FP相談でよく聞かれるのが「教育費を貯めたいのに余裕がない」という相談です。家計を見せてもらうと、食費や日用品は頑張って切り詰めているのに、保険料だけで月2万円以上払っているケースが驚くほど多い。生命保険文化センターの2024年度調査によると、子育て世帯(2人以上世帯)の生命保険加入率は89.2%で、子ども2人の家庭では保険料が月2万2,000〜3万2,000円に達するのが一般的です。
結論から言うと家計の見直しが先──特に保険料は「公的保障ですでにカバーされている金額」を引いてから考えるだけで、月5,000〜10,000円が教育資金の積立に回せるケースが少なくありません。年間にすれば6〜12万円。18年間続ければ100万円を超える差になります。
子育て世帯が知らない「すでにある保障」4つの柱
保険を見直す前に、まず公的保障で何がカバーされているかを整理しましょう。FP相談で「こんなに出るんですか?」と驚かれる制度が4つあります。
①遺族年金(遺族基礎年金+遺族厚生年金)
会社員の夫が亡くなった場合、18歳未満の子がいる配偶者には遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給されます。2026年度の支給額は以下のとおりです。
- 遺族基礎年金:年84万7,300円+子の加算(第1子・第2子:各24万3,800円、第3子以降:各8万1,300円)
- 遺族厚生年金:報酬比例部分(年収600万円の会社員なら年約40万円が目安)
たとえば年収600万円の会社員で子ども2人の場合、遺族年金だけで年間約173万円(月約14.4万円)が支給されます。これは手取りではなく非課税です。
②高額療養費制度
入院や手術で医療費が高額になっても、自己負担には月ごとの上限があります。年収約370〜770万円(区分ウ)の場合、2026年8月改正後でも月の自己負担上限は約8万7,000円。さらに同一世帯で年間3回以上該当すると4回目以降は約4万4,400円に下がります(多数回該当)。
③傷病手当金
会社員が病気やケガで働けなくなった場合、健康保険から給与の約3分の2が最長1年6カ月支給されます。月収30万円なら月約20万円。民間の就業不能保険を追加する前に、まずこの制度を確認すべきです。
④団体信用生命保険(団信)
住宅ローンを組んでいる場合、契約者が亡くなるとローン残高がゼロになる団信がほぼ全ての住宅ローンに付帯しています。残高3,000万円のローンなら、それだけで3,000万円の死亡保障を持っているのと同じです。
FP流3ステップ:公的保障を引いて「本当の不足額」を計算する
うちの長女のとき実際に、夫婦の保険を全部テーブルに並べて見直しをしました。独身時代に加入した保障と公的制度の重複に気づかないまま払い続けていた保険料は、夫婦で月約1万円。年間12万円が教育資金に回せる計算でした。この経験をもとに、FP相談でも使っている3ステップをご紹介します。
Step 1:遺族の必要生活費を計算する
配偶者が亡くなった後の生活費は、現在の生活費の7割が目安です。
- 現在の月の生活費(住居費を除く):25万円 → 遺族の生活費:約17.5万円
- 末子が独立するまでの年数:15年(次女が年中の場合)
- 必要総額:17.5万円 × 12カ月 × 15年 = 3,150万円
- 教育費(3児分の残額):約1,500万円(進路により変動)
- 合計必要額:約4,650万円
Step 2:公的保障+既存資産を引く
Step 1の必要額から、すでにカバーされている金額を引きます。
- 遺族年金(15年分):173万円 × 15年 = ▲2,595万円
- 団信(住宅ローン残高):▲2,500万円(例)
- 配偶者の勤労収入(パート年120万円×15年):▲1,800万円
- 預貯金・NISA・学資保険:▲500万円(例)
- 差引後の不足額:4,650万円 − 7,395万円 = 不足なし(むしろプラス)
この計算例では、公的保障と既存資産だけで必要額をカバーできています。もちろん家庭ごとに数字は違いますが、「引き算してみたら高額な死亡保障は不要だった」というケースがFP相談では半数以上です。
Step 3:不足分だけ「掛け捨て」でカバーする
引き算で不足が出た場合は、収入保障保険(掛け捨て型)が子育て世帯にはコスパが良い選択肢です。月額10万円の保障で保険料は月2,000〜4,000円程度。終身保険や貯蓄型保険と比べて保険料が大幅に安く、浮いた分を教育資金に回せます。
見直しで浮いた保険料を「教育資金の自動積立」に回す仕組み
FP相談で強調しているのは、見直しで浮いた金額を同額で自動振替にすることです。保険料が月8,000円下がったら、その8,000円を教育資金口座への自動振替に設定する。これをしないと浮いた分が生活費に溶けます。
月8,000円を18年間、年利3%で運用すると約288万円。これは公立大学4年間の授業料(約243万円)を上回る金額です。保険の見直しだけで大学資金が準備できるのは、決して大げさな話ではありません。
見直し前の3つの注意点
- 新しい保険に加入してから古い保険を解約する:健康状態によっては新規加入できない場合があります。空白期間を作らないことが鉄則です。
- 学資保険の払込免除特約は残す価値がある:死亡時に以降の保険料が免除される特約は、掛け捨ての死亡保険にはない機能です。すでに加入している学資保険の払込免除特約は安易に手放さないでください。
- 共働きは夫婦それぞれ計算する:片方だけ見直して安心しがちですが、配偶者の収入に家計が依存している場合は両方の必要保障額を計算してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺族年金は専業主婦でももらえますか?
はい。会社員や公務員の配偶者が亡くなった場合、専業主婦(主夫)でも遺族基礎年金+遺族厚生年金を受給できます。ただし遺族基礎年金は18歳未満の子がいることが条件です。子がいない場合は遺族厚生年金のみとなります。
Q2. 自営業の場合は遺族厚生年金が出ないと聞きました。保険は多めに入るべきですか?
自営業(国民年金のみ)の場合、遺族厚生年金は支給されず遺族基礎年金のみになります。傷病手当金もありません。この場合は民間保険で手厚くカバーする必要があり、収入保障保険+就業不能保険の組み合わせを検討してください。
Q3. 住宅ローンを組んでいない場合、団信がないので死亡保障を増やすべきですか?
賃貸の場合は住居費の保障がない分、必要保障額が大きくなる傾向があります。ただし、遺族年金と配偶者の収入を引いた上で計算してください。賃貸の住居費を含めても公的保障でカバーできるケースは少なくありません。
Q4. 保険の見直しは何年ごとにすべきですか?
子育て世帯は子どもが生まれたとき・住宅を購入したとき・末子が小学校に入学したときの3つのタイミングで見直すのがおすすめです。ライフステージが変わると必要保障額も変わります。少なくとも3〜5年に一度は保険証券を並べてチェックしてください。
Q5. 貯蓄型保険をすでに10年払っています。今解約すると損しますか?
払込期間が長いほど解約返戻率は上がりますが、残りの保険料と保障内容を確認してください。返戻率が100%を超えていれば元本割れしません。ただし、解約して浮いた保険料を新NISAで運用するほうが18年間のトータルリターンでは有利になるケースが多いです。感情ではなく数字で判断することが大切です。





