FP相談でよく聞かれるのが「食費を月3万円台に抑えているのに、なぜかお金が貯まらない」という声です。買い物のたびに10円単位で比較し、まとめ買いやカサ増しレシピを駆使しているのに、通帳の数字は横ばい。そんな経験はありませんか。

結論から言うと家計の見直しが先です。食費を削る前に、毎月固定で出ていく支出──通信費、保険料、サブスクリプション、電力プラン、住宅ローンの金利──を点検するだけで、子育て世帯なら年間10〜18万円の改善が見込めるケースがFP相談では珍しくありません。

なぜ食費の節約は「疲れるのに効果が薄い」のか

総務省「家計調査」(2025年)によると、二人以上世帯の消費支出は月平均約31.4万円。このうち食料費は約8万円で、全体の25%前後を占めます。しかし食費を10%削っても月8,000円、年間で約10万円程度。一方で通信費・保険料・サブスクなどの固定費は、一度見直せばその後は自動的に効果が続きます。食費は毎日の我慢が必要ですが、固定費は「一回だけ動けば、あとは何もしなくていい」のが最大の違いです。

子育て世帯が見直すべき固定費5つと優先順位

【優先度1】通信費──家族4人で年間6〜10万円の削減余地

大手キャリアの平均月額は1人あたり約8,000〜9,000円。格安SIM(MVNO)やサブブランドに乗り換えると、1人あたり月1,500〜3,000円に収まるケースが大半です。夫婦2人分だけでも年間で約7〜12万円の差が出ます。

うちの長女のとき実際に、夫婦そろって大手キャリアのままだったことに気づいて格安SIMに切り替えたところ、月1.2万円の削減になりました。年間14万円以上。正直、食費で同じ金額を削るほうがずっと大変です。

チェックポイント:契約中のプランのデータ容量を確認し、実際の使用量と比較してみてください。月3GB以下しか使っていないのに20GBプランを契約しているケースは非常に多いです。

【優先度2】保険料──独身時代の契約を放置していませんか

FP相談で保険証券を全部並べてもらうと、独身時代に入った高額の死亡保障や、医療保険の重複加入が見つかることが少なくありません。公的保障(遺族年金、高額療養費制度、団信、傷病手当金)を差し引くと、民間保険で必要な保障額は想像よりずっと小さくなります。

実際、長女出産後に夫婦の保険をすべて並べ直したところ、独身時代に入った貯蓄型保険の低利回り、グループ保険との重複、高額すぎる死亡保障など5つのムダが見つかり、月約1万円、年間約12万円を削減できました。浮いた分はそのまま教育資金の先取り積立に回しています。

チェックポイント:保険証券を1カ所に集め、保障内容を「死亡」「医療」「がん」「貯蓄」の4つに分類してみてください。同じ種類が2つ以上あったら見直しの余地があります。

【優先度3】サブスクリプション──月500円の積み重ねが年間6万円に

動画配信、音楽、クラウドストレージ、ニュースアプリ、知育アプリ……気づけば10個近く契約していた、というケースをFP相談で何度も見てきました。1つ500〜1,500円でも10個なら月5,000〜15,000円。年間で6〜18万円です。

まず、クレジットカードの明細を3カ月分出して、毎月引き落とされている定額課金をすべてリストアップしましょう。「先月使わなかったもの」は解約候補です。夫婦で重複しているサービス(動画配信のファミリープラン未活用など)も意外と多いです。

【優先度4】電力・ガスのプラン──新電力・セット割の見直し

2024年以降の電気料金値上げで、子育て世帯の光熱費は月2〜3万円に達しているケースも。電力会社の切り替えやガスとのセット割を比較するだけで、年間1〜2万円の削減が見込めます。エアコンを我慢する「苦しい節約」よりも、プランを変える「仕組みの節約」のほうがずっと持続します。

チェックポイント:検針票(または電力会社のマイページ)で直近12カ月の使用量を確認し、比較サイトで今より安いプランがないかチェックしてみてください。

【優先度5】住宅ローン金利──借り換えで総返済額が100万円以上変わることも

2024年以降の金利上昇局面では「変動金利のまま放置」がリスクになります。一方で、現在の金利と借り換え先の金利差が0.5%以上あり、残債が1,000万円以上・残期間が10年以上なら、借り換えの手数料を差し引いても総返済額が100万円以上減るケースがあります。

ただし、借り換えには手数料や事務手数料がかかるため、必ず総コストで比較してください。金利だけで飛びつくと、諸費用で相殺されるケースもあります。

固定費を削ったお金を「消えない仕組み」に乗せる

FP相談1500件のなかで、固定費を削っても貯蓄が増えなかった家庭に共通していたのは「浮いたお金を生活費口座に放置していた」こと。せっかく削った月1万円も、生活費の口座に入ったままでは気づかないうちに使ってしまいます。

おすすめは、見直しで浮いた金額を翌月から自動振替で先取り貯蓄に回すこと。わが家では口座を「生活費」「先取り貯蓄」「特別費」の3つに分けていて、固定費を削ったぶんはそのまま先取り貯蓄口座の自動振替額を増やしました。手取りの5〜7%を先に取り分ける仕組みがあれば、食費を1円も削らなくても貯蓄は確実に増えていきます。

「まず1つだけ」今週末にできるアクション

5つ全部を一度に見直す必要はありません。まずは通信費だけ、今のプランと使用量を確認してみてください。5分でできます。そこで「月3,000円以上削れそうだ」とわかったら、週末に乗り換え手続きを進める。これだけで年間3.6万円以上の効果が、来月からずっと続きます。

節約は我慢比べではなく、仕組みの設計です。食費をこれ以上削る前に、まずは固定費の通帳を開いてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 固定費の見直しにはどのくらい時間がかかりますか?

通信費の見直しは30分〜1時間、保険の見直しは保険証券を集めるところから始めて半日程度が目安です。ただし、一度見直せばその後は毎月自動的に効果が続くので、食費を毎日節約するよりも「時間あたりの節約効果」ははるかに高くなります。

Q2. 格安SIMは通信品質が不安ですが大丈夫ですか?

大手キャリアのサブブランド(UQ mobile、Y!mobileなど)は回線品質がほぼ同等です。お昼の時間帯に速度が落ちるMVNOもありますが、自宅にWi-Fiがある子育て世帯であれば、日常使いで困ることはほとんどありません。まずは1回線だけ試してみるのも手です。

Q3. 保険を見直して保障が足りなくなるのが心配です

見直し=すべて解約ではありません。まず公的保障(遺族年金、高額療養費など)でカバーされる範囲を確認し、足りない部分だけ民間保険で補う考え方です。不安な場合は、見直し後も1〜2カ月は旧契約と新契約を並行させてから旧契約を解約すると安心です。

Q4. サブスクの棚卸しは具体的にどうやればいいですか?

クレジットカードの明細を3カ月分印刷(またはスクリーンショット)し、毎月同じ金額で引き落とされているものをマーカーで囲みます。App StoreやGoogle Playのサブスク管理画面も必ず確認してください。夫婦でそれぞれ行い、重複サービスがあればファミリープランに統合するか、どちらかを解約します。

Q5. 住宅ローンの借り換えは金利差が何%以上なら検討すべきですか?

一般的には金利差0.5%以上、残債1,000万円以上、残返済期間10年以上の3条件がそろえば借り換えメリットが出やすいとされています。ただし諸費用(事務手数料・登記費用・保証料など)が50〜80万円程度かかるため、必ず総返済額ベースで比較してください。

参考文献