保育園に子どもを通わせていると、避けて通れないのが「発熱の呼び出し」です。とくに0〜2歳クラスは月に1〜2回のペースで熱を出すこともあり、共働き夫婦にとっては「今日はどっちが休む?」のやり取りが日常になります。
実際に育休取った身として言うと、わが家もこの問題で何度もモメました。妻から「また私が休むの?」と言われた朝、仕事の電話をしながら保育園に迎えに走ったこともあります。でも、ある仕組みを導入してからは、少なくとも「どっちが」の部分で揉めることはほぼゼロになりました。
この記事では、わが家が実践している「看護当番制」の設計方法と、職場に角を立てずに休みを伝える3ステップを、当事者目線で整理します。
なぜ「どっちが休む?」で毎回モメるのか
「その日の忙しさ」で決めると、結局いつも同じ人が休む
多くの夫婦が「今日はどっちが大事な仕事がある?」で判断しようとします。一見合理的に見えますが、この方法には致命的な欠点があります。仕事の重要度は主観で決まるため、お互いに「自分のほうが抜けられない」と主張しがちです。
結果、どちらかが折れるまでの消耗戦になり、折れる側はだいたい同じ人──統計的には母親側に偏ります。こども家庭庁の調査でも、子の看護で仕事を休むのは母親が約8割というデータがあり、「話し合って決めている」つもりでも構造的に偏りが生まれやすいのが実態です。
朝の判断コストが高すぎる
保育園から「37.5度超えました」の電話が来るのは、たいてい午前中の一番忙しい時間帯です。そこから夫婦でLINEのやり取りを始めて、お互いのスケジュールを確認して、どちらが迎えに行くか決めて──この判断プロセス自体が大きなストレスになります。
上司にどう切り出したかなんですけど、判断が遅れるほど職場への連絡も遅れ、「また急に休むの?」という印象を与えてしまいます。
わが家の「看護当番制」──月初に決めて判断コストをゼロにする
ステップ1:月初に「奇数週・偶数週」で一次担当を決める
わが家では、毎月1日に翌月の看護当番を夫婦で確認します。基本ルールはシンプルです。
- 奇数週(第1・3・5週):パパが一次担当
- 偶数週(第2・4週):ママが一次担当
「一次担当」とは、保育園から電話が来たときに最初に対応する人という意味です。一次担当がどうしても抜けられない場合のみ、もう一方に連絡します。
この仕組みのポイントは、「交渉の余地をなくす」こと。当番制にしてしまえば、朝のLINEバトルは発生しません。
ステップ2:「絶対動けない日」だけ事前に交換する
もちろん、どうしても休めない日はあります。大事な商談、社内プレゼン、期末の締め処理──。そういう日は前週の日曜日に夫婦で翌週のカレンダーを見ながら「この日だけ交換」を決めます。
わが家ではGoogleカレンダーの共有カレンダーに「看護当番:パパ」「看護当番:ママ」と入れています。こうすると、電話が来た瞬間にカレンダーを見るだけで「今日は自分の番だ」と分かります。
朝6時に起きて子の朝食を作り、8時半までに保育園に送って出社する毎日のなかで、この「判断しなくていい」安心感は想像以上に大きいです。
ステップ3:「半日シフト」で2人とも仕事を守るオプション
子どもの発熱が長引くと、丸1日×数日の休みが必要になることがあります。このとき便利なのが「半日シフト」です。
- 午前:パパが在宅で看護(ママは出社)
- 午後:ママが帰宅して交代(パパは午後出社 or 在宅勤務)
これなら2人とも「丸1日不在」にはならず、職場への影響を最小限に抑えられます。2025年4月施行の改正育児・介護休業法で、子の看護等休暇が時間単位で取得可能になったため、半日や数時間単位での看護がしやすくなりました。
2025年改正で広がった「子の看護等休暇」を正しく使う
看護当番制を運用するうえで、制度を正しく知っておくことは不可欠です。2025年4月施行の改正育児・介護休業法で、旧「子の看護休暇」が大きく拡充されました。
主な改正ポイント
| 項目 | 改正前 | 改正後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 小学校就学前まで | 小学校3年生修了まで |
| 取得事由 | 病気・けが・予防接種・健診 | +学級閉鎖、入園式・卒園式・入学式 |
| 取得単位 | 半日または1日 | 時間単位で取得可能 |
| 日数 | 子1人:年5日 / 2人以上:年10日 | 変更なし |
| 除外規定 | 勤続6ヶ月未満は除外可 | 除外規定を撤廃 |
とくに時間単位の取得は、先ほどの「半日シフト」と組み合わせると威力を発揮します。午前中だけ看護休暇を取り、午後は出社する──といった柔軟な使い方が制度的に認められたわけです。
ただし、制度は自分から動かないと教えてもらえません。わが家の場合も、私が人事に「看護休暇は時間単位で取れますか?」と確認しに行って初めて、社内の申請方法が分かりました。就業規則の改定が追いついていない会社もあるので、まずは人事に直接聞くのが最速です。
職場に角を立てずに休みを伝える3ステップ
当番制を決めても、職場への伝え方を間違えると「また休むの?」という空気が生まれます。時短復職のリアルは、制度と職場の空気感の両方をマネジメントすることだと感じています。
ステップ1:「報告+対応策」をセットで伝える
「子どもが熱を出したので休みます」だけでは、上司は「いつ戻るのか」「担当業務はどうなるのか」が分からず不安になります。私が実践しているのは、以下のフォーマットです。
「子どもが発熱したため、本日は看護休暇を取得します。○○の件は△△さんに引き継ぎ済みです。明日の状況は今日の夕方にご連絡します。」
報告と対応策をセットで出すと、上司は判断しやすくなります。育休の切り出しで「意思+配慮+期限」の3点セットが有効だった経験は、看護休暇の連絡でもそのまま使えます。
ステップ2:チームのSlackやチャットで「見える化」する
上司だけでなく、チーム全体に状況を共有するのも重要です。わが家では、看護休暇を取るときは朝イチでチームチャットに以下を投稿します。
- 本日の勤務状況(全休 or 午後出社 or 在宅)
- 対応が必要なタスクの引き継ぎ先
- 連絡が取れる時間帯(子が寝ている時間など)
この3点を毎回同じフォーマットで出すと、チームメンバーも「このフォーマットが来たら看護休暇だな」と認識が定着します。
ステップ3:復帰後に「ありがとう」と30秒の報告を入れる
休み明けに「昨日はありがとうございました。子どもは回復しました。○○の件、引き継ぎで問題なかったですか?」と一言添えるだけで、チームとの信頼関係は維持できます。
飲み会を全部断っていた時期に学んだことですが、不在のあとのフォローが「付き合いが悪い人」と「気にかけている人」の印象を分けるのです。
当番制を続けるための3つのコツ
1. 月1回の振り返りで偏りを確認する
当番制を始めても、実際の看護回数はバラつきます。わが家ではGoogleスプレッドシートに「日付・対応者・症状・休んだ時間」を記録し、月末に夫婦で確認しています。
名もなき家事を夫婦で書き出した経験と同じで、数字で見える化すると「どちらかに偏っている」という不満が事実ベースの会話に変わります。
2. 病児保育は「保険」として事前登録しておく
夫婦どちらも絶対に休めない日は、年に数回は発生します。そのときのセーフティネットが病児保育です。
自治体の病児保育施設は1日2,000〜3,000円程度で利用できますが、事前登録が必要です。熱が出てから登録しようとしても間に合いません。わが家は息子が保育園に入った直後に、自宅と職場の最寄り2施設に登録しました。
利用時は主治医の「診療情報提供書」が必要になるため、かかりつけ医にも事前に「病児保育を使うことがある」と伝えておくとスムーズです。
3. 祖父母やファミサポは「第三の選択肢」として温めておく
頼れる祖父母が近くにいる場合は、月に1回程度のバックアップ要員として依頼するのも現実的です。ただし、祖父母に毎回頼るのは関係悪化のリスクがあるので、「夫婦の当番制が基本、祖父母は最終手段」の位置づけが健全です。
ファミリー・サポート・センター(ファミサポ)も、自治体によっては病児対応が可能な場合があります。こちらも事前登録制なので、元気なうちに登録しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 子の看護等休暇は有給ですか?無給ですか?
法律上は有給・無給の定めはなく、会社の就業規則によります。有給としている企業もあれば、無給の企業もあります。無給の場合は年次有給休暇と組み合わせて使うのが現実的です。まず自社の就業規則を確認しましょう。
Q2. 夫婦ともに看護休暇を同じ日に取ることはできますか?
制度上は、夫婦それぞれが自分の勤務先で看護休暇を取得できます。ただし、同じ子に対して同じ日に2人とも取る必要性は通常低いため、「半日シフト」で分担するほうが年間日数を温存できます。
Q3. 看護当番制を始めたいけど、妻(夫)が「私のほうが仕事の融通がきく」と言って応じてくれません
「融通がきく」は裏を返せば「いつも自分が休んでいる」ということです。まず1ヶ月間の看護回数を記録し、数字で見せることから始めてください。わが家でも名もなき家事の可視化と同じ手順で、事実ベースの会話に持ち込んだことで再設計が進みました。
Q4. 病児保育に預けるのはかわいそうですか?
病児保育は看護師が常駐し、体調に応じた個別ケアが提供される専門施設です。「熱があるのにかわいそう」と感じる気持ちは自然ですが、親が仕事を無理に休んでイライラしながら看護するより、専門スタッフに安心して預けるほうが子どもにとっても良い環境になることは少なくありません。
Q5. 保育園からの呼び出し頻度はいつ頃落ち着きますか?
個人差はありますが、一般的に入園1年目が最も多く、2年目以降は徐々に減る傾向にあります。とくに0〜1歳クラスは集団生活で初めて様々な感染症に触れるため、月1〜2回の呼び出しも珍しくありません。年少(3歳)クラスになると大幅に減るケースが多いです。
まとめ:仕組みで解決すれば、夫婦の感情を守れる
「どっちが休む?」問題は、毎回その場で判断しようとするから揉めるのであって、仕組みにしてしまえば感情の消耗を最小化できます。
わが家の看護当番制をまとめると:
- 月初に奇数週・偶数週で一次担当を決める
- 「絶対動けない日」だけ前週日曜に交換する
- 長引くときは「半日シフト」で2人の仕事を守る
そして職場への伝え方は「報告+対応策」「チャットで見える化」「復帰後のフォロー」の3ステップ。
子どもの発熱は親のせいでも、仕事のせいでもありません。制度を正しく知り、夫婦の役割分担を仕組みで回し、職場との信頼関係を維持する──この3つを整えておけば、「呼び出しの電話」が鳴っても、少なくとも夫婦の間では穏やかに対応できるはずです。






