時短勤務で復職して半年。朝6時に起きて保育園に息子を送り、出社して、17時に退勤してお迎え。ルーティンは安定していた。でも、往復80分の通勤時間だけはどうにもならなかった。

「この80分が何も生まない時間なんだよな」と、混雑した電車の中で毎日思っていた。保育園から「お熱です」の電話が来ても、オフィスからだと1時間かかる。在宅なら15分で迎えに行ける。その差は、妻への負担として積み重なっていた。

実際に育休取った身として言うと、育休中は24時間子どものそばにいたのに、復職したら通勤だけで1日80分を失う。この落差が地味にきつかった。

「テレワークと時短勤務って、両方使えるの?」──同僚に聞いたらそう驚かれた。でも調べてみたら、併用を禁止する法律はなかった。そして2025年の法改正で、テレワークが正式に「柔軟措置」のひとつになっていた。

この記事では、時短勤務中に週2日のテレワークを上司に提案し、実際に勝ち取った僕の体験を3ステップで整理する。

テレワーク×時短勤務の「併用」は法律で禁止されていない

まず結論から。テレワークと時短勤務の併用を禁止する法律は存在しない。就業規則に両方の制度があれば、会社との合意で併用は可能だ。

多くの人が「時短かテレワークか、どちらか一方しか使えない」と思い込んでいるが、これは法的な制約ではなく、会社の運用上の慣行にすぎないケースが多い。

ただし、いくつか確認すべきポイントがある。

  • 就業規則にテレワーク制度が明記されているか:制度自体がなければ使えない
  • テレワーク規定に「時短勤務者は対象外」という除外条件がないか:規定によっては除外されている場合がある
  • 上司・人事が併用を想定しているか:制度はあっても運用ルールが未整備の場合がある

僕の場合、就業規則にはテレワーク制度があったが、時短勤務者が使った前例がなかった。「ないけど禁止もされていない」──この状態がいちばん提案しやすい。

2025年改正育児介護休業法で「テレワーク」が柔軟措置に追加された

2025年の育児介護休業法改正は、テレワーク×時短勤務を考えている親にとって追い風になった。改正のポイントを整理する。

3歳未満の子を養育する労働者

テレワークを選択できるよう措置を講ずることが事業主の努力義務になった(2025年4月施行)。努力義務なので強制力はないが、「法律でも推奨されている」と人事に伝える材料にはなる。

3歳以上〜小学校就学前の子を養育する労働者

2025年10月施行の改正で、事業主は以下の5つのうち2つ以上の制度を導入する義務を負うことになった。

  1. 始業時刻等の変更(フレックスタイム制・時差出勤など)
  2. テレワーク等(月10日以上、原則時間単位で利用可)
  3. 保育施設の設置運営等(ベビーシッター費用補助を含む)
  4. 養育両立支援休暇の付与(年10日以上)
  5. 短時間勤務制度

つまり、企業によっては「テレワーク」と「短時間勤務」の両方を導入しているケースが十分にある。自社がどの措置を採用しているかを確認することが、提案の第一歩になる。

週2在宅×時短を上司に提案する3ステップ

ステップ1:人事に「うちの会社の柔軟措置は何を導入しましたか?」と聞きに行く

上司にどう切り出したかなんですけど、その前にまず人事に行った。2025年10月の改正で自社が何を導入したのかを確認するためだ。

人事に聞いた内容は3つ。

  • 改正法の柔軟措置5つのうち、うちの会社はどれを導入したか
  • テレワーク制度と時短勤務の併用を禁止する規定はあるか
  • 就業規則の育児関連規定の最新版をもらえるか

結果、僕の会社はフレックスタイム制度と養育両立支援休暇の2つを導入済みだった。テレワーク制度自体は全社共通で以前からあり、育児関連の柔軟措置としての導入ではなかったが、就業規則上は時短勤務者を除外する規定もなかった。

制度改正は待っていても誰も教えてくれない。自分から人事に聞きに行くのが最速だ。

ステップ2:「テレワーク希望日・出社日の業務配置・連絡手段・試行期間」をA4一枚にまとめる

人事で制度が使えることを確認したら、次は提案書をつくる。ただ「テレワークしたいです」と言うのではなく、上司が判断しやすい材料を先に用意する。

僕がA4一枚にまとめた内容はこうだ。

  • テレワーク希望日:火曜・木曜の週2日
  • 出社日の業務配置:対面が必要なMTGは月・水・金に集約
  • 連絡手段のルール:朝の作業予定共有(Slack)、退勤前の成果報告(Slack)、週1対面1on1は固定
  • 試行期間:まず3ヶ月のトライアルとし、問題があれば見直す

ポイントは「試行期間」を設けることだ。上司にとって「永続的な変更」はハードルが高いが、「3ヶ月だけ試してみる」なら判断しやすい。

ステップ3:1on1で「報告+提案」フォーマットで切り出す

上司に相談するとき、僕は「相談」ではなく「報告+提案」のフォーマットで切り出した。育休取得のときに学んだ方法だ。

具体的にはこう言った。

「時短勤務の通勤往復80分が家庭のオペレーションに影響していまして、テレワーク制度との併用を検討しました。就業規則を確認したところ禁止規定はなく、人事にも確認済みです。週2日のテレワーク×時短勤務を3ヶ月間試行したいと考えています。チームへの影響を最小化する運用ルールもまとめてきました。」

意思+配慮+期限の3点セットで伝えること。制度を使うことに許可は不要だが、チームへの配慮を先に示すことで上司が調整しやすくなる。

結果、上司は試行期間付きの提案に前向きな反応を示してくれた。「橘さん、いつもちゃんと準備してくるから話が早いよ」と言われたのは正直うれしかった。

通勤ゼロ日がもたらした3つの家庭効果

週2日のテレワーク×時短勤務が始まって、家庭に3つの変化が起きた。

1. テレワーク日は14時半に業務終了、お迎えまでに家事を分散できる

通勤往復80分がゼロになることで、テレワーク日は14時30分に業務終了。保育園のお迎え(16時)までの1.5時間で洗濯物の取り込み、夕食の下準備、掃除機がけを済ませられるようになった。

時短復職のリアルは、17時退勤→お迎え→帰宅→夕食→風呂→寝かしつけが一直線で、どこにも余裕がないことだった。テレワーク日にこの余裕ができただけで、妻の「夜の家事密度」が明らかに下がった。

2. 保育園の急な呼び出しに15分で対応できる

オフィスからだと保育園まで約1時間。在宅なら15分。この差は、息子が年少で月1〜2回の発熱がある家庭にとっては大きい。

テレワーク日に呼び出しが来れば僕が対応できるので、妻の「いつ電話が来るかわからない緊張感」も週2日は解消された。看護当番制(奇数週パパ・偶数週ママ)との組み合わせで、さらに柔軟に対応できるようになった。

3. 通勤ゼロの日をつくることで家事の「曜日分散」ができる

出社日(月・水・金)は従来どおりのタイムライン。テレワーク日(火・木)は家事を分散する日。この曜日ごとの役割分けができたことで、週末に家事が集中しなくなった。

以前は土日に溜まった洗濯・掃除・買い出しを一気にやっていたが、テレワーク日に分散したことで、週末を家族で過ごす時間に充てられるようになった。

提案するときにやりがちな3つの失敗

テレワーク×時短の提案でうまくいかないパターンも見てきた。保育園送迎で話す他のパパたちの経験も含めて整理する。

失敗1:制度を確認せずに「テレワークさせてください」と言ってしまう

就業規則にテレワーク制度がなければそもそも土台がない。また、時短勤務者を除外する規定がないか確認しないまま提案すると、人事から差し戻される。まず制度の有無を確認してから動くこと。

失敗2:「通勤がつらいから」と自分都合だけで提案する

上司が知りたいのは「チームへの影響」と「業務品質の担保」。自分の事情を伝えるのは大事だが、チームへの影響を最小化する運用ルールをセットで提示しないと、上司は判断できない。

失敗3:いきなり「毎日在宅にしたい」とMAXで切り出す

週5在宅の提案はハードルが高い。週2日+試行期間3ヶ月から始めるのがコツ。実績を積んでから拡大するほうが、結果的に通りやすい。

よくある質問(FAQ)

Q1. テレワーク×時短勤務は法的に問題ありませんか?

問題ありません。テレワークと時短勤務の併用を禁止する法律は存在しません。就業規則に両方の制度があり、時短勤務者を除外する規定がなければ、会社との合意で併用可能です。2025年改正育児介護休業法では、3歳未満の子を養育する労働者に対するテレワーク措置が事業主の努力義務となっています。

Q2. 上司に断られた場合はどうすればいいですか?

まず断られた理由を確認してください。「制度がない」なら人事に柔軟措置の導入状況を確認。「前例がない」なら試行期間付きの提案に切り替える。「業務上の支障がある」なら、チームへの影響を最小化する具体的な運用ルールを提示し直してください。それでも難しい場合は、人事部門に直接相談する方法もあります。

Q3. テレワーク日の労働時間管理はどうなりますか?

時短勤務の所定労働時間(例:6時間)はテレワーク日も変わりません。始業・終業時刻の打刻やSlackでの業務開始・終了報告など、会社のテレワーク規定に定められた方法で管理します。時短+テレワークでも残業免除の申請は別途有効なので、併せて活用してください。

Q4. テレワーク×時短の併用で給与は変わりますか?

テレワーク自体は所定労働時間を変更するものではないため、時短勤務分の減額以上に給与が下がることは基本的にありません。ただし、通勤手当が日数按分になる会社もあるため、就業規則を確認してください。テレワーク手当が支給される場合はプラスになる可能性もあります。

Q5. 自社にテレワーク制度がない場合はどうすればいいですか?

2025年10月施行の改正育児介護休業法により、3歳以上〜小学校就学前の子を養育する労働者に対して、企業は5つの柔軟措置のうち2つ以上を導入する義務があります。テレワークはその選択肢のひとつです。まず人事に「自社はどの措置を導入したか」を確認し、テレワークが含まれていなくても、他の措置(フレックス等)と組み合わせることで柔軟な働き方を実現できる可能性があります。

まとめ

テレワーク×時短勤務の併用は、法的に禁止されていない。2025年改正育児介護休業法でテレワークが柔軟措置に追加された今、制度を活用するハードルは以前より確実に下がっている。

提案の3ステップをもう一度整理する。

  1. 人事に制度を確認する:就業規則にテレワーク制度があるか、時短勤務者を除外する規定がないかを確認
  2. 提案書をA4一枚にまとめる:テレワーク希望日・業務配置・連絡ルール・試行期間の4点を記載
  3. 1on1で「報告+提案」フォーマットで切り出す:意思+配慮+期限の3点セットで伝える

通勤時間ゼロの日を週に2日つくるだけで、家事の曜日分散・急な呼び出しへの対応力・妻の負担軽減と、家庭全体のオペレーションが改善する。

制度は使える人が使うのではなく、自分で調べて、自分で提案して、自分でつかみ取るものだ。就業規則を読み、人事に聞きに行くところから始めてみてほしい。

参考文献