「大学じゃないから安い」は思い込みかもしれない

FP相談でよく聞かれるのが、「子どもが専門学校に行くって言い出したんですが、大学より安いですよね?」という質問です。結論から言うと──分野によっては4年制私立大学の半額以下で済むケースもありますが、美容・医療・IT系では300万円を超えることも珍しくありません。しかも専門学校は2年制が中心なので、積立できる期間が大学進学と比べて2年も短い。うちの長女のとき実際にシミュレーションしてみて、「もっと早く準備しておけばよかった」と痛感しました。

この記事では、分野別の学費データを整理したうえで、積立期間が短い家庭でも対応できるFP流の3ステップ資金設計を解説します。

専門学校の学費──分野別にどう違う?

文部科学省の調査や各校の公表データをもとに、主要分野の2年間総費用(入学金・授業料・施設費・実習費の合計目安)をまとめました。

分野 標準修業年限 初年度費用(目安) 総費用(目安)
ITエンジニア・情報処理 2年 130〜150万円 230〜280万円
ビジネス・経営・観光 2年 110〜130万円 200〜240万円
美容・ネイル・エステ 2年 160〜180万円 300〜340万円
調理・製菓 2年 140〜160万円 260〜310万円
医療事務・歯科衛生 3年 120〜140万円 340〜400万円
看護(専門学校) 3年 120〜150万円 380〜470万円
デザイン・マンガ・アニメ 2年 150〜170万円 280〜330万円

※入学金(20〜30万円程度)を初年度に含む。教材・実習用具は別途かかる場合あり。

4年制大学と比べると?

「専門学校なら安くなるはず」という前提を数字で確認しておきましょう。

進路 在学年数 総費用(目安) 1年あたり
国公立大学(4年) 4年 約250〜300万円 約65〜75万円
私立大学・文系(4年) 4年 約480〜560万円 約120〜140万円
私立大学・理系(4年) 4年 約560〜680万円 約140〜170万円
専門学校(2年・IT/ビジネス系) 2年 約200〜280万円 約100〜140万円
専門学校(2年・美容/デザイン系) 2年 約280〜340万円 約140〜170万円
専門学校(3年・看護/医療系) 3年 約380〜470万円 約125〜155万円

1年あたりのコストで見ると、専門学校は私立大学と大差ない分野も多い。ポイントは「在学年数が短い分、集中して支出が発生する」こと。これが「積立期間が短い問題」と重なり、家計を圧迫するリスクになります。

なぜ「積立期間が短い」のが問題か

子どもが「専門学校に行きたい」と言い出すのは、多くの場合、高校1〜2年生ごろ。そこから入学まで2年以内というケースも少なくありません。

仮に入学まで2年(24カ月)で250万円を積み立てるとすると、月あたり約10.4万円の積立が必要です。これを12カ月(1年前)に圧縮すれば月約20.8万円。多くの家庭にとって、短期集中の積立はかなり厳しい。

だからこそ、「今ある資産をどう使うか」と「今から積み立てられる分をどう増やすか」の両軸で設計する必要があります。

FP流3ステップ資金設計

ステップ1:進路が決まる前に「使える資産」を棚卸しする

まず現時点で教育費に充当できる資産を洗い出します。

  • 学資保険・こども保険の満期金・解約返戻金(予定額)
  • ジュニアNISA残高(2023年末で新規積立終了、2024年以降は非課税で保有継続可)
  • 親名義の普通預金・定期預金のうち教育費用に確保できる額
  • 祖父母からの教育資金贈与(一括贈与の非課税制度:1500万円まで)

「これだけある」と把握するだけで、月々の積立目標額が一気に下がることがあります。棚卸しが先、積立額の計算は後です。

ステップ2:不足分を「短期積立+奨学金の組み合わせ」で埋める

棚卸し後の不足額が100万円以上ある場合、純粋な積立だけで埋めようとせず、奨学金との組み合わせを検討します。

  • 日本学生支援機構(JASSO):専門学校生も利用可。第一種(無利子)は成績・家計基準あり。第二種(有利子)はより広い層が対象。
  • 都道府県・市区町村の奨学金:地域によっては返済不要の給付型あり。自治体の教育委員会ページで確認を。
  • 学校独自の特待生制度・入試特典:専門学校は学校ごとに差が大きい。AO入試や早期出願で授業料割引になるケースも。

奨学金は「借金」ではなく「資金調達の選択肢」として捉え直すことで、家計の無理な切り詰めを避けられます。ただし将来の返済負担が子ども本人にかかる点は必ず説明してあげてください。

ステップ3:今から積み立てる分は「目的別口座」で管理する

残りの期間で積み立てられる分は、生活費と完全に分けた専用口座に入れます。ここでよくある失敗が「なんとなく貯めていたら使ってしまった」というもの。FP相談でよく聞かれるのが「どの口座に入れればいいですか」という質問ですが、答えは「動かしにくい場所に置く」です。

  • ネット銀行の「目的別口座(ポケット)」機能
  • 積立定期(自動積立で手元に残らない設計)
  • 残り期間が1年以上あるなら、NISA成長投資枠でインデックスファンドの積立も選択肢(元本割れリスクは念頭に)

結論から言うと、家計の見直しが先で、積立額を決めるのはその後です。月3万円でも積み立てられれば、2年で72万円。奨学金や既存資産と組み合わせれば、ほとんどの分野で入学時の資金ショートは防げます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 専門学校でも教育ローンは使えますか?

はい。日本政策金融公庫の「教育一般貸付(国の教育ローン)」は、専門学校(専修学校の専門課程)も対象です。金利は固定で年1.95〜2.25%程度(時期により変動)、借入上限は350万円(一定条件で450万円)。在学中は利息のみ返済も可能です。申請は入学前から可能なので、早めに確認しておきましょう。

Q2. 学資保険は専門学校に使えますか?

契約内容によります。「大学進学時に満期」と設定している場合、専門学校入学(多くは18歳)のタイミングと一致することが多く、問題なく活用できるケースがほとんどです。ただし「大学4年分の給付型」の商品は、専門学校には給付されない場合があります。契約書・パンフレットで「専門学校(専修学校)」が対象かを必ず確認してください。

Q3. 祖父母からの援助を受ける場合、税金の注意点は?

祖父母から孫への教育資金一括贈与は、金融機関経由で専用口座を開設すれば1500万円まで贈与税が非課税になる制度があります(教育資金の一括贈与非課税制度)。ただし入学金・授業料・実習費など「教育のための費用」として使った証明(領収書)が必要です。この制度は2026年3月まで延長されていますが、制度の終了・変更があり得るため、活用する場合は早めに税理士やFPに相談することをおすすめします。

Q4. 専門学校在学中のアルバイトは奨学金の審査に影響しますか?

JASSOの奨学金審査は収入・家計基準で判断されます。在学中のアルバイト収入が多すぎると、継続審査(家計基準の再確認)で支給停止になるケースがあります。上限の目安は年収300万円程度(扶養の範囲内)ですが、詳細は学校の奨学金担当窓口に確認を。アルバイトで稼いだお金を「学費の補填」に充てる計画は、事前にシミュレーションしておくと安心です。

Q5. 専門学校進学を高3直前に決めた場合、今からできることは?

まず「棚卸し(ステップ1)」を今日やる、これが最優先です。既存資産の確認に時間はかかりません。次に学校のオープンキャンパスや入試説明会で、学費の分割払い・入学金の延納制度を確認してください。多くの専門学校は2〜3月の入学直前まで入学金の確定を猶予してくれます。その間に日本政策金融公庫への申請を進めれば、資金調達の目処は立ちます。焦らず、順序立てて動くことが大切です。

まとめ

専門学校の教育資金設計で大切なのは、「安いはずだから何とかなる」という思い込みを早めに手放すことです。分野によって費用は大きく異なり、積立期間が短い分、準備の密度を上げる必要があります。

ただし、正しい順序で動けば、高校入学後から始めても十分間に合います。①今ある資産の棚卸し → ②奨学金・ローンの組み合わせ検討 → ③目的別口座での積立管理──この3ステップを家族で話し合うきっかけに、この記事がなれれば嬉しいです。

参考資料