2027年1月に始まるこどもNISA(年60万円・上限600万円・無期限非課税)。「児童手当を全額入れれば教育資金は安心」──そう考えている家庭は多いのですが、FP相談でよく聞かれるのが「中学受験の塾代を払おうとしたらこどもNISAから出せないんですか?」という質問です。

こどもNISAは12歳未満では原則引き出し不可。一方、中学受験の塾代は小4(10歳前後)から本格化し、小6までの3年間で200〜300万円に達します。この12歳制限と教育費ピークのタイミングがぶつかる構造に、うちの長女のとき実際に年表を作って初めて気づきました。

結論から言うと家計の見直しが先──こどもNISAに全額集中するのではなく、教育費を「預貯金」「こどもNISA」「親の新NISA」の3つの器に分けて管理する設計が、中学受験を視野に入れる家庭には必須です。

こどもNISAの12歳引き出し制限を正確に理解する

まず制度の引き出しルールを整理します。

年齢帯別の引き出しルール

年齢帯引き出し可否条件
0〜11歳原則不可災害等の特別な事由を除き引き出し不可
12〜17歳条件付き可本人のための支出であること+本人の同意書+親権者からの書類提出
18歳以降自由成人NISA口座に自動移管、いつでも引き出し可能

ポイントは「12歳未満は原則引き出し不可」という点。小4〜小6の中学受験準備期間がちょうど10〜12歳にあたり、塾代が最も膨らむ時期とこどもNISAの引き出し制限期間がほぼ重なります。

中学受験の費用ピークと12歳制限の衝突

中学受験の塾代は、学年が上がるにつれて急カーブで増加します。

学年年間費用(目安)子どもの年齢
小450〜70万円9〜10歳
小570〜100万円10〜11歳
小6100〜150万円11〜12歳
合計200〜300万円──

小4の入塾から小6の受験本番まで、3年間で200〜300万円。この費用をこどもNISAから出そうとしても、小4(10歳)・小5(11歳)の間は原則引き出し不可です。小6で12歳になっても、引き出しには本人の同意書や書類提出が必要で、月謝の支払いに使うには手続きが煩雑です。

「3つの器」で教育費を分けて管理する設計

こどもNISAに全額集中するリスクを回避するために、教育費を使う時期と引き出し条件で3つの器に分ける設計を提案します。

器1:預貯金──5年以内に使う教育費

  • 対象:入学準備費、塾代、中学受験費用など5年以内に使うお金
  • 置き場所:ネット銀行の普通預金(2026年時点で0.30〜0.75%)
  • 目安:中学受験予定なら小1時点で100〜150万円を目標に積立開始

元本保証で、いつでも引き出せるのが最大のメリット。中学受験の塾代は予測しにくい季節講習の追加費用もあるため、流動性を最優先にします。

器2:こどもNISA──大学進学以降の教育費

  • 対象:大学の授業料、入学金など18歳以降に使うお金
  • 投資枠:年60万円、上限600万円(無期限非課税)
  • ポイント:12歳まで引き出せないことを逆手に取り、長期運用の「守りの箱」として活用

0歳から始めれば18年間の複利効果が期待できます。年利3%で月3万円を18年間積み立てると約860万円(元本648万円+運用益約212万円)。引き出し制限があるからこそ、途中で取り崩すリスクがなく、大学費用の確実な備えになります。

器3:親の新NISA──中間期の調整弁

  • 対象:中学〜高校の教育費、こどもNISAで足りない分の補填
  • メリット引き出し制限なし。必要なときにいつでも売却・引き出しが可能
  • 使い方:夫婦で新NISAの目的を分担し、片方を教育資金用、片方を老後資金用にすると管理が明確

親の新NISAは引き出し制限がないため、中学受験の追加費用や高校の予想外の出費にも対応できます。こどもNISAの枠を超えた分は、親のNISAで補完する設計です。

中学受験を予定する家庭の配分モデル

月3万円の教育資金積立を例に、中学受験予定の家庭向け配分を示します。

月額目的引き出し
預貯金1.5万円塾代・中学入学準備いつでも可
こどもNISA1.0万円大学費用12歳以降(条件付き)
親の新NISA0.5万円中間期の調整弁いつでも可

中学受験を予定しない家庭なら、預貯金の比率を下げてこどもNISAの比率を上げる調整が可能です。大切なのは「全額をひとつの器に入れない」こと。FP相談1,500件の実績から見ても、教育資金と老後資金を同じNISA口座で管理すると目的別の残高が見えなくなり、取り崩し判断を誤るリスクがあります。

2027年開始前に準備すべき3つのこと

1. 児童手当の専用口座を作る

児童手当を生活費口座と分離し、教育資金の原資として可視化します。0歳から18歳まで全額貯蓄すれば約234万円。ここからこどもNISAへの振替原資を確保します。

2. 親の新NISAを先に開設する

こどもNISAは2027年開始ですが、親の新NISAはすでに利用可能です。こどもNISA開始前の「助走期間」として、親のNISAで教育資金の積立を始めておくことで、2027年以降にスムーズに切り替えできます。

3. 夫婦で「出口戦略」を共有する

「いつ・どの器から・いくら引き出すか」を夫婦で事前に合意しておきます。教育費で夫婦がもめる根本原因は、価値観の違いではなく同じ数字を共有していないことです。朝5時に起きてExcel家計簿を開く──とまではいかなくても、半年に1回、夫婦で教育資金マップを確認する習慣を持つだけで、漠然とした不安は具体的な月額数字に変わります。

よくある質問(FAQ)

Q1. こどもNISAに全額入れて12歳以降に引き出すのはダメですか?

12歳以降は条件付きで引き出し可能ですが、書類提出が必要で月謝の支払いには不便です。また、引き出すと非課税枠が復活しない点も注意。大学費用に備えて長期運用を続けるほうが非課税メリットを活かせます。塾代は預貯金で準備するのが現実的です。

Q2. 中学受験しない家庭はこどもNISAに全額入れてもいいですか?

中学受験しない場合は12歳前の大きな教育費が発生しにくいため、こどもNISAの比率を高めても問題ありません。ただし、生活防衛資金(生活費6カ月分)と5年以内に使う教育費を預貯金で確保してからが前提です。

Q3. こどもNISAの年60万円枠を使い切れない場合はどうすればいいですか?

無理に枠を埋める必要はありません。児童手当(月1〜3万円)をベースに、余裕資金で上乗せする方針で十分です。親の新NISA枠が余っている場合は、そちらを優先するほうが引き出し制限がなく効率的です。

Q4. 15歳からこどもNISAを始めても意味はありますか?

運用期間は短くなりますが、18歳で成人NISA口座に自動移管されるため、枠の先取りとして意味があります。3年間でも年利5%なら約12万円の非課税メリットが見込めます。

参考文献