「子どもが2人になったら教育費は2倍?」「3人産むと家計が崩壊する?」――FP相談でよく聞かれるのが、子どもの人数と教育費の関係です。わが家も3人いるので身につまされる質問ですが、答えは「進路コース次第で大きく変わる」の一言に尽きます。

この記事では文部科学省の最新データをもとに、4つの進路コース別の教育費総額を試算し、子ども1人・2人・3人それぞれの家庭が0歳から積み立てる場合の月額目安をまとめました。漠然とした不安を、具体的な数字に変えましょう。

4コースで考える教育費の全体像

まず「教育費」の範囲を整理します。ここでは幼稚園から大学卒業まで(0〜22歳)にかかる学習費用の合計を対象とし、文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」と旺文社教育情報センター「2026年度大学の学費平均額」を参照しています。

進路コース別 教育費総額(子ども1人あたり)
コース 幼〜高合計 大学費用 総合計
Aコース 全公立+国立大 約574万円 約267万円 約841万円
Bコース 全公立+私立文系大 約574万円 約435万円 約1,009万円
Cコース 私立幼・公立小中高+私立文系大 約623万円 約435万円 約1,058万円
Dコース 私立幼小・公立中・私立高中大 約1,058万円 約435万円 約1,493万円

FP相談で最も多いのはCコース(約1,058万円)のパターンです。地域によっては公立幼稚園の選択肢が少なく、小・中・高は公立で進んでも大学だけは私立というケースが現実的に多いためです。

注意点として、これらはあくまで「学校教育費+学校外教育費(塾・習い事等)」の平均値です。難関受験塾や留学費用を加えると、Dコース以上では大幅に膨らむことがあります。

子ども1人・2人・3人の総額比較

同じコースで揃えた場合、金額は単純に人数倍になります。ただし私立学校のきょうだい割引や給付型奨学金が適用されると変わります。ここでは割引なしのベース試算をご覧ください。

子どもの人数別 教育費総額の目安(全員Cコースの場合)
子どもの人数 教育費総額(目安)
1人 約1,058万円
2人 約2,116万円
3人 約3,174万円

「3人で3,000万超え……」と驚く方も多いですが、すべてを同時に払うわけではない点が重要です。1人目が大学を卒業するころには2人目はまだ高校生、3人目は中学生といった具合に、支出は18〜22年にわたって分散されます。

児童手当を差し引くと「本当に必要な積立額」が見えてくる

2024年12月から児童手当が拡充されました(所得制限の撤廃・高校生まで延長・第3子以降の増額)。改正後の受給総額を整理します。

改正児童手当の受給総額(目安)
対象 月額(0〜2歳) 月額(3歳〜高校卒業) 受給総額目安
第1子・第2子 1万5,000円 1万円 各 約234万円
第3子以降 3万円 3万円 約648万円

3人家庭であれば合計約1,116万円が国から支給されます。この手当を全額教育費に充てると仮定した場合、実質的に家庭が用意すべき額は次のように変わります。

  • 1人(第1子):1,058万 − 234万 = 実質 約824万円
  • 2人(第1・2子):2,116万 − 468万 = 実質 約1,648万円
  • 3人(全員):3,174万 − 1,116万 = 実質 約2,058万円

もちろん手当を生活費に使う家庭もあり、全額を教育費専用口座に積み立てられるとは限りません。それでも「手当を意識的に別口座へ移す」習慣があるかないかで、数百万円の差が生まれます。

0歳スタートで積み立てると月いくら?(年利3%で試算)

「じゃあ毎月いくら積み立てればいい?」というのが実践的な疑問です。子どもが0歳から大学入学の18歳(216ヵ月)まで、年利3%(月0.25%)で複利運用した場合の計算式は次の通りです。

将来価値 = 月積立額 × [(1.0025)216 − 1]÷ 0.0025 ≒ 月積立額 × 285.5

つまり月1万円を積み立てると18年後に約285万円になります。これを目標額に合わせて逆算します。

目標額別・月積立額の目安(0歳スタート・年利3%)
コース/人数 実質積立目標額 月積立額目安
Aコース・1人(全公立+国立大) 約607万円 月 約2.1万円
Cコース・1人(最多パターン) 約824万円 月 約2.9万円
Cコース・2人分 約1,648万円(2人合計) 各月 約2.9万円(合計 月5.8万円)
Cコース・3人分 約2,058万円(3人合計) 合計 月 約7.2万円

「月7万円以上!?」と驚くかもしれませんが、3人の積立期間は完全に重なっているわけではありません。末子が生まれたとき長子はすでに数歳上なので、同時積立が必要な期間は限られます。家計全体のキャッシュフロー表を作ると、ピーク時と余裕時が具体的に見えてきます。

積立「器」の使い分け:新NISA・学資保険・定期預金

積立先を選ぶ前に、目標額と期間を確認するのが先決です。その上で次の3つを使い分けます。

  • 親の新NISA(つみたて投資枠):旧ジュニアNISAは2024年に廃止。代わりに親名義の新NISAを教育費積立に活用する家庭が増えています。長期運用で複利効果が期待でき、非課税で運用益を得られるのが大きな利点です。ただし元本割れリスクがある点を念頭においてください。
  • 学資保険:返戻率は低下傾向ですが「強制積立」として継続しやすい特徴があります。医療保障とセットの商品は保障コストを確認してから選択を。
  • 定期預金・高金利普通預金:元本保証で安全。使い時が明確なとき(3〜5年後の私立中入学費など)に向きます。

結論から言うと家計の見直しが先、器を選ぶのは次のステップです。月の可処分所得から「いくら教育費に回せるか」を確認してから商品を選びましょう。

CFP・3児の母として思うこと

わが家の長男が生まれたとき、私は「学資保険に入れば安心」と漠然と思っていました。でも実際にキャッシュフロー表を作ってみると、小学校入学前後と大学入学時の2つのピークがはっきり見えて、それぞれに準備の方法が違うことに気づきました。

3人目が生まれた今、わが家で意識しているのは次の3点です。

  1. 児童手当は手をつけない:受け取り直後に専用口座へ自動移動
  2. 新NISAのつみたて枠を最優先:長期運用で複利効果を活かす
  3. 年1回「進路コースの確認」:「全員Cコース前提」を家族で見直し、ズレがあれば積立額を調整

大切なのは完璧な計画を立てることではなく、今の家計で続けられる金額から始めて、年1回見直すことです。

よくある質問

Q1. 大学の学費が値上がりしたらどうすれば?

国立大の授業料は2024年以降、一部大学で値上げの動きが出ています。年1回のキャッシュフロー見直し時に最新情報を確認し、積立額を少しでも上方修正する習慣をつけましょう。月1万円の上積みでも18年で約285万円の差になります。

Q2. 奨学金を使う前提で積立を減らしてもいい?

給付型奨学金(返済不要)は積極的に活用すべきですが、貸与型は子どもの社会人スタート時の負債になります。「奨学金ありき」で積立を大幅に減らすより、積み立てておいて奨学金が取れたら繰り上げ返済の原資にするほうが柔軟性が高いです。

Q3. 3人目が生まれたら積立の優先順位はどうする?

第3子の児童手当が月3万円と手厚いので、まずこれを全額専用口座に移すことが第一歩です。次に1・2子の積立を維持しながら、固定費の見直しで財源を生み出す順番が現実的です。

Q4. 私立中学を視野に入れた場合、積立はいつから?

私立中入学は12歳なので、最短でも6〜8年の準備期間しかありません。0歳スタートでも積立期間が短い分、月の積立額は増えます。「大学費用」と「私立中入学費用」を分けて管理すると混乱しません。

Q5. 親の老後資金と教育費積立、どちらを優先すべき?

老後資金が不足すると最終的に子どもに頼ることになりかねません。まず老後の最低必要額を確認し、親の新NISAで老後分を確保してから、残りを教育費積立に回す順番をおすすめします。

参考文献・データ出典

  1. 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表)
  2. 旺文社教育情報センター「2026年度 大学の学費平均額」(2025年公表)
  3. こども家庭庁「児童手当制度のご案内」(2024年12月改正版)