上司に「報告+提案」フォーマットで切り出して、週2テレワーク(火・木)を勝ち取ったのが復職半年後のことです。通勤往復80分がゼロになる日ができて、お迎えまでの時間に家事を前倒しできる。制度的には最高の環境が手に入った。
ところが最初の3ヶ月、テレワーク日の生産性がオフィスより明らかに低かった。
原因は明確でした。息子(当時2歳)が保育園を休んだ日や慣らし保育が短縮されていた時期に、同じ空間で仕事をしようとしていたんです。「パパ遊ぼう」「おなかすいた」「これ壊れた」——5〜10分おきに呼ばれて、30分の資料作成に2時間かかる。
時短復職のリアルは「時間が短い」だけじゃなくて、テレワーク日の集中設計ができていないと制度の恩恵が半分になる、ということだったりします。今回は、試行錯誤の末に辿り着いた「時間・場所・事前合意」の3層環境設計を整理します。
なぜ子どもがいると集中できないのか:問題の構造
「集中できない」を一言で済ませてしまうと解決策がぼんやりする。実体験から見ると、問題は3つの層に分かれていました。
- 時間の問題:子どもの要求が予測不能なため、長い集中時間を確保しようとして毎回崩れる
- 場所の問題:同じ空間にいると「視線」だけで呼ばれる。子どもは親が見えると必要以上に存在を確認しようとする
- ルールの問題:「テレワーク=家にいる=遊んでもいい」という子どもの認識がアップデートされていない
この3つを個別に対処するのがポイントです。「とにかく静かにしてほしい」では3層全部に刺さらない。
Layer 1:時間の仕切り──集中ブロックを「3本」に絞る
最初にやってしまいがちなのが、「子どもがいない日と同じペースで仕事をしようとする」ことです。9〜17時のうち7時間フル稼働を目指すと、計画が崩れるたびに消耗する。
保育園のお盆休みに週2テレワーク日が重なったとき、発想を変えました。「子どもがいる日の集中時間は最大3本(計1.5時間)」と最初から決める。
1日を30分ブロックで色分けして、集中ブロック・子ども対応ブロック・家事ブロックに分割します。集中3本というのは90分で、この時間に「今日やること」のコアを詰め込む。
これをやると何が変わるかというと、「予定通りにいかない」ストレスが激減します。7時間稼働を前提にしていると、1回の割り込みで計画が崩壊する感覚になる。3本前提だと、割り込みは「次のブロックに回す」で処理できる。
合わせて朝のSlackに「今日は子どもが在宅のため、集中ブロック3本で稼働します」と宣言しておきます。これは謝罪ではなく、上司・チームへの情報提供。「橘は今日こう動く」という共通認識を作ることで、急な依頼が集中ブロック外に来ることが減ります。
Layer 2:場所の仕切り──パーテーション1枚で割り込みが半減
実際に育休取った身として言うと、子どもの行動を「制限」しようとすると親子双方が消耗する。それより環境でコントロールするほうが再現性が高い。
お盆テレワークで試したのが、100均のパーテーション(高さ120cm)でリビングの一角に「仕事ゾーン」を作ること。視線を遮るだけです。壁で囲む必要はない。
驚いたのが、視線を遮るだけで息子の割り込み頻度が体感で半分になったことでした。子どもは親が「見える」と反応しやすい。見えなければ「別のことをしよう」という行動に切り替えやすい。
「パーテーションの向こう=お仕事中」というルールをセットにします。「向こうにいるときはパパは来られないけど、こっちに来たら一緒に遊ぶよ」というフレーミングで伝えると、年少児でも理解できる枠組みになります。
パーテーション購入が難しければ、机の位置を「壁向き」にするだけでも効果があります。子どもからの視線が後頭部になると、呼ばれにくくなります。
Layer 3:事前合意──「今から何分間」を先に宣言する
集中ブロックに入る前に、必ず子どもに声がけをします。「パパ、ここから30分お仕事タイムね。終わったら一緒に○○しよう」。
ポイントは終了後の活動を先に宣言しておくこと。「終わったら遊ぼう」という見通しがあると、子どもは「今は待てる」判断をしやすくなります。終わりが見えないと、ひたすら割り込んで確認しようとします。
また、集中ブロック前に「水分補給・おやつ・トイレ」を済ませておくのも有効です。「おなかすいた」「のどかわいた」は生理的ニーズなので、事前に対処しておくとブロック中の割り込みが減ります。
子どもが2歳以下の場合はパーテーションより体の安全確保が優先です。この場合は集中ブロックを「子どもが昼寝している時間」に設計するか、夫婦シフトで一方が対応している間に集中時間を作る設計の方が現実的です。
夫婦シフトとの組み合わせ:テレワーク日は「担当週」を固定する
お盆やGWなど子どもが長期在宅になる期間は、3層設計だけでは足りません。夫婦シフトとの組み合わせが必要です。
うちの場合、前週日曜に「今週テレワーク日の担当確認」を5分でやります。どちらが主に対応するかを事前に決めておくことで、当日の「今日はどっちが見る?」LINE交渉がゼロになります。
テレワーク日(火・木)のどちらかを「子どもが在宅しても自分がメイン対応する日」として固定するのも一つの方法です。「毎週火曜はパパが対応メイン」と決めておくと、その週のスケジュール設計が楽になります。
実践まとめ:3層チェックリスト
- 【時間】集中ブロックを最初から3本(90分)に絞り、朝のSlackに宣言する
- 【場所】パーテーションか壁向き配置で「仕事ゾーン」の視線を遮る
- 【事前合意】集中ブロック前に「終わったら○○しよう」を子どもに宣言する
- (補足)集中ブロック前の水分・おやつ・トイレを済ませておく
- (補足)保育園休みが発生する週の夫婦シフトを前週日曜に確認する
3つ全部をいきなり完璧に実装しようとしなくてもいいです。まず「集中ブロックを3本に絞る宣言」だけ試してみる。「7時間フル稼働で終わらなかった」より「3本やりきった」のほうが積み上がる感覚があります。
よくある質問
Q. 1〜2歳児にはパーテーション効果がない気がします
A. 年齢が低いほどパーテーションより体の安全確保が優先です。1〜2歳の場合は「子どもが昼寝している時間帯を集中ブロックに充てる」か「夫婦シフトで一方が対応している間に集中する」設計が現実的です。Layer2(場所の仕切り)よりLayer3(夫婦シフト)の比重を上げる時期と考えてください。
Q. 集中ブロック3本では業務が終わらない場合はどうする?
A. 子どもが在宅の日は「コア業務3本のみ」と割り切り、残りはオフィス日や子どもが保育園の日に補填する設計にします。全日程で同じ生産量を出そうとすると継続できません。「子ども在宅日は3本で上等」と期間の役割を分けることで、長期的には安定します。
Q. オンライン会議中に子どもが乱入してきたときの対処法は?
A. 事前に「今日は10時から30分会議があるよ、その時間はパパの部屋に来ないでね」と伝えておきます。それでも来た場合は、カメラをオフにして対処するか、「乱入ごめんなさい」と一言伝えて対応します。事前に「子どもが在宅です」とチームに宣言しておくと、乱入時の印象が変わります。会議冒頭で「今日子どもがいるのでもし声が聞こえたらすみません」と一言あるだけで、参加者の受け取り方が大きく変わります。
Q. 子どもが小学生になっても同じ方法は使える?
A. 基本設計は同じですが、「宿題タイム=パパの集中タイム」として時間を揃えるのが有効です。「一緒に机に向かう時間」を設計することで、場所の仕切りがなくても互いの集中を邪魔しにくい環境が作れます。
Q. テレワークと時短勤務の組み合わせは会社に認められる?
A. 2025年改正育児介護休業法でテレワークが「柔軟措置」の一つとして明示され、3歳以降も会社が努力義務を負います。制度上、テレワークと時短の併用を禁止する法律はなく、就業規則に両制度があれば会社との合意で併用可能です。「報告+提案」フォーマットで上司に切り出し、試行期間を設けて提案すると通りやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省「育児・介護休業法の改正内容(令和7年4月施行)──テレワーク等の柔軟な働き方」(2025年)
- 株式会社キッズライン「在宅ワーク中に子どもがいると集中できない75.5%:ワーキングマザー調査」(2022年)
- 労働政策研究・研修機構「育児期における在宅勤務の実態と課題」JILPT調査シリーズ(2022年)






