実際に育休取った身として言うと、時短勤務に入るときよりも「フルタイムに戻す」と決めるときのほうが、正直ずっと難しかったです。
僕は息子が1歳のときに育休から時短復職して、もうすぐ2年になります。息子は年少クラスに上がり、法律上の時短勤務義務期間(3歳未満)の区切りが近づいてきました。会社からも「今後の働き方どうする?」と聞かれるタイミングです。
でも、ここで「じゃあフルタイムに戻します」と即答できるパパは少ないんじゃないでしょうか。少なくとも僕はできませんでした。なぜなら、時短勤務中に構築した家庭のオペレーション全体が、17時退勤を前提に組まれているからです。
「フルタイム=元に戻る」ではない
時短に入る前と今では、家庭の状況がまったく違います。保育園の送迎ルーティン、夕食の準備、寝かしつけまでの導線──すべてが「パパが17時に退勤する」前提で最適化されている。これを崩すということは、妻の生活も巻き込んで再設計するということです。
僕の場合、朝6時起床→子の朝食→8時半までに保育園送り→出社、17時退勤→お迎え→夜の家事、という流れが1年半かけてようやく安定したところでした。復職初週に3回タイムラインが破綻して妻と再設計した経験があるので、「また一からやり直しか」という気持ちは正直ありました。
妻と話して決めた「5つの確認事項」
フルタイム復帰を検討し始めたとき、妻と週末のカフェで2時間かけて話し合いました。以下が、僕たちが整理した5つの確認事項です。
確認1:お迎えの代替手段は確保できるか
フルタイムに戻ると、保育園のお迎え18時台が標準になります。延長保育の枠は確保できるか、妻のシフトとの兼ね合いはどうか。僕たちの場合、妻が週2日はリモートワーク可だったので、その日は妻がお迎え、残り3日は僕が18時ギリギリで迎えに行く計算をしました。
確認2:収入増と支出増を正確に比較したか
フルタイムに戻れば当然手取りは増えます。ただし、延長保育料(月5,000〜15,000円程度)、帰宅が遅くなることによる食費増(惣菜・外食頻度UP)、疲労による週末の外注費(家事代行など)も加味する必要があります。我が家の試算では、手取り増は月約5万円、支出増は月約1.5万円。差し引き3.5万円のプラスでした。
確認3:キャリア機会の変化を見込めるか
上司にどう切り出したかなんですけど、1on1で「フルタイムに戻した場合、アサインの幅はどう変わりますか?」と率直に聞きました。答えは「出張を含む案件にも入れるようになる」。これは時短中には絶対に得られなかった機会です。ただし、いきなり出張が入ると家庭が回らないので、「最初の3ヶ月は日帰り出張のみ」と条件をつけました。
確認4:2025年改正法の柔軟措置を使えるか
2025年10月施行の改正育児介護休業法では、3歳〜就学前の子を持つ労働者に対して、企業は以下の5つの措置のうち2つ以上を導入する義務があります。
- フレックスタイム制・時差出勤
- テレワーク(月10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇(年10日以上)
- 短時間勤務制度
僕は人事に確認しに行って、自社がフレックスタイム制と養育両立支援休暇を導入済みであることを把握していました。つまり「時短をやめてフルタイム+フレックス」という選択肢があるわけです。これが段階的復帰の鍵になりました。
確認5:妻のキャリアプランとの整合性
見落としがちですが、僕がフルタイムに戻ることは、妻の側に家庭負荷が移動することを意味します。妻自身のキャリアプラン(昇格試験の時期、プロジェクトの繁忙期など)と衝突しないか。僕たちは「半年ごとにお互いの仕事の波を共有して、負荷のバランスを調整する」というルールを決めました。
「いきなりフル」ではなく「段階的復帰」を設計する
5つの確認事項を整理した結果、僕たちが選んだのは3ステップの段階的復帰でした。
ステップ1(1〜2ヶ月目):時短+フレックス併用
まずは時短勤務を続けながら、出社時間をフレックスで前倒し。8時出社→16時退勤にして、お迎えの余裕を確保しつつ勤務時間を30分延ばしました。
ステップ2(3〜4ヶ月目):フルタイム+週2テレワーク
時短を解除してフルタイムに切り替え。ただし週2日はテレワークで、その日は18時に仕事を終えてすぐお迎えに行ける体制に。通勤時間がなくなる分、実質的に時短と同じ余裕が生まれます。
ステップ3(5ヶ月目〜):フルタイム+月1テレワーク
テレワーク頻度を減らし、通常のフルタイム勤務に移行。お迎えは延長保育+妻との分担で安定させる。ここまで来ると、新しいオペレーションが「普通」になっています。
社会保険料の「逆転」に注意
時短復職のリアルは、給料だけじゃなく社会保険料にも出ます。時短勤務中は「養育期間の従前標準報酬月額みなし措置」で、将来の年金額が下がらないように保護されています。フルタイムに戻すと標準報酬月額が上がり、保険料も増えますが、これは将来の年金額にもプラスに反映されるので長期的にはメリットです。
ただし、フルタイム復帰から4ヶ月目に随時改定(月額変更届)で保険料が上がるタイミングがあるので、「手取りが急に減った?」と焦らないよう事前に把握しておきましょう。
上司への切り出し方テンプレート
制約を先に明示して提案する──これは時短勤務中に僕が学んだ最大の教訓です。フルタイム復帰の相談も同じです。
「〇月からフルタイムに戻したいと考えています。ただ、最初の2ヶ月は週2回のテレワークを併用させてください。お迎えの体制を段階的に移行したいためです。3ヶ月目以降は通常勤務に切り替える予定です。」
ポイントは「戻したい」という意志+「段階的に」という配慮+「期限付き」という見通しの3点セットです。上司が判断しやすい形で提示することで、前向きな反応を得やすくなります。
FAQ
Q1. 時短勤務からフルタイムに戻すのに会社の許可は必要?
法律上、時短勤務は労働者の「申出」で適用されるものなので、解除も本人の申出で可能です。ただし就業規則に切り替え手続きの規定がある場合もあるため、人事に確認しましょう。一般的には1ヶ月前までに申し出ることが多いです。
Q2. 段階的に戻す場合、育児時短就業給付金はどうなる?
2025年4月から始まった育児時短就業給付金は、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている人が対象です。子が2歳以上で時短をしている場合は対象外のため、段階的復帰の設計には影響しません。2歳未満で時短中の方は、フルタイムに戻すと給付金が終了する点に注意してください。
Q3. フルタイムに戻した後、やっぱり時短に再申請できる?
法律上は3歳未満の子がいる場合、再度の時短申請は可能です。また2025年改正法により3歳以降も柔軟措置が利用できます。ただし、頻繁な切り替えは職場の理解を得にくいため、段階的復帰で慎重に進めることをおすすめします。
Q4. 夫婦ともにフルタイムに戻すタイミングはずらすべき?
可能であればずらすことを強くおすすめします。同時にフルタイムに戻すと、家庭のオペレーション変更が一気に来て破綻リスクが高まります。我が家は僕が先に戻し、3ヶ月間の安定を確認してから妻の働き方を検討する順番にしました。
Q5. フルタイム復帰で保育園の「標準時間認定」に変更は必要?
多くの自治体では、保育の必要量を「保育標準時間」(最大11時間)と「保育短時間」(最大8時間)で区分しています。時短勤務中に短時間認定だった場合、フルタイム復帰で標準時間への変更申請が必要になることがあります。市区町村の保育課に確認しましょう。






