「先生、うちの教育資金って今のペースで足りますか?」

FP相談を12年やっていると、この質問、週に3回は聞きます。「足りるかどうか」って、なんとなく心配だけれど、具体的に計算したことがない、という方がほとんどです。

でも実は、確認に必要な数字はたった3つ。①現在の教育資金残高、②進路別の目標額、③月不足額──この3つを5分で出すだけで、「漠然とした不安」が「具体的な課題」に変わります。

2027年1月にはこどもNISA(仮称)がスタートする予定で、年間60万円まで非課税で積み立てられる制度が整ってきます。9月の今は、「現状を把握してから制度を活用するかどうか検討する」絶好のタイミング。ほら、やってみると意外とシンプルでしょ?

なぜ「今」確認する必要があるのか

「子どもがまだ小さいから、まだいい」──この発想が、一番コストがかかります。

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、子どもの教育にかかる費用は小学校〜高校だけで、公立コースでも約550万円、私立コースでは1,400万円を超えることがあります。大学まで含めると、国立大学でも最低700万円台、私立文系大学でも800万円台が現実的な必要額です。

問題は、これを「なんとなく積み立てている」だけでは、どれくらい不足しているのかが見えないこと。早めに「数字」を出した人ほど、選択肢が広がります。

数字① 現在の教育資金総額を書き出す

まず、今手元にある「教育用」のお金を全部リストアップしてください。

  • 子どもの名義の普通預金・定期預金
  • 学資保険の解約返戻金(現時点の額)
  • ジュニアNISA残高(2023年末で新規購入終了)
  • 児童手当で積み立ててきた分
  • 祖父母からの援助で貯めた分

「教育費専用口座」に分けていなくても、「子ども関連で貯めてきたお金」を全部ここに入れてください。合計が数字①(現在の教育資金残高)です。

参考として、児童手当を全額貯め続けると18年間で約234〜245万円になります(2024年10月拡充後)。「全部使ってしまっていた…」という方も多いですが、ここからでも遅くありません。

数字② 進路別の目標額を確認する

次に、お子さんの進路をざっくり想定して「必要な教育費の目標額」を出します。以下の早見表を参考にしてください。

進路パターン 小〜高の学習費(概算) 大学費用・4年間(概算) 目安の合計
公立コース+国立大 約550万円 約243万円 約800万円
公立コース+私立文系大 約550万円 約411万円 約960万円
一部私立+私立文系大 約800万円 約411万円 約1,200万円
中高一貫私立+私立理系大 約1,100万円 約540万円 約1,640万円

※小〜高の学習費は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」を基に概算(公立小学校:年間33.6万円、公立中学校:年間54.2万円等)。大学費用は文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査」および国立大学協会データより。一人暮らし費用(仕送り等)は含まず。

進路が全く未定でも、「とりあえず公立コース+私立文系で約1,000万円」を目標にしておけば、多くのケースで対応できます。これが数字②(目標額)です。

数字③ 月不足額を計算する

いよいよ核心です。月不足額の計算式はこれだけです。

(目標額 − 現在の教育資金残高)÷ 残り月数 = 月不足額

例えば、お子さんが現在6歳で、目標額1,000万円、現在の残高が100万円の場合:

  • 残り月数:大学入学(18歳)まで12年 × 12か月 = 144か月
  • 月不足額:(1,000万円 − 100万円)÷ 144か月 ≒ 月62,500円

「毎月6万円以上!?」と驚く方も多いですが、ここから学資保険の満期金やこどもNISAの運用益を見込んで差し引いて考えます。あくまで「今すぐゼロから積み立てた場合に必要な金額」なので、すでに積み立て中の金額は引いてください。

これが数字③(月不足額)。この3つが出れば、今日やるべきことが明確になります。

不足額を解消するCFP流3ステップ

月不足額が出たら、次のステップで対策を考えます。焦らなくていい、でも動かなくてもダメ(笑)。

ステップ1:固定費を1か所だけ見直す

月不足額が出ても、まず手をつけるのは「新しく何かを始める」ではなく、「今払っている固定費を1か所見直す」です。スマートフォン代・保険料・使っていないサブスクのどれか1つを見直すだけで、月5,000〜10,000円の余裕が生まれるケースは珍しくありません。

「全部一気に見直そう」とすると挫折します。1か所だけ、1週間以内にやる──これが現実的なペースです。

ステップ2:2027年1月のこどもNISAに備えて準備する

2027年1月からスタート予定のこどもNISA(仮称)は、年間60万円まで非課税で投資できる制度です。累積上限は600万円で、12歳になるまでは原則として引き出しができない仕組みになる見込みです。

今からできる準備は「証券口座の開設」と「月3〜5万円の感覚でシミュレーションしておくこと」。制度詳細が確定してから動こうとすると出遅れることがあるので、口座だけ先に作っておくのがおすすめです。

ステップ3:学資保険を「今」見直す

学資保険は2026年現在、主要各社の返戻率が127〜131%台まで回復しています。数年前(114〜120%台)と比べると、かなり魅力的になっています。ただし、加入できる年齢制限(多くの場合子どもが6歳まで)があるため、小さいお子さんをお持ちの場合は早めに検討する価値があります。

「学資保険かNISAかどっちがいいの?」という質問をよく受けますが、この2つは役割が異なります。学資保険は「元本割れしない確実な積み立て」、NISAは「非課税で運用益を狙う」もの。両方を使い分けるのが現実的です。

笠原家の「教育資金マップ」の話

私自身の話をすると、長男が小学校に上がったタイミングで、わが家の「教育資金マップ」を初めて作りました。当時の残高は約80万円。進路を「とりあえず公立コース+国立大」と仮定すると、目標800万円に対して720万円不足、残り12年で月5万円の積み立てが必要という計算が出ました。

「5万円か…きつい」と思ったのが正直なところ。でも実際に数字を出したことで「じゃあ学資保険で月2万円確定させて、残り3万円はどう工面するか考えよう」という具体的な行動に移れました。ほら、やってみると意外とシンプルでしょ?

漠然と「いつか足りなくなるかも」と心配し続けるより、5分で3つの数字を出す方が、ずっと楽になります。

よくある質問

Q1. 子どもが中学生になってしまいましたが、今からでも間に合いますか?

A. 残り月数が少なくなるほど、月の積み立て額は増えますが、間に合わない状況はほとんどありません。中学生(13歳)から大学入学(18歳)まで約60か月。たとえば不足額が300万円でも、月5万円の積み立てで届きます。また、高校・大学の奨学金や教育ローンという選択肢を組み合わせることで、より現実的な計画が立てられます。

Q2. こどもNISAはジュニアNISAと何が違うの?

A. 最大の違いは「引き出し制限」と「年間投資上限額」です。ジュニアNISAは18歳前の払い出しに制限がありましたが、こどもNISA(仮称)では12歳未満の引き出しが原則不可となる見込み(12歳以降は段階的に緩和)。年間上限もジュニアNISAの80万円から60万円になる予定です。一方で、累積上限600万円で長期にわたり非課税運用ができるため、教育資金の積み立てに適しています。

Q3. 学資保険とNISA、どちらを優先すべきですか?

A. 「確実に必要な教育費の基礎部分(大学初年度の入学金・授業料など)は学資保険で確保」「追加的な積み立てはNISAで運用益を狙う」という使い分けが現実的です。ただし、お子さんの年齢や家庭の資産状況によって最適解は異なります。月不足額が出たら、その内訳をどの手段で埋めるかをFPに相談すると具体的なプランが立てやすくなります。

Q4. 3つの数字を出したあと、FP相談をするなら何を持っていけばいい?

A. 持参するとスムーズなのは、①現在の預金・保険・NISAの残高一覧(通帳やアプリのスクリーンショットでOK)、②子どもの年齢と学校種別、③毎月の収支のざっくりとした把握(月いくら使っているか)の3点です。完全に揃えなくてもOK。「ざっくりとした数字」で構いません。

Q5. 教育資金の積み立てより住宅ローン返済を優先すべきでしょうか?

A. 家庭の状況によって大きく異なります。ただ、住宅ローンには団体信用生命保険(団信)がついていることが多く、万が一の場合にローンがなくなる仕組みがあります。一方、教育資金には「万が一の補填」がありません。両立が難しい場合は、まず月々少額でも教育資金の積み立てを「止めない」ことを優先し、繰り上げ返済は余裕ができたときの選択肢にするのが一つの考え方です。

参考文献・データソース

  • 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表)
  • 文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」(2024年公表)
  • 金融広報中央委員会「知るぽると:教育資金の準備」(2025年)
  • 国立大学協会「国立大学の授業料等について」
  • こども家庭庁「児童手当について」(令和6年10月改正版)