FP相談でよく聞かれるのが、「うちは子ども3人いるから大学無償化の対象ですよね?」という質問です。2025年度から始まった多子世帯向けの授業料等減免制度は、所得制限なしで支援が受けられるとあって注目を集めています。

ただ、この制度には意外な落とし穴があります。「扶養カウント」の仕組みを正しく理解することが、支援を受け続けるための大前提です。子どもが3人いても、全員が制度の恩恵を受けられるとは限りません。

この記事では、3児の母でありCFP(ファイナンシャル・プランナー)として1,500件以上の相談を受けてきた立場から、多子世帯の大学無償化制度で見落としがちな5つの確認ポイントを整理します。

そもそも多子世帯の大学無償化とは?

2025年度(令和7年度)から、高等教育の修学支援新制度が拡充され、扶養する子どもが3人以上いる世帯は所得制限なしで大学等の授業料・入学金の減免を受けられるようになりました。文部科学省が定める支援上限額は以下の通りです。

区分授業料(年額)入学金
国公立大学約54万円約28万円
私立大学約70万円約26万円

国公立大学であれば標準額がほぼ全額カバーされ、私立大学でも授業料の大部分が減免される計算です。4年間で国公立なら最大約244万円、私立なら最大約306万円の支援になります。

【ポイント1】扶養カウントは「同時に3人以上」が条件

ここが最大の落とし穴です。制度の対象になるには、「3人以上の子どもがいる」のではなく「3人以上の子どもを同時に扶養している」ことが条件です。

つまり、第1子が大学を卒業して就職し、扶養から外れた時点で扶養する子どもは2人に減ります。そうなると、大学に在学中の第2子・第3子は多子世帯向けの減免対象から外れてしまうのです。

うちの長男のとき実際に計算してみたのですが、長男(小5)・長女(小2)・次女(年中)の3人で年齢差が3歳ずつ。仮に長男が22歳で就職して扶養を外れると、長女は大学3年生、次女は大学1年生のタイミングです。つまり長女の大学4年目と次女の大学2〜4年目は「多子世帯」ではなくなる可能性があります。

【ポイント2】判定タイミングは「直近の12月31日時点」

扶養する子どもの人数は、原則として申請時点で確定している直近の年末(12月31日)時点の住民税情報に基づいて判定されます。

ここでポイントになるのが、判定はリアルタイムではないということ。例えば第1子が2026年3月に卒業・就職する場合でも、2025年12月31日時点ではまだ扶養に入っているため、2026年度前期の在学採用申請では多子世帯として認定される可能性があります。

ただし、後期の適格認定で扶養人数が見直されるため、年度途中で対象外になるケースもあります。「いつからカウントが変わるか」を事前に把握しておくことが重要です。

【ポイント3】大学院生は「対象外」だが扶養カウントには含まれる

意外と知られていないのが、大学院生は授業料減免の対象外だが、扶養する子どもの人数にはカウントできるという点です。

例えば第1子が大学院に進学し、引き続き親の扶養に入っている場合、扶養する子どもは3人のままです。そのため、第2子・第3子は引き続き多子世帯向けの支援を受けられます。

逆に言えば、第1子が大学院に進まず就職した場合は扶養から外れるため、きょうだいの支援が打ち切りになるタイミングが早まります。進路選択が家計全体の支援額に影響するという、なかなか悩ましい構造です。

【ポイント4】アルバイト収入で扶養から外れるリスク

大学生本人のアルバイト収入にも注意が必要です。年間の給与収入が103万円(所得48万円)を超えると、税法上の扶養から外れます

第1子がアルバイトで稼ぎすぎて扶養から外れると、その年の12月31日時点で扶養する子どもが2人と判定され、第2子・第3子が多子世帯の対象外になるリスクがあります。

FP相談でも「上の子がバイトを頑張っているのに、下の子の授業料減免がなくなるなんて」と驚かれるケースが増えてきました。きょうだい全体での収支を考えると、アルバイト収入は年103万円の壁を意識する必要があります

【ポイント5】申請しなければ適用されない「申請主義」

多子世帯の授業料減免は、自動的に適用されるわけではありません。日本学生支援機構(JASSO)を通じて、在学する大学等で申請手続きが必要です。

申請のタイミングは主に2つです。

  • 予約採用:高校在学中(高3の春〜)に申し込む方法。進学前に採用候補者として内定を受けられます
  • 在学採用:大学入学後に申し込む方法。毎年4月と10月の年2回チャンスがあります

2025年度の多子世帯向け拡充は、入学後の在学採用から申し込む形がメインでした。2026年度以降は予約採用の段階から多子世帯の申告が可能になっています。申請を忘れると4年間で最大300万円以上の支援を逃すことになるため、高2の秋には制度を確認しておきましょう。

3児の母として思うこと──「全員が恩恵を受けられる」前提で計画しない

わが家の場合、長男・長女・次女の年齢差を考えると、3人全員が大学在学中に「扶養する子ども3人」を維持できる期間は限られています。以前、国公立大学の授業料値上げを受けて教育資金プランを見直した際にも感じましたが、教育資金は「制度が使える前提」ではなく「使えなかった場合」も想定して組むべきです。

具体的には、多子世帯の無償化があてにできる期間とできない期間を年表にして、足りない期間は児童手当の貯蓄・新NISAでの積立・親の資産で補う計画を立てることをおすすめします。制度はありがたいけれど、制度に依存しない家計設計こそが、子どもの進路の選択肢を守る最大の防御になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子どもが3人いれば全員が大学無償化の対象になりますか?

いいえ。「3人以上を同時に扶養していること」が条件です。第1子が就職して扶養から外れると、残りの2人は多子世帯としての支援対象から外れます。ただし、所得要件を満たせば通常の修学支援新制度(住民税非課税世帯等向け)の対象にはなり得ます。

Q2. 第1子が就職しても「扶養」に入れておくことはできますか?

就職して一定以上の収入がある場合、税法上の扶養親族にはなれません。制度の悪用にもあたるため、実態に合った申告が必要です。ただし第1子が大学院に進学し収入が少ない場合は、引き続き扶養に含めることができます。

Q3. 多子世帯の無償化と給付型奨学金は併用できますか?

はい。多子世帯の授業料減免と給付型奨学金は、それぞれの要件を満たせば併用可能です。ただし給付型奨学金には別途所得基準があるため、世帯年収によっては授業料減免のみの適用となります。

Q4. 申請のタイミングを逃した場合、遡って支援を受けられますか?

原則として遡及適用はありません。在学採用は毎年4月と10月の年2回です。申請を忘れると半年〜1年分の支援を受けられなくなるため、大学の奨学金窓口で早めに確認しましょう。

Q5. 私立大学で授業料が70万円を超える場合、超過分は自己負担ですか?

はい。支援上限額(私立大学の授業料は年約70万円)を超える分は自己負担です。医学部や理工系など授業料が高い学部では、無償化を受けても年数十万円の持ち出しが発生する場合があります。

参考文献

  • 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
    https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/
  • 日本学生支援機構(JASSO)「令和7年度からの多子世帯支援拡充に係る対応について」
    https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/kyufu/kakei/r7tashikakudai/index.html
  • 文部科学省「多子世帯の学生等に対する授業料等減免について」(PDF)
    https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_gakushi_100001505_2.pdf