「大学受験って、受験料だけ気をつければいいですよね?」FP相談でよく聞かれるのがこのセリフです。結論から言うと、受験料よりも入学金の"捨て金"リスクの方が家計ダメージは大きい。高3の11月から3月のわずか5カ月に、30〜50万円が集中して出ていく仕組みを先に知っておかないと、慌てて積立保険を解約する羽目になります。うちの長男のとき実際に試算してみて、あの金額の大きさに改めてびっくりしました。

大学受験にかかる費用の全体像──30〜50万円の内訳

まず費用の構造を整理しましょう。大きく「受験料」「入学金」「その他」に分かれます。

費用項目 国公立 私立文系 私立理系
共通テスト受験料 18,000円(3教科以上) 同左 同左
大学個別試験受験料 17,000円/校 35,000円前後/校 35,000〜40,000円/校
私立併願3〜4校の受験料合計 105,000〜140,000円 105,000〜160,000円
入学金(第一志望校) 282,000円(国立一律) 240,365円(私立平均) 240,365円(私立平均)
入学金(併願校・捨て金) 0〜240,000円 0〜240,000円
交通・宿泊費(遠征受験) 0〜50,000円(地方→首都圏等)

文部科学省「令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金の調査結果」によると、私立大学の平均入学料は240,365円。国立大学は一律282,000円です。受験料だけ見れば国公立は35,000円で済みますが、私立を3〜4校受ける標準的なパターンでは受験料だけで10〜16万円に達します。

最大の落とし穴は"捨て金"になる入学金です。私立A大学に合格して入学金を納めた後、第一志望の国立に受かれば、A大の入学金はそのまま没収されます。これが家計を直撃する"捨て金"構造です。

"捨て金"問題はどれだけ改善されたか

朗報もあります。旺文社と進研アドの2025年度調査では、83校が入学金の返還または納付期限の後ろ倒し(第二期合格発表後まで猶予)に対応していることが確認されています。この83校に第一志望校や有力私立が含まれるかどうか、早めにチェックしてください。

ただし83校は全体の約1割強。多くの私立大学は依然として「合格後2週間以内に入学金を納付しなければ入学資格を失う」という仕組みのままです。入学金後ろ倒し対応の有無は大学の入試要項や公式サイトで確認できます。対応していない場合は、捨て金になる可能性を前提に資金計画を立てる必要があります。

費用が集中する「高3の冬」タイムライン

受験費用は受験シーズン全体で均等に発生するわけではありません。以下のスケジュールで一気に集中します。

  • 11月中旬:共通テスト受験料の支払い(18,000円)
  • 1月中旬:共通テスト本番
  • 1月下旬〜2月:私立大学出願・受験料支払い(各35,000円前後 × 3〜4校)
  • 2月上旬〜中旬:私立大学合格発表、入学金納付期限(2週間以内が多い)
  • 2月下旬〜3月:国公立二次試験、合格発表
  • 3月中旬:最終入学金・前期授業料(大学によっては入学前徴収)

1月から3月のたった3カ月で30〜50万円が飛んでいく計算です。そのうえ、合格した私立の入学金を先払いしながら国立の合否を待つという"ダブル保有"期間が発生します。この期間の手元流動性が不足していると、子どもの選択肢を親の資金不足で狭めることになります。

FP流3ステップ──高1から月1.2万円で備える

では具体的にどう準備するか。FP相談でよく聞かれるのが「いつから、いくら積めばいいか」という質問です。目標額を50万円、準備期間を高1〜高3の36カ月とすると、単純計算で月約1.4万円。学費積立と分けて受験費用口座を作るだけで、捨て金ショックを大幅に軽減できます。

ステップ1:受験費用専用口座を高1の4月に開設

学費積立(学資保険や投資信託)とは別の普通預金口座を1つ用意し、「受験費用口座」と名付けます。月1〜1.2万円をここに自動振替するだけ。高3の11月には36カ月 × 12,000円 = 43.2万円が貯まります。受験料と入学金(捨て金含む)をカバーできる水準です。

ステップ2:捨て金シナリオを2パターン試算する

早めに「捨て金が発生する最悪シナリオ」と「捨て金ゼロシナリオ」の2パターンを試算しておきましょう。捨て金が発生するケースでは受験費用口座の残高が足りなくなる場合、差額分を学費積立から取り崩す計画を事前に立てます。うちの長男のとき実際に試算してみて、「最悪24万円追加が必要」という数字を夫と共有しておいたので、本番で慌てずに済みました。

ステップ3:高2の夏に受験校の入学金後ろ倒し対応を確認

志望校リストが固まってきた高2の夏頃、各大学の「入学金後ろ倒し対応の有無」を確認します。対応校が多ければ捨て金リスクが下がるため、受験費用口座の目標額を下方修正することも可能です。逆に対応校が少ない場合は月々の積立額を少し増やす、または高3の夏ボーナスで補充するプランに修正します。

結論から言うと家計の見直しが先──日々の固定費を月5,000円でも削れれば、受験費用積立と学費積立を両立する余裕が生まれます。通信費・サブスクの整理から始めると取り組みやすいです。

よくある質問

Q. 国公立一本に絞れば受験費用はもっと安くなりますか?

共通テスト18,000円+国立個別17,000円=35,000円が最小ラインです。ただし現実には「滑り止め私立ゼロ」は精神的リスクが高く、担任や塾のアドバイスでも私立を1〜2校は受けることを勧めるケースが多い。私立1校追加で受験料3.5万円+入学金24万円(捨て金前提)が加わります。

Q. 入学金の後ろ倒し対応校リストはどこで確認できますか?

旺文社「大学の入学金返還・後ろ倒しリスト」や進研アドの「先輩保護者の体験談」データベースで検索できます。ただしリストは年度ごとに更新されるため、受験年度の最新版を確認することが必要です。各大学の入試要項(公式サイト)も必ず一次情報として参照してください。

Q. 学資保険を受験費用に充てることはできますか?

満期が大学入学時(18歳)に設定されている学資保険なら、受験シーズン(高3の冬)にちょうど満期を迎えることが多い。ただし満期金は入学後の授業料・生活費に充てる想定で計画している家庭が多く、受験費用は別口座で準備しておいた方が安全です。保険の中途解約は元本割れリスクがあるため避けましょう。

Q. 複数校を受験するとき、受験料を一括で支払う方法はありますか?

出願方法は大学ごとに異なり、コンビニ払い・クレジットカード・Pay-easy(銀行ATM)などが一般的です。一括払いのサービスはなく、各大学に個別に支払います。クレジットカードで支払えば一時的にキャッシュフローを平準化できますが、翌月の引き落としに備えて受験費用口座に残高を確保しておくことが前提です。

Q. 受験費用が想定より多くかかってしまった場合、奨学金や教育ローンで賄えますか?

受験料や入学金は原則として奨学金(日本学生支援機構)の対象外です。入学前の費用なので「在学中の給付・貸与」にあたらないためです。緊急対応として教育ローン(国の教育ローンは金利1.95%・固定)を活用する方法はありますが、利子コストがかかります。やはり高1から計画的に積み立てておくことが最善策です。

参考資料

  • 文部科学省「令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金の調査結果」(2025年)
  • 進研アド Between「大学入学金 後ろ倒し・返還対応校データ」(2025年度版)
  • 旺文社「大学入試情報──入学金返還・後ろ倒し対応83校リスト」(2025年)
  • 生命保険文化センター「令和4年度 生活保障に関する調査」教育費準備実態データ(2022年)