FP相談でよく聞かれるのが、「うちは国立しか行かせられないので、大学の学費は安く済みますよね?」という質問です。以前なら「標準額で見ればその通りです」と答えられました。ただ、いまは答え方が少し変わっています。
国立大学の授業料は、国が決めた標準額が長く据え置かれてきました。一方で、大学ごとに標準額を上回る授業料を設定できる仕組みがあり、実際に動く大学が出ています。この記事では、一次情報で確認できた数字だけを使い、「上がった場合の差額」を月いくらで備えられるかを計算します。
結論:標準額は据え置き、ただし大学ごとに最大20%まで上乗せできる
結論から言うと家計の見直しが先ですが、その前に制度の事実を整理します。
- 国立大学の授業料の標準額は年53万5,800円。文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」では、授業料は平成17年度以来、入学料は平成14年度以来、標準額が変わっていません。
- 各大学は、標準額の20%までの範囲で授業料を独自に設定できます。上限は年64万2,960円です。
- 旺文社 教育情報センターの2026年度調査によると、標準額を上回る授業料を設けているのは国立85校のうち10校です。東京科学大学(旧東京工業大学)が63万5,400円、熊本大学が59万4,600円で、他は上限の64万2,960円とされています。
- 東京大学は2025年度の学部入学者から、授業料を64万2,960円に改定しています。
つまり、85校中10校という数字は「大半の国立大学はまだ標準額」という意味でもあります。ただ、志望校が上乗せを決めたときに、家計が対応できる状態かどうかが問題です。
なお、どの大学が今後引き上げるかは、各大学の公式発表を確認する必要があります。この記事では未確認の大学名は挙げません。
差額を計算する:標準額と上限で4年間いくら違うか
計算式は隠さずに書きます。
| 項目 | 標準額の大学 | 上限額の大学 | 差 |
|---|---|---|---|
| 授業料(年) | 535,800円 | 642,960円 | 107,160円 |
| 授業料(4年) | 2,143,200円 | 2,571,840円 | 428,640円 |
4年間で約43万円の差です。入学料は国立の標準で28万2,000円ほどなので、初年度は標準額の大学で約81.8万円、上限額の大学で約92.5万円(授業料+入学料)になります。ここに受験料、下宿の場合は住居費・生活費が別にかかります。
参考までに、文部科学省の調査(令和7年度入学者)では、私立大学(学部)の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円で、前回調査より2.1%増えています。内訳は授業料96万8,069円、入学料24万365円、施設設備費17万2,550円です。国立が上がっても、私立との差が大きいことに変わりはありません。ただし、私立の数字は定員で重みづけした平均ですので、学部によって幅があります。
差額43万円を月いくらで備えるか:年齢別の目安
利回りは見込まず、単純に積み立てる計算にします(運用益は含みません)。
月額=428,640円 ÷ 積立月数
| お子さんの年齢 | 大学入学まで | 積立月数 | 月額の目安 |
|---|---|---|---|
| 0歳 | 18年 | 216か月 | 約1,990円 |
| 小2(7歳) | 11年 | 132か月 | 約3,250円 |
| 小5(10歳) | 8年 | 96か月 | 約4,470円 |
| 中2(14歳) | 4年 | 48か月 | 約8,930円 |
小5の子で月4,500円弱です。うちの長男(小5)もちょうどこの位置にいます。長男のとき実際に、中学入学の半年で23万円超の出費があり、教育資金を組み直しました。そのとき痛感したのは、「大学の差額」は小さい金額に見えても、中学・高校の山と重なると捻出しにくくなることです。早めに「備える金額」を決めておく方が楽でした。
ここでの月額は「標準額の想定に上乗せして備える分」です。すでに大学費用の積立がある家庭は、その月額に足すイメージで構いません。
やること3ステップ:志望校が決まる前でも間に合う
ステップ1:「国立=標準額」という前提を見直す
教育資金の試算表に、国立大学の授業料を「標準額」と「上限額」の2パターンで入れます。上限で組んでおけば、標準額のままだったときは余裕になります。
ステップ2:差額を月額に落とし込む
上の表のとおり、お子さんの年齢で月額が決まります。月数千円の増額で足りる年齢なら、家計の中の「使い道が決まっていない余り」から回せるか確認します。無理な場合は、先に固定費や保険の見直しを検討します。極端な節約までは必要ありません。
ステップ3:高2〜高3で志望校の授業料を確認する
志望校が絞れたら、大学の公式サイトの学費ページで、その年度の授業料と入学料を確認します。改定は入学者から適用される例が多いため、「入学年度の金額」を見ることが大切です。
国立にこだわり過ぎないための補足
家庭ごとの最適解は違います。国立が安いという事実は、いまも変わりません。ただ、「国立だから大丈夫」と考えて積立を止めるのは避けたいところです。下宿の場合は仕送りも必要で、授業料以外の費用の方が大きくなるケースがあります。仕送りについては、別記事でも詳しく書いています。
授業料の減免や奨学金の対象になるかどうかも、世帯の状況で変わります。制度の詳細は、日本学生支援機構や志望校の窓口で最新の情報を確認してください。
よくある質問
Q1. 国立大学の授業料は全部の大学で値上がりしているのですか?
いいえ。旺文社の2026年度調査では、標準額を上回る授業料を設けているのは85校中10校です。標準額(年53万5,800円)のままの大学が多数です。
Q2. 上限の64万2,960円はどうやって決まりますか?
標準額53万5,800円の120%にあたる金額です。大学が標準額の20%まで引き上げられる仕組みの上限額です。
Q3. すでに在学している学生の授業料も上がりますか?
大学によって扱いが異なります。たとえば東京大学は、2025年度の学部入学者から改定すると発表しています。在学生への扱いは、各大学の公表資料で確認してください。
Q4. 私立大学の学費と比べるとどのくらい違いますか?
初年度で比べると、国立は授業料と入学料で約82万〜93万円、私立大学(学部)の平均は約150万8,000円です。ただし私立は学部で差があり、理系や医歯系はさらに高くなります。
Q5. 積立は新NISAを使うべきでしょうか?
大学入学まで8年以上ある場合は選択肢になりますが、投資は元本割れもあります。入学時に必要な金額は現金で確保する考え方もあります。家庭の状況に合わせて、判断してください。





