「テレワークって育児しながら働けていいですよね」と言われるたびに、苦笑するようになった自分がいます。
週2日の在宅勤務×時短復職。制度だけ見ればすごく整っているように見える。実際、通勤往復80分がなくなるのは体感でかなり楽になった。ところが、保育園が休みで息子が自宅にいる日の在宅勤務は話が別で——30分の資料作成に2時間かかることが普通にありました。
「パパ、これ見て」「パパ、来て」「パパ、おやつ」。5分に1回の割り込みって、本当に仕事にならないんですよね。最初は「ちょっと待ってね」で対応できていたのが、それが積み重なると子どもも親もイライラしてくる。
時短復職のリアルは、制度さえあれば乗り越えられるわけじゃないな、と実感した話をします。
「気合」では乗り越えられない、という気づき
正直に言うと、最初は「子どもがいても集中できる自分」を目指していました。雑音があっても没頭できる力を鍛えようとか、子どもが来たら5分遊んでさっと仕事に戻れるようにしようとか。これ、全部無理でした。
未就学児の割り込みは「集中力の問題」ではなく「認知資源の問題」なんです。子どもが部屋にいるだけで、脳の一部が常にそちらに注意を払い続けている。これはどんなに鍛えても変わらない。つまり「気合で乗り越えよう」は根本的に間違っていた。
必要なのは仕組みです。特に3つ——「時間の設計」「空間の設計」「チームへの事前伝達」。これを整えたら、息子が在宅の日でも集中ブロック3本(各45分)は守れるようになりました。
Step1:1日を30分ブロックに分け、「集中」は3本だけと決める
よくやりがちなのが「子どもが来ない隙に仕事を詰め込もう」という発想です。これ、根本的に機能しない。隙がいつ来るかわからないし、来ても長続きしないから。
代わりにやったのが、1日を30分単位のブロックに色分けする方法です。
- 集中ブロック(赤):絶対に割り込まれたくない作業時間。45分設定で3本のみ。
- 子ども対応ブロック(青):一緒に遊ぶ、おやつを出す、テレビを見せる時間。最初から確保。
- 家事・雑務ブロック(緑):洗濯を回す、食器を片付けるなど。ついでにできる仕事のスキマ作業。
ポイントは「集中ブロックを3本」と最初から絞ることです。子どもがいる日に集中ブロックを6本詰め込もうとすると、1本も守れずに終わる。3本なら守れる。
集中ブロックの時間帯は「朝9時〜10時・11時〜12時・子どもの昼寝中」が僕の場合は機能しました。朝の2本は子どもがDVDや絵本で自立遊びできる時間帯に当て、昼寝中の1本が最も集中できる。この3本で、その日に必要な仕事の8割は片付けられる設計にしました。
Step2:パーテーション1枚で「仕事ゾーン」を作る
息子(年少)は、パパが近くにいると来たくなる。これは当然のことです。目の前にいるのに「集中して」は、年少児には酷な話。
試したのが、100均のパーテーション(高さ120cm)をリビングの一角に立てて仕事ゾーンを作ること。視線が遮られるだけで、割り込みの頻度が体感で半分以下になりました。
ルールはシンプルに1つだけ。「パーテーションの向こうはお仕事中。パパが出てきたら話しかけてOK」。これを繰り返し伝えると、3歳を過ぎた頃から息子もパターンを覚えてくれた。「パパ、まだ仕事?」と外から聞いてくるようになりました(これはこれでかわいいんですが)。
物理的な「見えない」状態にするのが、精神的な「来ていい」シグナルを消すコツです。「声をかけないで」より「見えない状態にする」のほうが子どもには伝わりやすい。
Step3:朝のSlackで「今日は集中ブロック3本で稼働」と宣言する
これ、やっていない人が多い。でも実は一番効くステップかもしれません。
実際に育休取った身として言うと、テレワーク中に「保育園が休みで子どもが在宅」という状況は、上司やチームには見えていない。チームからすれば「今日は在宅なのに返信が遅い」「急な依頼に対応してくれない」という印象になりかねない。
朝、出社するときと同じタイミングでSlackに一言入れるだけでいい。
「おはようございます。今日は子どもが在宅のため、集中ブロックは午前中2本・昼寝中1本で稼働します。緊急の案件は9時〜9時半の間にご連絡ください」
これで上司がその日の稼働イメージを持てる。「子どもがいるから今日は無理」という謝りではなく、「この時間なら対応できる」という前向きな共有になる。
時短復職後に上司から「在宅の日の動きが読みにくい」と言われたことがあって、それから始めたんですが——朝の宣言を入れるようになってから、上司が「急ぎはない、昼過ぎに確認するね」と調整してくれるようになった。期待値を先に共有するだけで、双方のストレスが大きく下がります。
夫婦シフトと組み合わせるとさらに効く
3ステップを全部自分で対応しようとすると限界があります。前夜に夫婦で「明日の担当シフト」を確認するのがセットです。
わが家のルールは「半日シフト」。午前はパパが集中ブロックを入れる、午後はパパが子どもとの時間を担当してママが集中する、みたいな分担を前夜に決める。「明日の午後はどっちが見る?」と当日の朝に決めようとすると、必ずどちらかが不満を持ちながら対応することになる。
前夜に「明日午前パパ担当・午後ママ担当」と決めてしまえば、翌朝の交渉コストがゼロになる。これは保育園の看護当番制と同じ発想で、「仕組みで決める」から感情の摩耗が減る。
保育園お盆休み3日間を乗り越えた実体験
お盆の3日間、保育園が休みで息子が在宅だった年があります。テレワーク日と重なって、最初は「なんとかなるだろう」と思っていたら全然なんとかならなかった。
1日目:5〜10分おきに割り込みが入り、30分の資料作成に2時間かかる。
2日目:「子どもがいる日のテレワーク」を設計し直す決意をする。
3日目:上記3ステップ+夫婦シフトを導入して、ようやく落ち着いた。
集中ブロックを3本前提で計画すると、「予定通りにいかない」ストレスが激減しました。4本詰め込もうとして3本しかできないのと、最初から3本と決めて3本守りきるのは、成果量は同じでも精神的な負荷が全然違う。
上司への朝Slack宣言を「今日は子どもが在宅のため集中ブロック3本で稼働」と入れると、上司から「無理しなくていいよ、午後に確認する」と返ってきた。「大変ですが頑張ります」という謝罪ではなく、「こういう稼働で今日は動きます」という事実共有が、上司側の期待調整につながった実感があります。
2025年改正法で広がった「テレワーク制度」との組み合わせ
2025年4月施行の育児・介護休業法改正で、3歳未満の子を養育する労働者がテレワークを選択できるよう、事業主が措置を講じる努力義務が新設されました。また10月施行の改正で、3歳以降の子を持つ労働者向けにも「柔軟な働き方の措置」を2つ以上選択して提供する義務が生じています。
つまり制度面では「テレワーク×育児」を組み合わせやすい環境が整ってきている。ただ制度があっても、使い方の設計ができていないと「在宅なのに仕事が終わらない」「子どもに申し訳ない」の二重苦になる。
3ステップの設計を先に作ってから、制度を使うのが正しい順番だと思います。
FAQ
Q1. 集中ブロック3本というのは少なすぎませんか?
子どもが在宅の日の「通常の在宅勤務日と同じ量を目指す」は無理です。その設定が最初のミスになる。集中ブロック3本×45分=約2.25時間の深い集中時間があれば、その日の重要タスクは8割片付けられます。残りは軽いメール返信や確認作業を隙間時間に入れる設計で対応できます。
Q2. パーテーションは何を使えばいいですか?
100均(セリア・ダイソー)の折りたたみパーテーション(高さ120〜150cm)で十分です。子どもの視線を遮ることが目的なので、高さより「見えない状態を作れるか」が判断基準。重要なのは視線の遮断であって、素材や見た目はどうでもいい。
Q3. 朝のSlack宣言を入れることに抵抗があります
「子どもが在宅で云々を伝えるのは言い訳みたいで…」という気持ち、よくわかります。ただ、宣言しないと上司はあなたが「普通の在宅日」で稼働していると思う。稼働の前提が違うまま仕事をすると、お互いにとってマイナスです。「今日はこの時間帯が稼働ピーク」と伝えることは、言い訳ではなく業務調整の情報共有です。
Q4. 夫婦どちらもテレワークの日はどうしますか?
前夜に半日シフトを確認するのが最優先です。午前パパ担当・午後ママ担当など、誰が子どものメインになるかを明確にする。「お互いがなんとなくやる」が最悪のパターンで、お互いが責任感を感じながら集中できない状態になる。役割を明確にすることで、担当でない方は集中でき、担当の方は子どもに向き合える。
Q5. 子どもがDVDや動画に依存してしまわないか心配です
集中ブロック中のコンテンツ活用は、程度の問題ではなく「選び方と時間設定」の問題です。集中ブロックは45分設定なので、DVDを1本(30〜40分)見せて終わりにする。「エンドレスに動画を流す」とは区別する。終わりのタイミングを「DVDが終わったら一緒にお外に行こう」と事前に決めておくと、子どもも切り替えやすくなります。
まとめ:設計が先、気合は最後
テレワーク×育児は、気合で乗り越えるものじゃない。時間の設計・空間の設計・チームへの事前伝達の3つが揃って初めて機能する。
時短復職のリアルは、制度を使うだけでは解決しないことが多い。制度の使い方の設計を自分でやるしかない、というのが正直な体験談です。
週2テレワーク×年少児を1年以上続けてきて、今は「子どもが在宅でも集中ブロック3本は守れる日常」になっています。最初の1〜2週間で設計を整えれば、あとは仕組みが回るようになる。ぜひ試してみてください。
参考文献・参考資料
- 厚生労働省「育児・介護休業法 令和7年(2025年)改正のポイント」 https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/bowac/childcare.html
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月) https://telework.mhlw.go.jp
- NTT東日本「テレワークで仕事と育児を両立するための理想のライフスタイルとは?」 https://business.ntt-east.co.jp/column/telework_start/childcare.html
- 労務SEARCH「3歳になるまでテレワークが努力義務に!企業の対応を解説」 https://romsearch.officestation.jp/news/49725






