息子が年少に上がったとき、僕の頭にずっとあったのは「時短勤務、いつまで使えるんだろう」という問いでした。
法律上、企業が時短勤務を義務づけられているのは子どもが3歳に達するまで。つまり3歳の誕生日前日で終了です。実際に育休取った身として言うと、この「3歳の壁」は復職してから初めてリアルに感じるものでした。時短で回していた朝6時起床→保育園送り→出社→17時退勤のルーティンが、ある日を境に使えなくなるかもしれない。その不安は、育休を取るかどうか迷っていたときと同じくらい大きかったです。
「3歳まで」は法定義務の下限──会社独自の延長制度がある場合も
まず整理しておきたいのは、育児・介護休業法が定める時短勤務の義務は「3歳に満たない子を養育する労働者」が対象という点です。これは全企業に課された最低ラインであって、上限ではありません。
実際に、就業規則で「小学校入学まで」「小学3年生まで」と延長している企業は少なくありません。厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、法定を上回る期間を設けている事業所は3割弱存在します。つまり、「3歳で終わり」は法律上の話であって、あなたの会社がどうかは別の話です。
ここで重要なのは、会社が延長制度を持っていても、誰かが教えてくれるとは限らないこと。上司にどう切り出したかなんですけど、僕の場合は人事に自分から聞きに行くところから始まりました。
2025年10月改正で「3歳の壁」は法律的に緩和された
2025年10月に施行された改正育児・介護休業法は、3歳以降の働き方に大きな変化をもたらしました。具体的には、3歳から小学校就学前の子を養育する従業員に対して、以下の5つの措置から2つ以上を企業が導入する義務が新設されたのです。
改正法で義務化された5つの柔軟措置
- 始業時刻等の変更(フレックスタイム制度・時差出勤制度)
- テレワーク等(月10労働日以上、原則時間単位で利用可)
- 保育施設の設置運営等(ベビーシッターの手配・費用負担を含む)
- 養育両立支援休暇の付与(年10日以上、原則時間単位で取得可)
- 短時間勤務制度(1日の所定労働時間を原則6時間とする)
注目してほしいのは、5番目に「短時間勤務制度」が入っていること。つまり、会社が5つのうちの1つとして時短勤務を選んでいれば、3歳以降も時短を使える可能性があるのです。
ただし、これは「すべての会社で時短が延長される」という意味ではありません。会社は5つの中から2つ以上を選んで導入すればよいので、時短勤務を選ばずにフレックスと養育両立支援休暇を導入する、というパターンもありえます。
僕が人事に確認しに行った話──制度は待っていても降りてこない
息子が年少になり、法律上の時短勤務義務期間(3歳未満)の区切りが近づいた頃。改正法の施行を知って、僕がまずやったのは人事部門に直接聞きに行くことでした。
「うちの会社はこの5つのうちどれを導入したんですか?」
この一言を言うのに、正直ちょっと勇気がいりました。でも、制度改正は待っていても誰も教えてくれません。就業規則の最新版を取り寄せて、育児関連規定の改定箇所を自分で読み込む。実際に育休取った身として言うと、この「自分から情報を取りに行く姿勢」は育休取得時の経験から身についたものでした。
結果的に、僕の会社ではフレックスタイム制度と養育両立支援休暇の2つが導入されていることがわかりました。時短勤務そのものは3歳で終了しますが、フレックスで始業・終業時刻を調整できるようになった。これだけでも「3歳の壁」はかなり低くなりました。
会社への確認・交渉3ステップ
僕の経験を踏まえて、3歳の壁が近づいてきた方に実践してほしい3ステップを整理します。
ステップ1:就業規則の育児関連規定を取り寄せて読む
最初にやるべきは、自社の就業規則の最新版を入手することです。2025年10月の法改正に合わせて規定が改定されているはずなので、改定前の古い版を見ていると判断を誤ります。
確認すべきポイントは3つ。
- 時短勤務の対象年齢──法定の3歳未満か、会社独自に延長しているか
- 柔軟措置として何が導入されたか──5つのうちどの2つ以上が選ばれたか
- 所定外労働の免除(残業免除)の対象年齢──2025年4月から小学校就学前まで拡大
就業規則は社内イントラや総務部門で閲覧できるのが一般的です。見つからなければ人事に「育児関連規定の最新版を見せてください」と一言聞けば大丈夫です。
ステップ2:人事に「うちはどの措置を導入しましたか」と直接確認する
就業規則を読んでも、改正法対応が明確に書かれていないケースがあります。特に中小企業では、規定の改定が遅れていることも。その場合は人事担当者に直接確認するのが最速です。
聞き方のコツは、具体的に聞くこと。「育児の制度って何がありますか」だと回答が曖昧になりがちです。「2025年10月施行の育児・介護休業法改正で、3歳以降の柔軟措置が義務化されましたが、うちの会社はどの措置を導入しましたか」と聞けば、人事側も正確に調べて回答してくれます。
時短復職のリアルは、制度を知っているかどうかで大きく変わります。養育両立支援休暇(年10日)が導入されていれば、子どもの行事や急な体調不良にも有給とは別枠で対応できる。この制度を知らずに有給だけで乗り切ろうとすると、秋には有給が底をつくリスクがあるのです。
ステップ3:上司に「報告+提案」フォーマットで今後の働き方を伝える
制度を確認したら、次は上司への共有です。ここで大事なのは、「相談」ではなく「報告+提案」のフォーマットで切り出すこと。
僕が育休を上司に切り出したとき、業務引き継ぎのたたき台をA4一枚にまとめて1on1に持ち込みました。「来年◯月に育休を取ります」と意思表示した上で、復帰後の働き方まで提示した。あのときの経験が、今回の「時短終了後の働き方」を伝える場面でもそのまま活きています。
具体的には、以下の3点を1on1で伝えます。
- 意思:「◯月で時短勤務の法定期間が終了します。以降は会社の◯◯制度を利用して勤務を続けます」
- 配慮:「チームへの影響を最小限にするため、◯曜日は出社、◯曜日はフレックスで早めに退勤する運用を考えています」
- 期限:「まず3ヶ月間この形で運用し、状況を見て調整させてください」
意思+配慮+期限の3点セットで切り出すと、上司側も判断しやすい形になります。語尾を濁さず「利用します」と意思表示することが大事です。制度を使うことに許可は不要なのですから。
残業免除の拡大も見落とさないで
時短勤務の終了ばかりに目が行きがちですが、2025年4月から所定外労働の制限(残業免除)の対象が「小学校就学前まで」に拡大されています。改正前は3歳未満まででした。
これは地味だけどインパクトが大きい変更です。時短勤務が終わってフルタイムに戻っても、残業免除を申請すれば定時退勤を続けられる。17時退勤のリズムを崩さずにフルタイムの給与を得られる可能性があるということです。
僕の場合、時短勤務中に身につけた「朝のSlackタスク宣言・退勤前の進捗報告」の習慣は、フルタイム復帰後も続けています。成果を置いて帰る姿勢は、残業免除を使う場面でも武器になります。
3歳の壁は「終わり」ではなく「次の働き方を選ぶ」タイミング
時短勤務が終わることは、育児と仕事の両立が終わることではありません。むしろ、3歳の壁は「次の働き方のステージに移行するタイミング」と捉えるほうが正確です。
時短勤務→フレックス+残業免除→段階的にフルタイム復帰、という流れは、制度を組み合わせれば無理なく設計できます。大事なのは、制度を知ること、自分から確認しに行くこと、そして「相談」ではなく「報告+提案」で伝えること。
制度改正は待っていても誰も教えてくれません。でも、自分から動けば選択肢は想像以上に広がります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 時短勤務は法律上、何歳まで使えますか?
A. 育児・介護休業法が企業に義務づけている時短勤務の対象は「3歳に満たない子を養育する労働者」です(3歳の誕生日前日まで)。ただし、就業規則で対象年齢を拡大している企業もあるため、自社の規定を確認してください。また、2025年10月施行の改正法で、柔軟措置の1つとして3歳以降も時短勤務を導入している企業もあります。
Q2. 2025年改正法の「5つの柔軟措置」のうち、会社はどれを選ぶのですか?
A. 企業は5つの措置(①始業時刻等の変更 ②テレワーク ③保育施設の設置運営等 ④養育両立支援休暇 ⑤短時間勤務制度)のうち2つ以上を導入する義務があります。どれを選ぶかは企業判断です。従業員はその中から1つを選択して利用できます。自社がどの措置を導入したかは人事に確認してください。
Q3. 時短勤務が終わったら、いきなりフルタイムに戻るしかないのですか?
A. いいえ。2025年4月から残業免除(所定外労働の制限)の対象が小学校就学前まで拡大されています。フルタイム勤務に戻っても残業免除を申請すれば定時退勤が可能です。さらに、改正法の柔軟措置でフレックスやテレワークが使える場合は、それらを組み合わせて段階的にフルタイムへ移行する方法もあります。
Q4. 養育両立支援休暇とは何ですか?有給休暇とは別ですか?
A. 2025年10月施行の改正法で新設された休暇制度です。年10日以上、原則時間単位で取得可能で、3歳〜小学校就学前の子を養育する従業員が対象です。有給休暇や子の看護等休暇とは別枠の制度ですが、有給か無給かは企業の就業規則によります。導入されているかどうかは自社の人事に確認してください。
Q5. パート・契約社員でも柔軟措置の対象になりますか?
A. はい。改正法の柔軟措置は雇用形態にかかわらず、すべての従業員が対象です。パートタイマー、契約社員、管理監督者も含まれます。ただし、労使協定で適用除外にできるケースもあるため、自社の就業規則と労使協定を確認してください。
参考文献
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(令和7年4月1日・10月1日施行)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001259367.pdf - 厚生労働省「育児休業制度特設サイト 法改正のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/ikuji/law-amendment/ - BUSINESS LAWYERS「2025年4月・10月施行 育児・介護休業法改正のポイント解説」
https://www.businesslawyers.jp/articles/1442






