息子が年少に上がるタイミングで、会社から「今後の働き方どうする?」と聞かれた。法定の時短勤務義務期間は子が3歳未満まで。うちの息子はもうすぐ3歳の壁を超える。
正直に言うと、いきなりフルタイムに戻す自信がなかった。朝6時に起きて息子の朝食を作り、8時半までに保育園に送り届けて出社、17時に退勤してお迎え──このルーティンが回っているのは、時短勤務という枠があるからだ。フルタイムに戻したら、このオペレーション全体が崩壊するんじゃないか。
実際に育休取った身として言うと、フルタイム復帰は「自分の働き方」だけの問題じゃない。家庭のオペレーション全体の再設計を伴う。だから僕は、妻と週末に2時間かけて話し合い、5つの確認事項を整理したうえで「段階的復帰プラン」を設計した。
時短勤務の法定期間はいつまで?企業独自制度との違い
まず前提を整理する。育児・介護休業法で事業主に義務付けられている短時間勤務制度の対象は「3歳に満たない子を養育する労働者」だ。つまり、子どもが3歳の誕生日を迎えた時点で、法律上の時短勤務義務は終了する。
ただし、これはあくまで法定の最低ライン。企業によっては「小学校入学まで」「小学3年生まで」など、独自に期間を延長しているケースも多い。まずは自社の就業規則で育児関連規定を確認すべきだ。僕の場合、人事に直接聞きに行って就業規則の最新版を取り寄せた。待っていても誰も教えてくれないので、自分から動くのが最速だった。
2025年10月施行の改正法で「3歳の壁」は緩和された
大きな追い風がある。2025年10月施行の改正育児介護休業法では、3歳以上〜小学校就学前の子を養育する労働者に対し、企業は以下の5つから2つ以上の措置を導入する義務が新設された。
- フレックスタイム制度または時差出勤制度
- テレワーク(月10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇(年10日以上)
- 短時間勤務制度
つまり、3歳を過ぎても「いきなりフルタイム+通常勤務に戻る」以外の選択肢が法律で保障されるようになった。僕はこれを知ったとき、フルタイム復帰の不安がかなり軽くなった。
フルタイム復帰前に妻と整理した5つの確認事項
制度面の選択肢がわかったところで、次は家庭の実態に合わせた判断が必要だ。僕が妻と整理したのは以下の5項目。
確認1:お迎えの代替手段はあるか
時短勤務中は17時退勤→保育園お迎えが自分の担当だった。フルタイムに戻すと退勤は18時以降になる。延長保育の時間と料金、ファミリーサポートの登録状況、祖父母の対応可能性をリストアップして、「毎日確実にお迎えできる体制」を夫婦で確認した。
確認2:収入増と支出増の正確な比較
フルタイムに戻せば基本給は戻る。しかし、延長保育料の増加、ファミサポ利用費、疲労回復のための外食・総菜費の増加など、支出も増える。上司にどう切り出したかなんですけど、まず手取りシミュレーションを妻と一緒にやったんです。育休前に5ステップで手取りを試算した経験がここで活きた。「年収は上がるが、手取りの純増は思ったほどではない」ことを数字で把握できた。
確認3:キャリア機会はどう変わるか
時短勤務中は重要プロジェクトのアサインが見送られがちだった。1on1で手を挙げ続けて企画フェーズにはアサインされたが、フルタイムに戻ればフルスコープで参加できる。ただし、それは「制約なしで何でもやります」という期待値が復活することも意味する。キャリア機会の増加と家庭負荷の増加、そのバランスを夫婦で話し合った。
確認4:2025年改正法の柔軟措置で使えるものは何か
上述の通り、僕は人事に「うちはどの措置を導入したんですか?」と聞きに行った。結果、自社はフレックスタイム制度と養育両立支援休暇を導入済みだった。これが段階的復帰の中間ステップとして使えることがわかった。
確認5:妻のキャリアプランとの整合性
見落としがちだが最も重要なポイント。僕がフルタイムに戻ることで、妻の働き方にどう影響するか。お迎えの分担が変われば、妻の残業可能時間も変わる。夫婦のフルタイム復帰タイミングはずらすほうが家庭の安定性が高い。僕たちは「まず僕がフレックス+フルタイムで半年運用し、安定したら妻も勤務時間を延ばす」という順序を決めた。
「いきなりフルタイム」ではなく3ステップの段階的復帰プラン
5つの確認を踏まえて設計したのが、以下の段階的復帰プランだ。
ステップ1:時短+フレックス(移行準備期・1〜2ヶ月)
時短勤務のまま、フレックスタイム制度を併用開始。コアタイム内で勤務しつつ、週1〜2日は始業を30分早めて退勤を30分遅らせる「擬似フルタイム日」を作った。家庭のオペレーションが耐えられるか、お迎えの代替手段が機能するかをテストする期間だ。
ステップ2:フルタイム+週2テレワーク(本格移行期・3〜6ヶ月)
フルタイムに切り替えつつ、週2日のテレワークで通勤時間をゼロにする日を確保。テレワーク日は往復80分の通勤がなくなるため、お迎えにも余裕が生まれる。保育園の急な呼び出しにも15分で対応可能だ。
ステップ3:フルタイム通常勤務(安定運用期)
ステップ2が半年安定したら、必要に応じて出社日を増やす。ただし、テレワーク日を完全にゼロにする必要はない。改正法の柔軟措置は小学校就学前まで使える。
このプランを上司に「報告+提案」フォーマットで伝えた。意志+配慮+期限の3点セットで切り出すと上司は判断しやすい──育休取得を切り出したときに学んだ方法論がここでも効いた。上司からは「段階的にやるなら安心」と前向きな反応を得られた。
段階的復帰で見えてきた3つの気づき
気づき1:家計への影響は「年収」ではなく「月のキャッシュフロー」で見る
フルタイム復帰で年収は回復するが、社会保険料の標準報酬月額が上がるタイミングには注意が必要だ。特にフルタイム復帰1年目は、育児時短就業給付金(2歳未満対象)が終了し、住民税も前年所得ベースで計算される。月単位のキャッシュフローで家計を管理しないと「年収は上がったのにお金が足りない」という感覚に陥る。
気づき2:朝ルーティンの再設計が必要
時短勤務中に安定していた朝のルーティンは、フルタイムに戻すと出社時間が変わるため再設計が必要になる。僕は復職初週に朝のタイムラインが3回破綻した経験があるので、今回はステップ1の段階で少しずつ朝の時間を前倒しした。いきなり変えるのではなく、1週間に10分ずつ調整するのがコツだ。
気づき3:「戻す」のではなく「次の働き方を選ぶ」と捉える
フルタイム復帰を「元に戻す」と考えると、育休前の働き方が基準になってしまう。でも、育休と時短勤務を経た今の自分は、以前とは違う。制約下で成果を出すスキル、朝のタスク宣言と退勤前の進捗報告の習慣、家庭のオペレーション設計力──これらは時短勤務中に身につけた武器だ。フルタイムに戻ったからといって手放す必要はない。
よくある質問(FAQ)
Q1. 時短勤務は子どもが3歳になったら自動的に終了する?
法定の義務期間は3歳未満までですが、企業独自の制度で延長しているケースが多くあります。まず自社の就業規則を確認し、人事に問い合わせることをおすすめします。また、2025年10月施行の改正法により、3歳以降も柔軟措置(フレックス・テレワーク等)が利用可能になっています。
Q2. フルタイムに戻すと保育園の保育料は変わる?
認可保育園の保育料は世帯の住民税額に基づいて決まるため、フルタイム復帰による収入増が翌年度の保育料に反映される可能性があります。ただし3歳〜5歳児クラスは幼児教育・保育無償化の対象です。延長保育料は別途かかるため、利用頻度を事前に見積もっておきましょう。
Q3. 段階的復帰を上司に提案して断られたらどうする?
2025年改正法の柔軟措置(フレックス・テレワーク等)は企業に導入義務があり、労働者には利用する権利があります。まずは自社の導入状況を人事に確認し、就業規則の根拠を持って提案しましょう。試行期間(例:3ヶ月)を設けた提案にすると、上司も判断しやすくなります。
Q4. 養育期間標準報酬月額特例はフルタイム復帰後も使える?
この特例は、3歳未満の子を養育する期間中の報酬が下がった場合に、将来の年金額を下げないための措置です。子どもが3歳になるまで適用されるため、フルタイム復帰のタイミングによっては申請を忘れずに。人事部門への自己申告が必要です。





