
- 転職会議:「働きやすさ・ライフスタイル」の評価点と口コミが参考になる。
- LinkedIn・Glassdoor:外資・IT系企業の場合は英語口コミも参考になる。
ポジティブな口コミ(「男性社員でも6ヶ月取れた」「上司が背中を押してくれた」)と並んで、ネガティブな口コミに本音が出やすい。「申し出たら上司が渋った」「取ったら人事評価が下がった気がする」といった記述が複数あれば、制度はあっても文化として根付いていないサインと読むべきだ。
ただし口コミは古い情報も混じる。投稿年度を確認し、2025年以降の口コミを優先して見るようにしたい。
Step 3:面接で「本音を引き出す」3つの質問術
ここが一番重要なステップだ。面接は、求人票や口コミでは分からない「今の現場の空気感」を直接確認できる数少ない機会だ。
上司にどう切り出したかなんですけど──私が育休取得を申し出たときも、単なる「相談」ではなく「報告+事実確認」のフォーマットを使った。面接での育休確認も同じ考え方が使える。
質問①:「男性社員の育休取得実績を具体的に教えてもらえますか?」
「取れますか?」という疑問形ではなく、「取得実績(事実)を教えてください」と聞く。事実を尋ねているので答えやすく、かつ「実際に取った社員がいる」という具体的な情報を引き出せる。「〇〇さんが昨年3ヶ月取得されました」という回答が出れば信頼度が上がる。
質問②:「取得した社員の業務引き継ぎはどのように対応されましたか?」
育休を取る社員本人の心配より、業務が回る体制があるかという角度で聞く。「引き継ぎ計画は本人と上司で相談して」という回答は体制未整備のサイン。「あらかじめ担当変更のプロセスがある」「バックアップ人材のアサインをしている」という回答は体制が整っているサインだ。
質問③:「育休取得前後のキャリアへの影響を教えてもらえますか?」
少し踏み込んだ質問だが、これを普通に答えられる会社は文化として育休が定着している。「育休は人事評価に影響しない」「復職後のキャリアパスは変わらない」という答えが具体的に出てくるかを確認したい。言葉を濁したり「基本的には…」という答えが返ってくる場合は、実態として影響がある可能性がある。
内定後の「最終確認」:就業規則で制度を確認する
内定が出たら、入社前に就業規則の育児関連規定を確認する権利がある。人事担当者に「就業規則の育児関連規定を確認させてもらえますか」と伝えれば、ほとんどの企業は対応してくれる。
確認すべきポイントは以下だ:
- 育休取得の申し出タイミング(「出産予定日の〇週間前まで」など)
- 社会保険料免除の扱い
- 3歳以降の柔軟措置(フレックス・テレワーク等)の整備状況
- 育休終了後の業務復帰の扱い(同部署・同役職か)
また「過去に男性で育休を取得した社員と話せますか?」と人事に依頼することも有効だ。社内紹介が難しい場合でも、「先輩社員との面談」という形でOBOG紹介を求められる場合がある。
まとめ:「取れますか?」より「実績を教えてください」
転職活動における育休確認は、「取れますか?」という問いかけではなく、「実績・体制・文化」の3点を事実として確認するプロセスだ。
- 求人票:取得率だけでなく平均日数・男女別格差を確認
- 口コミ:ポジティブ・ネガティブ両方を最新年度の投稿で読む
- 面接:「取れますか?」でなく「実績・引き継ぎ体制・キャリア影響」を事実として確認
育休取得率50.9%という数字は、確かに社会が変わりつつある証拠だ。でも、その数字が自分の転職先で「6ヶ月取れる」ことを意味するかどうかは、自分で確認するしかない。時短復職のリアルは、制度よりも文化と上司で決まる──転職先でも同じだと思っている。
よくある質問(FAQ)
Q1. 面接で育休の話をすると選考に不利になりませんか?
「取れますか?」という曖昧な聞き方より「実績を教えてください」という事実確認のフレームで聞けば、入社意欲の低下とは受け取られにくい。ただし、志望動機や業務への意欲を十分に伝えた後に確認するのが自然なタイミングだ。選考初期より最終面接・内定後に聞く方がリスクは低い。
Q2. 中小企業(300人未満)でも育休取得率を調べる方法はありますか?
300人未満の企業は取得率の公表義務がないため、公的データで確認することが難しい。口コミサイトの情報か、面接での直接確認が主な手段になる。中小企業の場合、「社長が方針として男性育休を推奨している」という文化的な支持が取得の現実的なカギになることが多い。
Q3. 育休取得率100%の会社は本当に取りやすいのですか?
必ずしもそうとは言えない。前述の通り、「1日でも取れば100%」の計算になる。平均取得日数が3日という会社が取得率100%を掲げるケースもある。100%という数字と一緒に「平均取得期間」も確認することが重要だ。
Q4. 転職後どのくらいで育休を申請できますか?
育児休業給付金の受給には、育休開始前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが条件だ(前職の期間も通算可能)。転職直後でも育休自体は申請できるが、給付金を受けるためには要件を確認する必要がある。入社後すぐに第二子の育休を予定している場合は、転職前に条件をしっかり確認しておこう。
Q5. 転職時に「育休が取れる会社か」以外に確認すべき落とし穴はありますか?
保育園退園リスク(転職後の認可保育園継続要件)と時短勤務の法的保護リセットの2点が見落とされやすい。特に認可保育園に子どもが通っている場合、無職期間が生じると保育園を退園しなければならない可能性があるため、内定後に退職するスケジュール管理が重要だ。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」(2024年)──男性育休取得率40.5%、取得期間の内訳データ
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査速報値」(2026年7月)──2025年度の男性育休取得率50.9%
- 厚生労働省「育児・介護休業法の改正について」(2025年)──300人超企業の育休取得率公表義務化、3歳以降の柔軟措置5つ
- 積水ハウス「男性育休白書2026」──取得率・取得期間・育休の実態に関する調査
- 日本経済新聞「男性の育休取得率、5割超に 過去最高」(2026年7月31日)






