時短勤務で毎日17時に退勤していると、「今日飲みに行かない?」という誘いがじわじわプレッシャーになってきます。
断り続けて3ヶ月。ランチの輪に入れなくなったり、チームの雑談で話題についていけなかったり。「もしかして浮いてる?」と感じ始めたら、それは気のせいじゃないかもしれません。
実際に育休取った身として言うと、飲み会の問題は「行くか行かないか」の二択じゃなく、「どう参加するか」を設計する問題です。この記事では、半年育休→時短復職を経験した筆者が、家庭を壊さず・職場で浮かず・自分も消耗しない「戦略的つきあい」の3ルールを紹介します。
なぜ「全部断る」は長期的にリスクなのか
時短勤務中は17時以降のMTGにも出られないわけですから、飲み会なんて論外──と思いがちです。僕もそうでした。
ところが復職して半年ほど経ったころ、1on1で上司から「橘くん、最近チームの空気感つかめてる?」と聞かれました。正直、つかめていませんでした。時短で17時に帰る生活をしていると、夕方以降のインフォーマルな情報交換から完全に切り離されるんです。
業務上の情報はSlackで追えます。でも「あのクライアント、担当者が変わって空気が変わった」「来期の組織改編で○○チームが統合されるらしい」──こうした非公式な温度感は、飲み会やランチの雑談でしか手に入らない。
全部断り続けると、3つのリスクが積み上がります。
- 情報格差:チームの文脈を読めなくなり、的外れな提案をしてしまう
- 信頼の目減り:「あの人は付き合いが悪い」という空気が固定化する
- 機会損失:重要プロジェクトの打診がカジュアルな場で行われ、自分だけ声がかからない
ただし、これは「全部行け」という話ではまったくないです。毎回参加すれば家庭が破綻します。朝6時に起きて保育園に送り、17時に退勤して迎えに行く生活をしている以上、夜の予定は月に何回も入れられません。
ルール1:月1回だけ「これは行く」を事前に宣言する
最も効果があったのは、月初に「今月はこの1回だけ参加します」と上司とチームに宣言する方法でした。
僕の場合、月1回の部署懇親会かプロジェクトの打ち上げ、どちらか1つを選んでいました。月初の1on1で「今月は15日の懇親会に出ます。それ以外の突発的な誘いは基本お断りします」と先に伝えます。
上司にどう切り出したかなんですけど、ポイントは「すみません行けません」ではなく「この日は行きます」と参加のほうを宣言すること。制約を先に明示して、その範囲で最大限つきあう姿勢を見せるわけです。
復職面談で「17時以降のMTGには参加できません」と明言したときと同じで、制約を先に出すと、周囲はその枠の中で調整してくれるんです。上司からも「じゃあその日は重要な話もまとめてするね」と言ってもらえました。
妻との事前調整も必須
月1回と決めたら、月初に妻と「今月は○日の夜、1回だけ飲み会に行く」とカレンダーに入れます。その日は妻がワンオペになるので、前日までに連絡帳を9割記入しておく・翌朝は自分が保育園送りを担当するなど、負担の非対称をあらかじめ埋めておきます。
これは復職初週に朝のタイムラインが3回破綻して妻と再設計したときの学びと同じで、「自分が不在のときの負荷設計」まで含めて初めて計画として成立するんです。
ルール2:滞在時間は90分で切る──「1次会の前半だけ」を定型化する
月1回の参加日でも、23時まで飲んでいたら翌朝が壊れます。ここでも事前宣言が効きます。
- 参加前に「20時半には出ます」とチームに伝えておく
- 開始から90分を目安に「そろそろ失礼します」と退席
- 2次会は最初から行かない前提にする
最初は「えっ、もう帰るの?」と言われましたが、3ヶ月も続けると「橘は前半だけ来る人」と認知が定着します。定型化すると、毎回の判断コストがゼロになるんです。
保育園送迎で顔を合わせる他のパパに聞いても、「1次会だけ」「90分ルール」を決めている人は多かったです。
ルール3:翌朝に「昨日はありがとう」のフォローを入れる
これは参加した日も、断った日も両方やります。
参加した翌朝:Slackで「昨日はありがとうございました。○○の話、参考になりました」と一言。90分で帰った「途中退席感」を消す効果があります。
断った翌朝:「昨日は行けずすみません。どんな話が出ましたか?」と聞く。これだけで「付き合いが悪い人」から「来られないけど気にかけてる人」に印象が変わります。
翌朝のフォローは30秒で終わります。でもこの30秒が、情報格差と信頼の目減りを同時に防いでくれる。コスパで言えば最強の施策です。
2025年4月の法改正で「つきあい方」も変わる
2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、いくつか重要な変更がありました。
- 出生後休業支援給付金の創設:育休中の手取りが実質100%に近づく新制度がスタート。男性の育休取得のハードルが下がりました
- 取得率の公表義務が300人超企業に拡大:従業員300人超1,000人以下の企業にも男性育休取得率の公表が義務化。企業側も「男性が育休を取る」ことを前提にした制度設計に動いています
- 2023年度の男性育休取得率は30.1%:前年の17.13%から大幅に上昇し、初めて3割を突破しました
育休を取る男性が増えれば、時短復職する男性も増えます。つまり「17時に帰るパパ」は今後もっと普通になる。飲み会のつきあい方も、個人の「断る技術」から組織の「包摂の設計」へとシフトしていく過渡期です。
まとめ:断ることと参加することを「設計」する
時短勤務中の飲み会は、行くか断るかの感情的な判断をするとどちらにしても消耗します。大切なのは事前に設計してルール化すること。
- 月1回だけ「行く日」を事前宣言する(制約の明示+参加のコミット)
- 滞在は90分で切る(定型化で判断コストをゼロに)
- 翌朝30秒のフォローを入れる(情報格差と印象の両方をケア)
制度を使うことに謝る必要はない。でも、制度の制約の中でつながりを維持する工夫は、自分のキャリアを守るためにも必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 時短勤務中に飲み会に参加した時間は残業扱いになりますか?
A. 自由参加の飲み会は原則として労働時間に含まれません。ただし、上司から「業務命令」として参加を指示された場合や、実質的に参加が強制されている場合は労働時間と認められる可能性があります。判断に迷う場合は、人事部門に確認しましょう。
Q2. 飲み会に月1回も行けない月はどうすればいいですか?
A. 子どもの体調不良などで月1回すら難しい月はあります。その場合はランチや15分のコーヒーブレイクに切り替えましょう。大事なのは「インフォーマルな接点をゼロにしない」こと。飲み会だけがコミュニケーションの手段ではありません。
Q3. パートナーが飲み会参加に反対する場合はどう説得すればいいですか?
A. 「説得」ではなく「交渉」です。月1回・90分と上限を決めたうえで、その日の家事育児の代替案(前日の準備、翌朝のワンオペ担当)をセットで提示しましょう。「キャリアのために必要な投資」と説明するより、「この日の負担はこう埋める」と具体策を示すほうが納得感があります。
Q4. 2025年4月の出生後休業支援給付金は、すでに育休を終えた人も対象ですか?
A. 出生後休業支援給付金は2025年4月1日以降に育児休業を開始した方が対象です。すでに育休を終えて復職している場合は対象外となります。詳しくは厚生労働省の育児休業制度特設サイトで確認してください。
参考文献
- 厚生労働省「育児休業制度特設サイト:法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/law-amendment/ - 厚生労働省「男性の育児休業取得率等の公表について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533_00006.html - ニッセイ基礎研究所「男性の育休取得の現状(2023年度)─過去最高の30.1%へ」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=79358 - 厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001029776.pdf




