FP相談でよく聞かれるのが、「私立に合格したんですが、これからいくら準備すればいいですか?」という質問です。

受験費用は丁寧に積み立てていたのに、入学後に実際にかかる費用の全体像を把握していないご家庭が、思いのほか多い。合格通知は「ゴール」ではなく、教育資金のステージが大きく変わる「転換点」です。

この記事では、私立中学・中高一貫6年間でかかる費用の全体像を文科省データで確認したうえで、合格後に教育資金プランを再設計する3ステップをお伝えします。

私立中学3年間の費用──「授業料だけ」で計算すると100万円以上ズレる

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、私立中学校の年間学習費総額(全国平均)は1,554,666円です。3年間合計では約470万円。一方、公立中学は年間542,273円(3年間約163万円)なので、3年間の実質差額は約307万円になります。

私立中学 vs 公立中学 年間学習費の比較(令和5年度・文科省)
費目 私立中学(全国平均) 公立中学(全国平均)
学校教育費 1,131,685円 119,292円
(うち授業料) 458,018円 0円
学校外活動費(塾・習い事など) 422,981円 423,196円
年間合計 1,554,666円 542,273円

注目してほしいのは「学校外活動費」がほぼ同額である点です。塾・通信教育などの費用は学校の種類に関わらず発生するため、私立と公立の差額は主に「学校教育費(授業料・施設費など)」で生じます。東京都内の私立中学では授業料だけで年間平均104.8万円(2026年度、リセマム調べ)に達する学校も多く、全国平均を大きく上回ります。

「隠れ費用」として見落としやすい5項目

授業料以外で入学前後に見落とされやすい費用がこちらです。

  • 施設設備費・維持費:年間10〜30万円(学校によって差あり)
  • 制服・通学用品の初期費用:入学時に5〜15万円(夏冬制服・体操服一式)
  • 入学金:15〜25万円(入学時のみ、受験料と別)
  • 修学旅行・校外活動:3年間で8〜20万円(積立形式の場合が多い)
  • 部活費(遠征・道具):年間3〜15万円(運動部は特に高くなりやすい)

これらを含めた3年間の実質支出は、全国平均ベースでも470万〜530万円の範囲で見ておくことが必要です。

中高一貫6年間なら合計750万円超が現実的な数字

私立中高一貫校に進学した場合、高校3年間の費用も加算されます。文科省「令和5年度子供の学習費調査」では私立高校の年間学習費は平均約1,003,841円(3年間で約301万円)です。

私立中高一貫6年間の費用イメージ(全国平均ベース)
フェーズ 期間 概算費用
私立中学 3年間 約470万円(+入学時費用)
私立高校 3年間 約300万円
6年間合計 約770万円〜

さらに、多くの中高一貫校では高2〜高3から大学受験を意識した通塾が始まります。うちの長男のとき実際に、高2から予備校に通い始めて月3〜5万円が追加発生しました。これを2〜3年間含めると、6年間の合計が830〜930万円になることも十分ありえます。

なぜ「受験前に立てた積立プラン」がそのまま使えなくなるのか

中学受験を決めた時点で立てた「大学費用のための積立プラン」は、多くの場合「公立中学に通いながら毎月○万円積み立てる」という前提で設計されています。ところが私立中学に入学した瞬間、月々の学校関連費用が一気に7〜10万円増加します。

典型的なパターンはこうです。月手取り40万円で月2万円の教育資金積立をしていたご家庭が、私立中学入学後に授業料・施設費・塾代を合わせると月8〜10万円が教育関連費に。積立に回す余裕がなくなり「今月だけ止めよう」→止まったまま、という流れです。FP相談の実感では、一度止めた積立を半年以内に再開できている家庭は半数以下です。これを防ぐのが、入学前の「積立プランの再設計」です。

合格後にすぐ動く・積立再設計3ステップ

Step 1:教育資金マップを「更新」する

まず現状の教育資金マップ(口座残高・積立額・目標時期の一覧)を確認し、「大学入学時に必要な金額」を再計算します。

  • 大学入学金+初年度学費の目標額を設定(国公立なら約65万円、私立文系なら約150万円が目安)
  • 現時点の残高と目標額の「差額(不足額)」を計算する
  • 不足額 ÷ 残り月数(入学まで)=毎月の必要積立額を算出する

計算例:6年後に大学費用として150万円必要、現在の残高が60万円なら不足90万円。72か月(6年)で割ると月1.25万円の追加積立が最低ラインです。

Step 2:「6年以内に使う費用」を元本保証型で切り出す

私立中高の学費は毎年確実に出ていく費用です。使う時期が決まっている短期費用と、大学以降の長期積立を同じ口座に混在させてはいけません。

  • 6年以内に使う費用(学費・修学旅行・部活費など):ネット銀行の普通預金や定期預金で管理(元本保証優先)
  • 大学費用(6年以上先):親の新NISAやこどもNISA(2027年開始予定)で継続積立

6年以内に使うお金を株式ファンドに入れて含み損が出た状態では、学費を払えなくなる可能性があります。「使う器」と「増やす器」を分けることが鉄則です。

Step 3:自動振替を3口座構成に組み替える

結論から言うと家計の見直しが先です。積立額を上乗せする前に、固定費(通信費・保険の重複・使っていないサブスクリプション)を1か所だけ見直して、その差額を積立原資にする方が長続きします。

その上で、以下の3口座構成への切り替えをおすすめします。

  1. 生活費口座(メインバンク):給与入金→月の生活費・学費引き落とし
  2. 中高学費口座(ネット銀行普通預金):給与日翌日に自動振替で月5〜8万円を移動→修学旅行や部活費もここから
  3. 大学費用口座(親の新NISA or 教育資金専用口座):給与日翌日に月1〜2万円を継続積立

ポイントは「中高学費口座」と「大学費用口座」を分けることです。同じ口座に混在させると「まだある」という残高の錯覚が生まれ、大学用の積立まで学費に使ってしまうリスクが生じます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 私立中学の月謝が払えるか不安です。どこから確認すればいいですか?

まず学校から配布される「費用案内」をもとに月ごとの支払い額を計算し、今の月手取りから引いてみてください。残額で生活できるかどうかを確認するのが第一歩です。通信費・保険料の見直しで月3〜5万円の節約が可能なケースは多く、固定費を1か所だけ変えるところから始めると継続しやすいです。

Q2. 高校で公立に転出することになったら積立はどうなりますか?

中高一貫校でも内部進学せず外部受験で公立高校に転換するケースがあります。その場合、「中高学費口座」に残った資金をそのまま大学費用口座に移行すればOKです。口座を分けておくことで、進路変更にも柔軟に対応できます。

Q3. こどもNISA(2027年開始予定)は私立中学の学費にも使えますか?

こどもNISAは12歳未満は原則払い出し不可の設計が想定されています。すでに中学生のお子さんが対象の場合は制度の詳細を確認した上で判断が必要です。確定前の現時点では、引き出し制限のない親の新NISAを調整弁として活用し、学費と大学費用を分けた口座設計を優先することをおすすめします。

Q4. 児童手当(中学生:月1万円)はどう扱うべきですか?

中学生への児童手当(月1万円)を3年間積み立てると36万円になります。これは大学費用口座に自動振替しておくと、学費と大学費用を混在させずに済みます。学費は給与から払い、児童手当は大学用に丸ごと積立、という仕組みが最もシンプルで継続しやすいです。

まとめ:合格後は「教育資金の作り直し」が最優先

私立中学合格後は、入学金の振り込みと同じくらい「教育資金の再設計」が重要です。合格通知を受け取ったら、ぜひ次の3つをこの順番で動いてください。

  1. 6年間でいくらかかるか、学校の費用案内をもとに月ならし計算する
  2. 既存の教育資金マップ(残高・積立額・目標)を更新する
  3. 中高費用口座と大学費用口座を分けて自動振替を設定する

「いつ・いくら使うか」が決まっているお金を元本保証で切り出し、残りを長期で増やす器に流す──この順番さえ守れば、私立中学の費用と大学費用は同時に準備できます。一人で判断が難しい場合は、FP相談を利用して家庭ごとの最適解を探してみてください。

参考文献