保育園に通い始めた子どもは、驚くほどよく熱を出します。月1〜2回の発熱呼び出しは珍しくありません。
問題は熱そのものではなく、電話が鳴った瞬間に始まる「今日はどっちが休む?」のLINEバトルです。
実際に育休取った身として言うと、この「どっちが休む?」問題こそが、共働き夫婦の最大の摩擦ポイントでした。制度の知識でも、家事の量でもない。突発的な判断を毎回ゼロからやり直すことが、夫婦の消耗を加速させるのです。
この記事では、僕が妻と導入した「看護当番制」の設計と運用について、3つのステップで具体的にお伝えします。
共働き夫婦が「どっちが休む?」でモメる構造的理由
厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によると、子の看護休暇の取得率は女性が男性を大きく上回っています。「制度上は平等」でも、実態として母親が対応するケースが圧倒的に多い。
なぜモメるのか。理由は3つあります。
- 判断基準がないまま毎回交渉している:「今日の会議の重要度」「昨日どっちが対応したか」「上司の機嫌」を毎回天秤にかける
- 感情と事実が混ざる:「また私?」という不満は、回数を数えていないから曖昧なまま積もる
- 仕事の重要度は比較できない:夫婦それぞれの仕事の優先度を正確に比較する方法はない
つまり、「どっちが休むか」を毎回判断すること自体が間違いです。仕組みにすれば、感情の消耗を最小化できます。
ステップ1:奇数週・偶数週の看護当番制を導入する
僕たち夫婦が導入したのは、奇数週はパパ担当、偶数週はママ担当というシンプルなルールです。
きっかけは、妻から朝のLINEで「また私が休むの?」と言われた日でした。その一言で、この問題を仕組みで解決しなければいけないと思いました。
具体的な運用ルール
- 月初にGoogleカレンダーに当番を入れる:奇数週(第1週・第3週・第5週)=パパ、偶数週(第2週・第4週)=ママ
- 前週日曜に「絶対動けない日」だけ交換する:重要な会議やプレゼンがある日は、前週のうちに申告して当番を交換
- 電話が来たらカレンダーを見るだけ:交渉不要、感情不要。その週の当番が一次対応する
ポイントは「絶対動けない日だけ交換する」というルールです。「ちょっと今日は忙しいんだよね…」レベルの理由では交換しない。これを守らないと、結局毎回の交渉に戻ります。
朝6時起床→子の朝食→保育園送りのルーティンをこなしている身からすると、突発対応が入るだけで朝のオペレーション全体が崩れます。だからこそ、「誰が対応するか」を事前に決めておくことの価値は、思っている以上に大きいのです。
ステップ2:半日シフトで「丸1日不在」を回避する
子どもの発熱が1日で下がらないことも珍しくありません。2〜3日続く場合、当番の一方だけが連日休むと職場への影響が大きくなります。
そこで導入したのが「午前・午後の半日シフト」です。
- 午前:当番側が看護(例:パパが在宅で午前中対応)
- 午後:もう片方が交代(例:ママが午後半休を取得して帰宅)
この方法なら、2人とも丸1日不在にならず、職場への影響を最小化できます。
時短復職のリアルは、こういう「半日単位の調整力」が問われる場面の連続です。2025年4月の育児・介護休業法改正で、子の看護等休暇は時間単位での取得も可能になりました。半日シフトとの相性が良い制度なので、まだ使っていない方はぜひ確認してみてください。
2025年4月改正「子の看護等休暇」の活用ポイント
改正のポイントを整理しておきます。
- 名称変更:「子の看護休暇」→「子の看護等休暇」
- 対象年齢の拡大:小学校就学前 → 小学校3年生修了まで
- 取得事由の追加:学級閉鎖、入学式・卒園式への参加も対象に
- 日数:子1人なら年5日、2人以上なら年10日(変更なし)
- 取得単位:1日・半日・時間単位で取得可能
夫婦2人で年10日(子1人の場合)。半日単位で使えば実質20回分の対応枠になります。有給休暇を温存しつつ、看護等休暇を先に消化する振り分けが家計防衛にも効きます。
ステップ3:月末に看護回数を夫婦でレビューする
当番制を敷いても、実際には偏りが出ます。奇数週に発熱が集中すればパパの対応回数が増えるし、逆もまた然りです。
だから月末に5分だけ、看護回数を数字で確認する場を設けています。
月末レビューで確認すること
- 今月の看護対応回数(パパ◯回 / ママ◯回)
- 看護等休暇の消化日数
- 有給休暇の残日数
- 翌月の「絶対動けない日」の事前共有
僕たちはスプレッドシートで記録していますが、カレンダーアプリのメモでも十分です。大事なのはツールではなく、「数字にして夫婦で見る」という行為そのものです。
名もなき家事の見える化と同じ構図で、看護回数も数字にすると「また私ばっかり」という不満が事実ベースの会話に変わります。偏りがあれば翌月の当番を調整すればいい。感情論ではなく、データで話すから建設的になれるのです。
「病児保育」と「ファミリーサポート」は事前登録が9割
当番制と並行して、夫婦どちらも休めない日のバックアップ手段も準備しておく必要があります。
病児保育
医療機関に併設された一時預かりサービスです。自治体によって異なりますが、1日2,000〜3,000円程度で利用できるケースが多い。ただし事前登録が必須で、当日いきなりは使えません。登録から利用まで1〜2週間かかる自治体もあるため、保育園入園と同時に登録しておくのがベストです。
ファミリーサポート
自治体が運営する子育て支援サービスで、病児対応が可能な地域もあります。こちらも事前登録+マッチングが必要です。
どちらも「使うかどうか分からないけど、登録だけしておく」が正解です。発熱当日に慌てて調べても間に合いません。
看護当番制を3ヶ月運用して変わったこと
当番制を導入して3ヶ月で、以下の変化がありました。
- 朝のLINE交渉が消滅:電話が来た瞬間にカレンダーを見るだけ
- 「また私」の不満が事実ベースの会話に変化:月末のスプレッドシートで回数を確認
- 職場への説明もシンプルに:「今週は僕が看護当番なので」と明言できる
- 夫婦間の信頼感が上がった:仕組みで公平性を担保しているから、感情的な摩擦が減った
完璧ではありません。子どもの体調は親の都合に合わせてくれません。それでも、「毎回ゼロから判断する消耗」と「仕組みの中で微調整する負荷」は、天と地ほど違います。
よくある質問(FAQ)
Q1. 片方がフルタイム、片方がパートの場合でも当番制は成立しますか?
成立します。ただし「パートだから当然休める」という前提は危険です。パートでも急に休めば収入が減り、職場での信頼にも関わります。勤務形態に関係なく、交互に担うことで公平性を保つのが当番制の本質です。偏りが出た場合は月末レビューで調整してください。
Q2. 子どもが2人以上いる場合、当番はどうなりますか?
基本ルールは同じです。2人同時に発熱した場合は当番側が一次対応し、手が回らなければ半日シフトで交代します。看護等休暇は子2人以上で年10日(夫婦合計20日)に増えるので、活用の幅も広がります。
Q3. 在宅勤務の日は自動的にその人が対応すべきですか?
「在宅=いつでも対応できる」と思われがちですが、在宅でも仕事中です。看護しながら仕事をするのは現実的にほぼ不可能なので、当番制のルールを優先してください。在宅の人が対応する運用にすると、テレワーク側に負担が集中して不公平になります。
Q4. 看護等休暇は有給ですか?無給ですか?
法律上は有給・無給の定めがなく、企業の就業規則によります。有給扱いの企業もあれば無給の企業もあります。まず自社の就業規則を確認し、無給の場合は有給休暇との使い分けを年間で計画しておくことが重要です。
Q5. 祖父母や親族に頼れる場合、当番制は不要ですか?
祖父母の助けは「追加のバックアップ」として位置づけるのが健全です。主たる対応を祖父母に依存すると、祖父母側の体力・予定との調整問題が新たに生まれます。夫婦の当番制をベースに、どうしても回らないときだけ祖父母に頼るという順番がおすすめです。
参考文献
- 厚生労働省「育児・介護休業法 令和7年(2025年)改正内容の解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf - 厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html - 日立ソリューションズ「子の看護等休暇とは?2025年4月法改正に伴う変更や取得条件を解説」
https://www.hitachi-solutions.co.jp/lysithea_job/column/hild-nursing-leave-2025-revision.html - 認定NPO法人ノーベル「子どもの病気乗り切り術|保育園からの急なお迎え連絡!どうする?」
https://nponobel.jp/blog/180628/






